10.変えられない未来
僕は外に出た。
町の中心から少し離れた、古い商店街。
ほとんどの店は閉まっている。
街灯だけが、光っていた。
僕は未来を見ながら歩いていた。
――数秒先、誰もいない、危険はない。
でもその先の未来。
暗い路地、血、ナイフ、はら――
「……」
僕は立ち止まった。
何度も見た未来。
僕がはらを殺す未来。
僕はその未来を変えようとした。
はらに近づかない未来。
町を出る未来。
別の道を歩く未来。
全部見た。
でも、最後は同じだった。
「……」
僕は歩き続けた。
そして、見覚えのある路地の前で止まった。
未来と同じ場所だ。
人影がある。
「遅かったな」
そこには、はらがいた。
サングラスに黒いコートを着ている。
「未来見て迷った?」
僕は何も言わなかった。
「安心しろ。逃げないから」
ポケットから手を出す。
何も持っていない。
「だって、未来で死ぬんだろ?」
「……」
はらは壁にもたれた。
「聞こえてるぜ? お前の心。今も未来を見ている」
僕は小さく息を吐いた。
「でもさ、未来って変えられるんじゃないの?」
「……変えられる未来もある。でも、変えられない未来もある」
はらは静かに聞いていた。
「なるほど……じゃあ、これは確定未来か」
僕は何も言えなかった。
はらは少しだけ笑った。
「面白いな。未来が見える奴に、未来で殺される」
はらは、空を見上げて言った。
そして僕を見た。
「最後に聞く……なんで俺なんだ?」
「分からない……でも未来はそうなってる」
「そっか」
少しだけ沈黙が続いた。
「じゃあ……やるか」
はらは言った。
僕は動かなかった。
「……」
はらはゆっくり近づいてくる。
「安心しろ。抵抗しない」
そして僕の目の前で止まる。
「待って、未来を確かめたい」
――僕は未来を見た。
僕の手にはナイフがあった。
未来で見たナイフ。
手が震えている――
「……」
「お前、優しいな。顔に出てる」
僕は歯を食いしばった。
「これは、僕の未来じゃない。君の未来だ」
「同じだろ。生き残るのは、どっちかだ」
はらは笑った。
「ごめん」
僕はナイフを突き出した。
血が飛んだ。
はらの体がゆっくり倒れる。
地面には、血が広がっていた。
「……やっぱりこの未来か」
はらは笑った。
僕は震えていた。
「未来少年。能力者の時代……楽しめよ」
はらの最後の言葉だった。
そして動かなくなった。
僕は立ち尽くしていた。
未来を見る。
――警察、ニュース、能力者殺害事件。
世界が騒ぎ始める未来。
霊能力ブーム、能力者同士の疑い。
恐怖、そしてみき。
「見えた。心を読む男、死んだ」
テレビの中のみきは言った。
スタジオがざわめく。
「殺したのは、未来を見る男」――
「……これが能力者の時代か」
能力者最初の死者がでた。
その夜、能力者同士の殺し合いが始まった。




