31.逃亡者達
夜明け。
町の煙がまだ空に残っている。
赤かった夜空は灰色に変わっていた。
僕達は森の奥を歩いていた。
「眠い……」
れんは眠たそうだ。
ゆきも疲れた顔だった。
「一晩中歩いたわね……」
「でも、止まれない」
未来を見る。
――警察、軍隊、能力者ハンター。
僕たちを探している――
未来が消える。
「追ってくる?」
れんは言った。
僕は頷いた。
「時間の問題だと思う」
その時、遠くからヘリの音が聞こえた。
れんが顔を上げる。
「もう!?」
僕は未来を見る。
――ヘリ、森を探索、見つかる、捕まる――
未来が消えた。
「走るぞ」
僕は言った。
れんとゆきが、森の奥へ走る。
木々の間を抜けると、突然、目の前に人影が現れた。
僕達は止まった。
そこにいたのは一人の少女だった。
黒いパーカー、短い髪。
僕達と同じくらいの年齢。
「動かないで」
少女は言った。
「え?」
れんは驚いていた。
少女が指を上げる。
その瞬間、ヘリの音が消えた。
正確には聞こえなくなったが正しい。
森が静かになる。
ゆきは目を見開いた。
「音が……」
「私の能力」
少女は言った。
僕は少女を見る。
未来を見る。
――少女、能力者、僕達と一緒に逃げる未来――
未来が消える。
「追われてるでしょ」
少女は言った。
「……うん」
れんは呟いた。
「私も」
少女は静かに笑った。
「あなた名前は?」
ゆきは聞いた。
少女は頷く。
「私の名前は、ひな」
「なんで助けた?」
僕は聞いた。
「理由は簡単。敵が同じだから」
「敵?」
れんは聞いた。
ひなは空を見た。
ヘリが遠くを飛んでいる。
「能力者ハンター」
ひなは言った。
「能力者狩り……」
ゆきは呟いた。
ひなは頷く。
「もう始まってる」
僕は未来を見る。
――森、僕達、ひな、一緒に逃げる――
その時、別の未来が見えた。
――ひな、血だらけ、倒れている――
未来が消える。
僕は一瞬だけ黙った。
「どうしたの?」
ひなは聞いた。
僕は首を振る。
「……なんでもない」
「仲間が増えた!」
れんは嬉しそうだった。
「仲間?」
ひなは不思議そうな顔をしている。
「うん。逃亡チーム」
ひなは笑った。
「変な名前」
その時、遠くで銃声が響いた。
「銃!?」
ゆきは言った。
僕は未来を見る。
――森、黒い装備の兵士、能力者を捕まえている。
そして、僕達の方向へ――
未来が消えた。
「来る」
僕は言った。
「いいね。逃げるの得意」
ひなはそう言うと、指を鳴らした。
その瞬間、森の音が完全に消えた。
鳥の声も、風の音も、全部。
無音になった。
「行こう。逃亡チーム」
ひなは言った。
僕達は森の奥へ走った。
新しい仲間と一緒に。
でもその遠く。
森の入口に、黒い装備の兵士たちが立っていた。




