21.見えない未来
夜の山に冷たい風がふく。
そして、倒れた木の前に立つ男。
能力者ハンター、じん。
じんは軽く肩を回した。
たくまが前に出る。
「お前やばい能力だな」
たくまはそう言うと、戦闘態勢に入った。
「褒め言葉?」
じんは笑いながら言った。
たくまの周りの石が浮く。
小石、枝、金属。
「念動力か。分かりやすい」
じんは周りを見て言った。
「行くぞ!」
たくまの声で石が一斉に飛ぶ。
でも、じんは動かなかった。
ただ手を上から下へ振る。
空気が歪む。
次の瞬間、石が全部真っ二つになった。
「マジかよ」
たくまは目を見開いた。
「空間を切っただけさ」
じんに焦る素振りはなかった。
ゆきが僕を見る。
「しょうた! どうなるの!?」
僕は目を閉じた。
未来を見る。
――たくま、突っ込む、じん。
手を振る、たくまの腕が落ちる――
未来が終わる。
「たくま! 近づくな!」
僕は叫んだ。
たくまが止まる。
「何だよ!」
「腕!」
たくまが息を飲む。
「……マジか」
じんは笑った。
「未来見た? だめじゃん、ネタバラシしたら」
僕は睨んだ。
「やっぱ、いい能力だな」
じんは僕を見て言った。
そして手を振る。
その瞬間、地面が裂けた。
たくまは飛び退く。
「くそ!」
ゆきは僕の腕を掴んだ。
「逃げる?」
僕は未来を見る。
――逃走、追いつかれる、捕まる――
未来が消える。
「……逃げられない」
「じゃあどうするの……」
れんは震えていた。
僕はもう一度未来を見る。
――戦い、負ける、負ける、負ける――
突然、未来が途切れた。
「……え?」
僕はもう一度見る。
何も見えない。
未来がない。
僕の背中に冷たい汗が流れる。
「未来が……見えない」
「え?」
ゆきは言った。
僕はじんを見る。
「この人、未来が見えない」
空気が止まる。
じんは少し驚いた顔をした。
「へえ……初めてか?」
僕は黙っていた。
「俺の能力、空間を切るだけじゃないんだ」
手を軽く左右に振る。
空気が揺れる。
「……未来も切れる」
じんは、にやりと笑った。
「え……」
れんの顔は青ざめていた。
じんは笑った。
「未来予知ってさ、未来の流れを見る能力だろ? ならその流れを切ればいいだけさ」
未来が見えない。
これは初めてだった。
じんがゆっくり歩いてくる。
「未来少年。お前、今まで未来頼りだっただろ」
図星だった。
僕は何も言えなかった。
「今はただのガキだ」
空間が歪む。
斬撃がくる。
僕は動けなかった。
未来が見えない……!
次の瞬間、金属音が鳴った。
顔を上げると、たくまが僕の前にいた。
念動力で岩を浮かせ、斬撃を防いだ。
「お前は考えすぎだ。未来が見えなくても戦えるだろ」
たくまは言った。
「そうよ」
ゆきは僕の手を握った。
「僕もいるよ!」
れんは笑っていた。
僕は三人を見た。
そして初めて理解した。
未来が見えなくても戦える。
じんは笑った。
「いいね。チーム戦か」
空気が歪む。
森が裂ける。
能力者四人。
能力者ハンター。
そして未来の見えない戦い。
戦闘が本格的に始まった。




