32.能力者ハンター
森の中を僕たちは走っていた。
朝の光が木の間から差し込む。
れんは息を切らしていた。
「はぁ……はぁ……」
ゆきもかなり疲れていた。
「もう……どれくらい走った?」
「まだ足りない。ハンターはしつこいから」
先頭を走るひなは言った。
僕は未来を見る。
――森、黒い装備の兵士、能力者対策部隊。
距離が縮まっている――
未来が消える。
「……来てる」
「もう!?」
れんが振り返る。
その時、遠くから銃声の音が響いた。
木の幹に弾が当たった音がした。
「撃ってきた!」
れんが叫ぶ。
「止まらないで!」
ひなは叫んだ。
僕達はさらに森の奥へ走った。
僕達は岩場に出た。
「ここ」
ひなは言った。
僕は周囲を見る。
岩、崖、逃げ道が少ない。
「行き止まり……」
「違う」
ひなは首を振る。
そして地面を指差した。
「音」
「音?」
れんが首をかしげる。
「全部消す」
その瞬間、ひなが目を閉じた。
空気が震える。
そして完全な静寂。
風の音、足音、呼吸、全部が消えた。
「……すごい」
れんは言った。
「音を完全に消す能力」
ゆきは言った。
「音は情報。消せば追跡できないわ」
ひなは言った。
僕は未来を見る。
――兵士たち、森を探す、足跡が見つからない。
でも、その未来の中に一人だけ、まっすぐ僕たちに向かってくる男がいた。
能力者対策部隊の隊長――
未来が消える。
「一人来る」
「一人?」
れんは言った。
その瞬間、岩の上に人影が現れた。
「見つけた」
男は笑っていた。
「いつの間に!?」
れんは驚いていた。
「音……消してたのに」
ひなは呟いた。
「関係ない」
男の体から電気が走る。
「俺は能力者対策部隊、隊長、れいじ」
男は名乗った。
僕は未来を見る。
――れいじ、電気、戦い、僕、倒れる――
未来が消える。
「未来を見る少年。捕まってもらう」
男の電気が空気を裂いた。
戦いが始まる。




