第1章 7話 闇の精霊
残酷な描写が含まれます。苦手な方はご遠慮下さい。
この物語はフィクションです。実在の人物、法人等は一切関係はございません。
レジェンド Online
ほのぼのと
第1章 7話 闇の精霊
真っ暗な闇の中をひたすら走る白い狼がいた、風を切る音が「レジェンド」を始めた頃より大きくなったように感じられる、周囲を流れる景色の違いから確実に早くなっていると牙自身が感じていた。
仁は光輝との電話を終えた後、時間が早かったこともありまたこの世界にもどってきていた。
自分で走っていながらも(何処まで早くなるんだ?今何キロ出てるんだ?)と思うほど速さが違うのだ。
(早く走れることが気持ちよく楽しい)と感じる牙だった。Lv20以上は一度行った事のある町には転送出来るようになる・・・・と言われたのだが、それ以上に走るのが楽しく、今も真っ暗な闇に包まれた街道をひた走っているのだった。
小人族の初期町を出て、転げ落ちるようにジャンプしまくって落下ダメージをくらいまくりながらも、5分ほどで急な坂道を降りきり現在は森に囲まれた街道をひたすら走っていた。
走り始めて気がついたことが一つあった。「今日は暗い」と。いつもなら2つある月が闇を照らし狼の目を持ってすれば、昼間とさほど変わらない速さで走れるのだが、今日に限ってはそれも通じないほどなのだ。それでも前から来る人通りも、獣たちの気配さえ感じないためMAXスピードに近い速度で牙は走っていた。
森の木々からは、枯れ果ててカサカサした音が時折吹く風と共に聞こえてくる。
若々しい草の香りではなく、森の土の匂いがそのまま牙の鼻を刺激していた。
「ん!」と思って今しがた通り過ぎた道を歩いて戻る。昼間無かったはずのわき道が存在していたのだ、しかも今走ってきた街道より広いと感じたのだ。走る勢いで通り過ぎてしまったが、確かに存在していると感じたのだった。
(あれ???こんなところに脇道なんかあったっけ?こんなに広い道いくらなんでも見落とさないだろ~)と自分の目を疑うほど広いのだ。
(昼間は存在しない道、今日は月すら出ていない漆黒の闇夜・・・・どう考えてもあやしい・・・・)
(ここまで寄り道したんだから・・・・え~い、どうしよう・・・・いってしまえ~~~)と気合一発走り出してしまった。
走っても~走っても~先が来ない・・・・少しずつ登っていると感じるのだが、さほどの勾配でもないため速度を落とさないまま走り続けられていた。
(何処まで行くんだよ~~~~この道~~~~さっきのT字路から20分は走ってるし~~~~)言いようの無い不安が牙を襲っていた。
走りはじめから30分ほどで広葉樹の森を抜け、今は樹齢50年は経っていようかという針葉樹の木々に囲まれていた。あれだけ広かった道幅も今は幅2メートルほどに細くなっている。松脂のような匂いがあたり一面にして、(森林浴~~)と思うほど牙の精神をリラックスさせた。(リラックスして思うことは~~、腹減った~)である。
スタミナも切れてきたので休憩しながら食事でもと、精霊族の食料品店で貰ったパンを獣人の姿に戻ってバックから取り出す。
「あれ?」昨日の晩のパンと比べると味が全然普通なのだ。
「あのパン旨かったな~~」と思わず独り言を放っていた。松脂の匂いをおかずに虚しく一人の食事である。
「こんな所で人に会えるとわの~~」と牙の後ろから男の老人らしき声がした。
驚いて振り向くと全身を真っ黒なローブで包んだ人らしきものが立っている。
(さっきまで誰一人居なかったのに・・・・しかも臭いがしない・・・・NPCか?)
