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30.能力者の夜

 町は炎に包まれていた。

 黒い煙が空へ上がる。


 パトカーのサイレン。

 人の悲鳴。

 逃げ惑う足音。

 そして人間とは思えない力。



「うぉぉぉぉ!!」


 道路の真ん中で、一人の男が叫んでいた。


 男の腕から炎が噴き出す。

 炎が地面を焼く。

 車が爆発し、ガラスが砕ける。



「なんだこれ! すげえ!!」


 男は笑っていた。


 完全に正気じゃない。



「止まれ! その場に伏せろ!」


 遠くから警察が叫ぶ。


「は?」



 次の瞬間、炎が飛んだ。

 警察車両が燃え上がる。

 警官たちが逃げる。



「能力者だ! 応援を呼べ!」


 ヘリが飛んでいた。



「住民は直ちに避難してください! 能力者による暴走事件です!」



 スピーカーの声が響いた。


 町は完全にパニックだった。

 その光景を僕達は丘の上から見ていた。



「ひどい……」


 れんは震えている。



「こんなにたくさん能力者がいるの……」


 ゆきは呟いた。



 僕は未来を見る。


――町、能力者、炎、電気、透明人間、空を飛ぶ人――



 未来が次々に流れ込む。


 僕は息を飲む。



「……増えてる」



「能力者?」


 れんは言った。



「そう、全国で」



 ゆきが驚く。


「え、全国?」


 その瞬間、ヘリからニュース音声が流れた。



「こちら政府緊急放送です」


 町のスピーカー。

 スマホ。


 同じ声が聞こえる。



「本日、日本各地で、特殊能力を持つ人間が多数確認されました。政府はこれを能力者事件と認定。直ちに新しい法律を発令します」



 画面に文字が出る。


「能力者特別法」



「法律……」


 ゆきは息を飲んだ。



「能力者は、政府に登録する義務があります。拒否した場合、拘束対象となります」



 ニュースが終わった。



「……捕まるって事?」


 れんは呟いた。



 僕は未来を見る。



――能力者、登録、逃亡、戦い。

 能力者を狩る者たち――



 未来が消える。



――――


 その頃、町の外。


 別の丘の上に、みきとじんが立っていた。

 燃える町を見ている。



「派手だな。日本中が祭りだ」


 じんは言った。



 みきは静かだった。

 炎の町、逃げる人々。

 暴れる能力者。



「未来通り」


 みきは呟いた。



 じんが笑う。


「やっぱりか」



 みきは僕のいる丘を見た。

 遠くに小さく僕達が見える。



「未来の人。あなたが原因」


 みきは呟いた。


――――


 その頃、僕はまだ炎の町を見ていた。

 未来を変えたつもりだった。

 でも僕の力が世界を変えていた。

 逃げるだけじゃもう終わらない。



「……どうすればいい」


 僕は呟いた。



「しょうた、逃げよう」


 れんは言った。



 ゆきも頷く。


「今は生きるしかない」



 僕は空を見る。

 炎で赤く染まった夜空。


 その中で未来がまた少し見えた。



――能力者、戦争、崩れる街、僕。

 血まみれで立っている――



 未来が消える。


「……まだ終わらない」


 僕は呟いた。

 


 夜は炎に包まれていた。


 能力者の時代が始まった。

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