18.黒幕
能力を奪う男は床に倒れていた。
胸の装置は砕けている。
「……終わった?」
れんは恐る恐る言う。
「いや……まだ分からない」
たくまはまだ警戒していた。
「とにかく、ここから出ましょう」
ゆきは疲れている様子だった。
かずおさんの死体。
床の血。
れんは目を伏せた。
「かずおさん……」
僕は未来を見る。
――施設、外、山道、警察――
未来が消えた。
「……警察が来る」
「いつだ」
たくまは振り向きながら言った。
「30分くらい」
僕は言った。
「なら急がないと」
ゆきは言った。
その時、施設の電気が全部ついた。
眩しい光に、全員が目を細める。
「おめでとう。ゲームクリアだ」
スピーカーから音が流れた。
さっきとは別の声だった。
「まだいるのか!」
たくまは怒鳴った。
「当然でしょう。君たちは観察対象だから!」
「観察?」
ゆきは言った。
「能力者の行動、心理、殺し合いの結果、全部のデータを収集させてもらう」
僕の背中が冷える。
「……能力者狩り」
「正解」
廊下の壁にあるモニターが点いた。
そこに映るスーツ姿の女。
鋭い目、短い髪。
警察庁特殊犯罪対策課。
未来で見た女。
せなだ。
「警察……?」
ゆきは呟いた。
「能力者は危険人物。だから研究しているの」
「研究だと!?」
たくまは怒鳴った。
「この施設は、能力者の戦闘データを取るためのもの」
せなは言った。
「じゃあ、かずおさんは……」
れんは恐る恐る言う。
「必要な犠牲よ」
せなの声が響いた。
「ふざけんな」
たくまは拳を握っていた。
「能力者は危険生物。管理する必要があるわ」
せなは、当たり前のように言った。
「……だから殺し合わせた?」
僕は言った。
「正確には、どう殺し合うかを知りたかった」
せなは少し笑った。
「ひどい……」
れんは泣きそうな顔だ。
「安心して。君たちは殺さない」
せなは言った。
「信用できるかよ」
たくまは睨んだ。
「ただし、連れていく」
せなは言った。
僕は未来を見る。
――白い部屋、拘束、能力者の牢屋――
未来が消えた。
……嫌だ。
「絶対に行かない」
ゆきははっきりと言った。
「選択肢はない。もうすぐ部隊が到着する」
せなは淡々と言った。
僕は未来を見る。
――ヘリ、特殊部隊、包囲、逃げ場なし――
未来が消えた。
その時、せながモニター越しで僕を見ていた。
「未来の少年」
僕は黙った。
「あなた、危険度S」
「S?」
「未来を見る能力は最も危険。あなたは世界を壊せる」
せなは言った。
「……大げさだ」
せなは首を振った。
「いいえ。みきがあなたを見つけてくれた」
僕の心臓が跳ねる。
せなは続けた。
「みきは言った。未来を見る少年は山にいると」
れんが僕を見る。
「しょうた?」
「過去を見る能力と未来を見る能力。どちらも危険。二人はいずれ戦う」
せなは冷たい声で言った。
未来が流れ込んできた。
――都市、炎、能力者、僕とみき。
向かい合う――
未来が消える。
「未来少年。逃げても無駄よ。みきが必ずあなたを見つける」
せながそう言うと、モニターが消えた。
「……最悪だ」
たくまは呟いた。
ゆきが僕を見る。
「しょうたどうする?」
僕は目を閉じた。
未来を見る。
――逃げる未来、追われる未来、そしてみき。
僕を見つける――
未来が消えた。
「……逃げる」
能力者狩り、警察、みき。
僕の未来は、完全に追われる側になった。