「おっさん、いつ湧いた?」これが牙の出した答えだった。
「わしが見えるのか?よほど夜目が利くとみえる。わしは伝道者じゃ」
「いあ~、答えになってないし・・・・ってか、伝道者が何の用なんだ?」
「パンを一つ貰えんかと思ってな~」
(・・・・物乞いかよ)と思いながらまだまだ大量にあるパンをバックの中から取り出して伝道者と言い放つ老人に渡す。
「足りなかったらまだあるが?」
パンにかぶりつく自ら伝道者と名乗る老人を見て(ただの腹ペコ迷子かも)と思う。
「いやじゅうぶんじゃ。ところでおぬしは、ここが何処かわかって入ってきたのか?」
「いや、まったく」
「ほほ~、小人族の町のある山が白山、精霊族の町から望める山を黒山と言う。そしてその間にあるこの山が、月も出ない深い闇に包まれた時にしか姿を現さない闇山というのじゃ」牙は話の繋がり方の不自然さに(ん~ん、テンプレ?言ってるだけ?)と思う。
「なるほど、で、闇山には何があるんだ?」
「古代よりこのレジェンドの大地は地、火、風、水、雷、氷、音、光、闇の九つの精霊たちの使いである妖精たちと、妖精たちに愛された動物たちが住む場所であった」
(全然答えになってないんですが~~~~)と思いながら牙は聞き続ける。
「あるとき八大精霊たちは、自分たちの力が弱まっている事にそれぞれが気づき、力を回復させるために自らの精霊殿を築き眠りに着く事を選んだのじゃ」
「じゃあこの奥に精霊殿があって、闇の精霊が居るってことなのか?」
「勇気があるなら、自分で確かめてみるがよい」言い終えるとその老人の姿は闇の中に吸い込まれるように消えていった。
(ううううううううう~~~~~)考える牙だった。
(なんかボスとかも居そうだしな~、回復薬も持ってないし・・・・)
(まあ、死に戻りでもイッカ・・・・・・・・・・・・・・・・痛いけど)と思いながら獣人の姿のまま歩き出した。
歩き出して数分、深い闇の壁のような物に突き当たる。
「なんだこれ?」表面はぬるっとした液体のようにも見えるその壁をためらいも無くさわる。
「つめた~、でもなんか気持ちよかったりする」とそのまま手を押し込んでいく。
「まだつき抜けない」牙は思いっきり空気を肺の中へためると頭からその壁の中へ進み始める。
全身がぬるっとした感触の物にすっぽり収まると、泳ぐようにしてそれを掻き分けた。ものすごい抵抗が体全体にかかる。10回ほど掻き分けたところで手がぬるっとした物を突き抜け、つづいて頭、体、足が壁から抜ける。
(もう少し長かったら、やばかったかも・・・・)呼吸を止めていられる限界に近かったのだ。ぬるっとした感触が全身に残っていて少し気持ち悪い。
牙は目の辺りに残ったその感触を手で拭き取ってから目を開けた。
黒の大理石で敷き詰められたような地面、青黒く光るかがり火のような物が両脇に二列まっすぐ祠のような物まで続いている。距離にして50メートルほど、祠の入り口は幅1メートル高さ2メートルはあろうかという黒い大理石が左右に配置され、その上に二つの石を渡す様に同じく黒い大理石が積まれている。
その中は漆黒の闇というものが存在するなら、これがそうだと思わせる程の闇がそこに存在していた。
精霊殿と聞いて、神殿のような荘厳な建物をイメージしていた牙にとっては、少し物足りないと感じさせる物だった。
(あそこ・・・だろうな)と闇を見つめながら一歩を踏み出す牙、その一歩めで歩みを止めてしまった。闇の中に目が現れたのだ。青黒い炎を反射してギラギラと光る獣の目が一歩一歩ゆっくりではあるが確実に牙の方へと近づいて来る。
(黒い猫か?)と一瞬思う。周りが全て黒か闇に包まれている為、夜目を持ってしても遠近感がつかめないでいた。
近づいてくにつれ猫とは大きさが異なっているのがはっきりわかる。
(黒豹だ・・・・しかもでかい)4つ足を地面につけたままの状態で牙の腹上ほどの所に豹の頭がありそうな大きさだった。
(君に乗れそうだよ・・・・黒豹君・・・・)と思えるほど大きかった。
黒豹は牙の手前2メートル程の所で止まると、牙を下から上へ見上げるように見る。
「ここに一番最初に現れるのは、我らの同属と思っていたのが、・・・狼だとわな」静かな口調で黒豹が言う。
「しゃべった~~!」牙が驚いて大声を上げる。
「狼の貴様とて話すのに、我が話すことが、そんなにも驚きの対象となるのか?」
(そお言われると・・・まあ・・・現実じゃないから~~)と納得する。
「いや~、なんとなく・・・」牙は今、猫に睨まれたネズミ状態なのだ。
この距離まで近づくと、黒豹の肩や腰が異常に発達して並々ならぬ運動能力を有していることが見て取れた。それに見合った熊にも負けないほどの足と爪が戦闘能力の高さを示している。
(こんなのに・・・勝てるのか??)と少し弱気になる牙。
「伝道者には、会ったのだろう?」
