29.始まりの町
僕達は走っていた。
息が荒い。
足が重い。
でも止まれない。
「しょうた……」
れんは泣きながら言った。
僕は答えられなかった。
頭の中にはたくまがいた。
血だらけで立っていた姿だ。
「止まらないで。追ってくる」
ゆきは言った。
僕は未来を見る。
――森、じん、みき――
でも未来はまだ遠い。
追いつかれる未来は見えない。
「……今は大丈夫」
「たくまさん……」
れんは呟いた。
「町が見える」
ゆきが前を見る。
山を下りた先に小さな町、夜の灯りが見える。
僕は未来を見る。
――町、人、平和な夜――
でもすぐに未来が変わった。
――炎、爆発、人の悲鳴――
未来が消える。
僕は立ち止まった。
「……え?」
「どうしたの?」
れんは言った。
その瞬間、爆発音が鳴り響いた。
遠くの町から火が上がった。
ゆきが驚く。
「なに!?」
れんが震える。
「爆発……」
僕は未来を見る。
――町、人が逃げる、男。
体から炎を出している――
未来が消える。
「……能力者だ」
「暴走?」
ゆきは言った。
僕は首を振る。
「違う。増えてる」
「え?」
れんは言った。
僕は未来を見る。
――町、炎の男、空を飛ぶ女、体が透明な男。
能力者、何人もいる――
未来が消える。
僕の背中を冷たい汗が流れる。
「……嘘だろ」
「どうしたの?」
ゆきは言った。
「能力者、何人もいる」
「そんな!」
れんは驚いた。
その時、町の方向から人が走ってきた。
中年の男だ。
パニックの顔をしている。
「逃げろ! 町が化け物だらけだ!」
男は叫んだ。
れんが震える。
「化け物……」
「火を出す奴! 空飛ぶ奴! 体が消える奴!」
男は叫んだ。
ゆきが僕を見る。
未来を作るたび能力者が増える。
「……僕のせいだ」
僕は呟いた。
れんが首を振る。
「違うよ!」
それでも僕は未来を見る。
――日本、能力者、増えていく。
戦い、暴走――
未来が消える。
その時、空からヘリの音がした。
ゆきが空を見る。
「警察?」
ヘリのライトが町を照らす。
「住民は避難してください! 能力者事件です!」
スピーカーの声がする。
僕は未来を見る。
――町、戦い、炎、警察、ニュース。
日本中、能力者――
未来が消える。
――――
遠くの丘の上に、みきとじんが立っていたのを、僕達は知らなかった。
みきが町を見る。
炎、能力者、逃げる人々。
「始まった」
みきは言った。
「何が?」
じんは言った。
「能力者の時代」
みきは言った。
夜空に炎が上がっていた。
もう戻れない。




