23.本気
夜の森。
風が止まった。
でも、木々が揺れていた。
理由は一つ。
じんの体から異様な圧力が出ていた。
「……冗談だろ」
たくまは呟いた。
じんは首を軽く回した。
「ウォーミングアップ終わり。ここから本気だ」
じんは胸を叩いた。
金属音が響いた。
僕は未来を見る。
でも見えない。
じんの未来は完全に途切れている。
「しょうた、どうする?」
ゆきは僕を見て言った。
「……分からない」
未来が見えない。
それは僕にとって初めての戦いだった。
じんが一歩踏み出す。
その瞬間、空間が裂けた。
たくまが岩を浮かせて戦う。
斬撃と岩がぶつかり合い、岩が粉々に砕けた。
たくまは舌打ちした。
「あいつ威力上がってるぞ!」
「また来る!」
れんは叫んだ。
空気が歪む。
「右!」
れんは指をさして指示をした。
その声で、僕とゆきが飛ぶ。
地面が切れた。
「いい連携じゃん」
じんは言った。
たくまは岩を何十個も浮かせた。
「くらえ!」
一斉発射。
岩の嵐だ。
しかし、じんに焦りはなかった。
右手を振ると、空間が巨大に裂けた。
そして岩が全部消えた。
粉だ。
たくまは目を見開いた。
「うそだろ……」
「その程度って事さ」
そしてまた手を振る。
斬撃がくる。
「前!」
れんの声で、たくまが岩を出す。
でも遅かった。
たくまの肩が裂け、血が飛んだ。
「ぐあっ!」
たくまは膝をついた。
「たくま!」
ゆきは叫んだ。
僕の心臓が跳ねる。
未来を見る。
でも何も見えない。
じんが歩いてくる。
「一人ダウン」
「たくまさん!」
れんは震えていた。
たくまは歯を食いしばる。
「まだ……立てる……!」
でも血が止まらない。
「安心しろ殺さない。回収するだけだ」
じんが、どんどん近づいてくる。
僕は前に出た。
じんが少し驚く。
「お前?」
「未来は見えない。でも考えればいい」
じんは笑った。
「いいね。来い」
僕は走った。
未来は見えない。
でも、頭の中で計算する。
ゆきの記憶。
れんの透視。
たくまの念動力。
全部合わせる。
じんが手を振る。
斬撃がくる。
「左!」
れんの声で僕は避ける。
「次は下!」
ゆきの声で僕は飛ぶ。
じんは笑っていた。
「面白くなってきた」
「今だ!」
たくまは叫んだ。
地面の岩が浮く。
巨大な岩がじんの背後に直撃した。
森が揺れる。
れんは息を飲んだ。
「やった……?」
煙が広がる。
静寂。
そして煙が裂けた。
そこには、じんが立っていた。
服が破れていた。
胸の装甲が見える。
「今のはちょっと効いたな」
じんは笑っていた。
まだ余裕な顔だった。
僕たちは凍りつく。
じんがゆっくり手を上げた。
「終わりにしよう」
その瞬間、空間が大きく歪む。
今までより、何倍も大きい。
「やばい! 巨大斬撃がくる!」
れんは叫んだ。
僕の背中に寒気が走る。
この攻撃避けられない。
その時、未来が一瞬だけ見えた。
短い未来。
――誰かが前に出る、血、そして僕は生き残る――
未来が消える。
次の瞬間、たくまが立ち上がった。
「……しょうた」
僕を見る。
「逃げろ」
「ダメだ!」
「俺、こういう役だろ」
たくまは、笑っていた。
じんの手が振り下ろされる。
巨大斬撃がくる。
森が裂ける。
世界が割れる。
そして、たくまがその前に立った。
血が飛んだ。
森が静かになる。
「たくまさん!!」
れんは叫んだ。
僕の目の前でたくまが倒れた。
未来が再び動き始めた。