「は?あ~、あの爺さんになら、さっき」
「ならば、ついて来い」
言われるままに黒豹の後を着いて行く牙、意外な展開にほっと胸をなでおろしていた。そして祠の闇へ一匹と一人?は入っていく。
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一面が黒の大理石のような物に囲まれた回廊に黒い霧のような物がたちこめている、2メートルも離れれば前を歩く黒豹の姿さえも見えなくなりそうな空間だった。
何処まで続いているのか先が見えないため検討もつかない、入り口を入ってもう結構な時間がたってるはずなのだが・・・不安だけが牙の頭の中を駆け巡る。
(いきなり落とし穴とかって・・・黒豹が前を歩いてるんだからそれは無いか・・・)などと牙はネガティブな方へ考えをめぐらしていた。
黒豹の歩みは思ったより早く、少しでも気を抜いていると途端に距離を開けられ、その度に牙は早足で距離をつめていた。
「何処まで続くんだ?」と思わず牙が口に出す。
「もうそろそろだ」黒豹が牙に振り向いて言う。ちらりと見えた黒豹の犬歯が暗闇に対比して白くその凶暴さをより一掃際立たせた。
(あれには、噛まれたくない・・・)と牙は思うのだった。
ふと周りが今までとは違う雰囲気なのに牙は気づく。足からは依然として硬さと冷たさが伝わってくるのだが、回廊の周りにあった壁と天井がまじかに感じられなくなっていたのだった。それと共に闇の霧の濃度がより濃く、霧そのものに重さと暖かさのようなものが加わったように感じていた。
「ついたぞ」と黒豹、その途端に牙達の周りの霧が動き出した。霧そのものが何かの意思を持った存在のごとく、渦を巻いてい動いているように牙は感じていた。暴風に巻き込まれるかのような轟音と共に黒い霧は黒豹と牙の正面に渦となって集積していく。
「なんだ?何が起こってる?」大声で叫ぶ牙だが、轟音にかき消され黒豹の耳には届かない。
やがてその渦は、人の形のように集束し轟音もそれとともに収する、と共にその部屋の全体が見渡せるようになる。
100メートル四方はあるかと思われるその部屋は全体が黒御影石のような石に覆われ、その真ん中にポツンと白い大理石で出来た棺のようなものが置かれているだけのだだっ広い空間だった。牙はその無駄に広い空間にただ圧倒されていた。
牙の前にいた黒豹が、人の形に集束した黒い霧の前まで歩いていくと、こちらに振り返りその場に座る。
「我が主、闇の精霊である」と黒豹が言う。声が石に反響していつまでも耳に残るような感じに聞こえ、牙は少し不快感を覚えた。
ただの霧の集合体だった物は、はみるみる輪郭をあらわにしていく、正面に折りたたまれたコウモリの羽の様な翼が正面から開いて人の姿を現した。身長160センチ程の女性の姿で、バランスの取れた体あのラインをそのまま表している様な滑らかな黒いボディースーツのような物を着ていた。何かの動物を連想させるような、まだ少女のあどけなさを残した顔も牙は素直に(綺麗だ)と感じていた。
「うわ~・・・・綺麗!」牙がため息交じりで言葉を発した。
牙の目の前にある存在は、コウモリというよりは悪魔の翼といった方がしっくりくる翼さえなければ、美しい精霊族の女性となんら変わらない容姿をしている。
「この姿となるのは5万年ぶりのこと、外の者と会うのも5万年ぶりなのです。そお言っていただけてとても嬉しい」闇の精霊は本当に嬉しそうな笑顔を見せた。
「5万年?そんなに」(んなわきゃね~じゃん、所詮NPCのたわごとだ~)と思いながらも牙は話をあわせていく。
「5万年の間私はこの地に眠って力を蓄えてまいりました。ほかの妖精たちの主である精霊が目を覚ましたのは、うすうす気づいていましたが、この地を訪れる者がいなかったため、私が最後に目覚めることになりました」透き通るような声だと牙は思う。
(ほかの妖精の話は攻略スレとかで見てたけど・・・闇って聞いたのはさっきの親父がはじめてだったしな~・・・何が起きるんだ??)と多少の不安を牙は感じていた。
「じゃあ、ほかの妖精達にも主としての精霊がいるんですか?」(答えは返ってこないだろう)と予想しながらも自分の疑問をぶつける。
「そのとおりです。闇の妖精もわたくしが目を覚ましたことでこの世界に目覚めることでしょう」
(うっへ~、普通に返ってきた~)と少し驚く牙・・・(まさか・・・道上さん系?)とも思ったりするのである。
「あなたに一つお願いがあるのですが、聞いていただけませんか?」
(おお~遂に来たか~黒豹倒すことが出来たら、闇の妖精魔法使えるようにしてくれるとか?)そお考えた。
「その必要はありません」と闇の精霊。
「へ????・・・俺、今、何も言ってない・・・よね?」と牙が思いっきり不審な顔で闇の精霊を見つめた。
