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11.能力者殺害事件

 小さな町の食堂。

 テレビの音だけが、店内に響いている。

 僕はカウンターの端に座り、味噌汁をすすっていた。


 帽子を深くかぶり、顔はほとんど見えない。

 誰も僕に興味を持っていない。


 テレビではニュースが流れていた。


「昨夜、都内で男性の遺体が発見されました」


 画面に映っているのは、はらだった。

 

 アナウンサーが続ける。



「男性は、最近テレビ番組などに出演していた“心を読む能力者”として知られており――」


 店の客達がざわつく。



「え、あの人?」

「テレビ出てたよな」



「警察は事件の可能性もあると見て、捜査を開始しています」


 僕は静かにご飯を食べていた。

 未来を見る。



――ニュース、SNS、拡散、トレンド。


 能力者殺害事件。


 能力者は危険なのか!?


 本当に存在するのか!?



「能力者同士の争いではないでしょうか!」


 テレビでコメンテーターが叫ぶ――


 未来が消えた。



「……」


 僕は箸を置いた。


 はらの未来は終わった。

 もう変わらない。


 その時、テレビの画面が切り替わった。



「続いて、今話題の能力者少女、みきちゃんです」


 みきはスタジオの椅子に座っていた。



「みきちゃん、この事件、何か見えますか?」


 司会者はみきに言った。


 スタジオが静まり返る。

 みきは少し目を閉じた。


 数秒後。



「見える」


 司会者は身を乗り出した。



「本当ですか?」


 みきは、ゆっくり口を開いた。



「能力者が殺した」


 スタジオがざわめく。



「どんな能力ですか?」


 司会者は、真剣な表情だ。



「未来を見る能力」


 食堂の空気が止まった気がした。

 僕の心臓が強く跳ね、どんどん速くなる。



「その人は今何を?」


 司会者は言った。


 そして、みきは少し黙った。



「まだ見えない」


 スタジオがざわめく。



「犯人は逃げている?」


「うん。北に逃げてる」


 食堂の客たちが騒ぐ。



「北?」

「どこだよ」


 みきはテレビの向こうを見ていた。

 まるで僕を見ているみたいに。


「この人、また殺すよ」


 みきの言葉でスタジオが静まり返った。



 僕はゆっくり席を立った。

 会計を済ませ、急いで未来を見る。



――警察、能力者調査、テレビ特集、能力者殺し――



 僕は店を出た。

 外は晴れている。

 でも、未来は暗かった。


 能力者たちが恐れ始める。

 能力者同士が疑い始める。

 能力者を狩る人間が現れる。


 僕は空を見上げた。



「……またか」


 未来を見る。



――血、倒れる能力者、ナイフ、僕――


 また僕だ。


 僕は静かに笑った。


 能力者の時代。

 はらはそう言っていた。


 でも僕には分かる。

 この時代は、能力者の時代じゃない。

 これは、能力者が死んでいく時代だ。


 これからいったいどうなっていくんだ……。

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