15.地下
真っ暗だった。
研究所の電気が全部消えている。
「ちょっと! 何なのこれ!」
ゆきの声が響く。
「怖い……」
れんは震えた声で言った。
その時、非常灯が点いた。
赤い光だ。
廊下がぼんやり見える。
「くそっ! 開かない!」
たくまがドアを叩いた。
何度も引くが動かない。
「外から完全に閉められているな」
かずおさんは静かに言った。
「ふざけんな! 誰だよあの声!」
たくまは怒鳴った。
僕は何も言わず未来を見る。
――廊下、地下、部屋、血、死体――
「……」
れんが僕を見た。
「未来、見えた?」
全員の視線が僕に集まる。
僕は少し迷った。
「……誰かが死ぬ」
沈黙だ。
「そりゃそうでしょ。一人しか出られないんだから」
ゆきが苦笑する。
「待て。つまり、誰かが殺すってことか?」
たくまは言った。
誰も答えない。
かずおさんが杖を鳴らした。
「まずは状況を確認するべきだ」
れんが手を挙げた。
「僕、見える!」
れんは壁を見ていた。
目を細める。
「地下がある」
全員が近づく。
「どんな?」
「廊下。部屋がいっぱい。あと階段……下に続いてる」
れんは言った。
「ゲームっぽくなってきたな」
たくまがにやりと笑った。
「楽しそうに言わないで」
ゆきは睨んだ。
「地下に何かあるのだろう」
かずおさんは言った。
その時、スピーカーがまた鳴った。
「地下に鍵がある。出口の鍵だ」
「ふざけんな!」
たくまは叫んだ。
スピーカーの声は続いた。
「ただし、鍵は一つ。出られるのは一人」
れんは震えていた。
「じゃあ、みんな……頑張って」
プツン。
音が切れた。
静まり返る廊下。
「最低」
ゆきは言った。
「あいつ見つけてぶっ殺す」
たくまは拳を握った。
「まずは地下だ」
かずおさんは言った。
全員、階段へ向かった。
僕は動かず未来を見る。
――地下、暗い廊下、血、倒れる能力者。
影、ナイフ、悲鳴――
未来が消えた。
「……」
階段を降りると、冷たい空気が流れていた。
長い廊下、いくつもの扉。
「鍵は一番奥だよ」
れんが指をさす。
「行こう」
たくまは歩き出した。
その瞬間、未来が流れ込む。
――廊下、かずおさん、影、喉、血、倒れる――
未来が終わる。
「……待って」
僕は言った。
全員が止まる。
「かずおさん」
かずおさんは振り向く。
「なんだ?」
「あなた、この先で死ぬ」
全員の空気が止まった。
だが、かずおさんは静かに笑った。
「未来か。面白い」
そして、一歩前に出た。
「だがな」
かずおさんの影がゆっくり伸びる。
「ワシも能力者だ」
その時。
ガタン。
廊下の奥で音がした。
全員が振り向く。
暗闇の中、何かが動いた。
次の瞬間、影が跳ねた。
かずおさんの影じゃない。
別の影だ。
かずおさんの首に絡みつく。
「っ!?」
血が飛び、かずおさんが倒れた。
床に血が広がる。
「かずおさん!!」
れんは叫んだ。
「誰!?」
ゆきの声は震えていた。
「誰だ!」
たくまは叫んだ。
暗闇の中、笑い声が聞こえた。
「やっと始まったな」
男の声だ。
僕はその声を聞いた瞬間、未来を見た。