「先ほどから、わたくしは音声による会話はしていません。直接あなたの精神とお話させていただいています」
「はい~~~~~?」と牙
「ですから、あなたの精神と直接お話しさせていただいています」
その通りなのだ、(闇の精霊の声だけは反響したように聞こえていない)と今気づいたのだ。
「わかりました・・・慣れないけど・・・」相変わらず口に出して話してしまう。
「わたくしも、あなた達のような冒険者と同じように旅がしたいのですが、わたくしには実体がないのです」
「ん~、っていうことは、今・・・目の前に居るあなたは???」
「ここのような限られた場所でしか実体化出来ないと言ったほうが解り易いかも知れませんね、ここを出れば世界は光に満たされた世界、わたくしの居場所は極端に少なくなります」
「で?お願いというのわ?」
「わたくしとあなたが契約を結ぶことで、私はあなたを通してここ以外の世界を見ることが出来るようになるのです。あなたは、わたくしの持つ全ての闇属性の魔法を使えるようになります。でもこれには、あなたにとってのリスクも存在してしまいます」
「う~ん、妖精魔法なんて一つも覚えてないし~・・・覚えても、こっちの方を優先で使うと思うけど」と牙は鍛冶から譲り受けた日本刀を闇の精霊の前に差し出した。
「月闇ですね・・・良い刀です」
「名まで判るんだ~・・・すごいすごい・・・で・・・リスクわ?」
「はい・・・闇の属性以外の魔法の取得及び使用が出来ません、今まで覚えた物があったとしても使用できなくなります。そして光属性の回復魔法を受け付けなくなってしまいます。ほかの属性の魔法攻撃によるダメージは50%減少出来ますが、光属性の攻撃魔法を受けると50%増のダメージを受けてしまいます」
「え・・・それだけ?」と牙。
「は、はい」きょとんとした顔で闇の精霊が答えた。
「メリットも有るんだよね?」
「はい、他者からの闇属性魔法の無効化、闇属性魔法の詠唱スピードが半分に短縮でき、効果は20%増しの効果を与えられます。また、暗闇の中での移動速度と敏捷性が20%上昇します・・・こんなところでしょうか」
「闇属性の魔法がどんな物かわからないけど、いいよ外にでたいんでしょ?」
「あ、はい・・・簡単に言うと時間と空間を操る魔法になりますが・・・本当に?よろしいんですか?」
「ええ。仲間は多い方が楽しいしこんな所にじっとしてたら、外に出たい気持ちよ~くわかる気がするから」牙は闇の精霊に近づいて手を差し出した。
「主よ本当にこのような者でよろしいのでしょうか?この者はLv20を超えているのに他の妖精魔法も習得しておりません、装備に至ってはまともな装備は日本刀と首輪だけです、服は初期に冒険者に与えられる麻の服、装備ですらありません」黒豹が闇の精霊に向き直り話しかける。
牙には全く聞こえていない(ん?何か話してる?)
「ほかの冒険者達とは全く異なった冒険をされているのでしょう、それにあのLvであの(月闇)を持てるのです、面白い方だと思います」
「主がそれでいいと言うのでしたら・・・私もご一緒させてくださると言う条件で、賛成いたします」
「それは・・・」「あなたがここを出るにわ・・・一度転生しなければ・・・」闇の精霊に悲しみの表情が浮かぶ。
「いずれは、転生しなければならないのです。姿は変われど私は、私のままの記憶持って転生するのですから、案ずる事などありますまい」黒豹に笑みがこぼれる。
「わかりました」闇の精霊は黒豹の頭をなぜると、意を決したように牙に向き直る。
牙は自分に向けられたその表情に決意のような物を感じ姿勢を正した。
「牙様。私の名は月夜闇の雅、この子は獣王が眷属黒嶺。よろしくお願いします」と闇の精霊は差し出された手をぎゅっと握り返してきた。
「雅さん、黒嶺さん、よろしく」牙は握られた手の暖かさを感じていた。
「一箇所だけ生きたい所へお連れ出来ます・・・どこか行きたい場所は?」
「狼族の初期街へ・・・まだ行った事無いんです・・・」
「まあ・・・」雅と黒嶺が目を合わせ笑ったように感じた。次の瞬間、雅は黒い霧となり黒い霧が渦を巻きはじめる、竜巻のような轟音と共に黒い霧の渦に巻き込まれた牙とクロミネの姿が闇の精霊殿より消えていった。
主を失った精霊殿に一瞬の静けさが、そしていたずら好きでおちゃめな小さな闇の妖精たちの姿が次々と現れ、彼女たちの笑い声で充満していく。
彼女たちはそこで、新たな冒険者との契約を待ち受けることとなった。
最後までお付き合いいただき大変ありがとうございます。
また、お気に入り登録ありがとうございます。筆者の励みになっております。
感想、評価、批判等絶賛募集中です。よろしくお願いします。
誤字脱字等のご指摘、作者ページにて随時受け付けております。
氷の精霊を追加いたしました。
設定を書き始めてから考えてしまったので・・・すいません^^;
2012/05/25




