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第1章  4話 南南東へ

残酷な描写が含まれます。苦手な方はご遠慮下さい。

この物語はフィクションです。実在の人物、法人等は一切関係はございません。

レジェンド Online


ほのぼのと



 第1章  4話 南南東へ



 牙は石畳の道を一人歩いている。昨晩もうろついたこの町は、東西南北に大通りが配置されていて、そこに整然と建てられた建物のほとんどが、太い丸太を柱や梁に使い、壁は白い漆喰のようなもので出来ているようだった。陽のあたり方にもよるが、白さが一段と強調され眩しさすら感じさせられる。

 

 牙がログインしたのは昨日マリーの父からパンとミルクを貰い、牙がパン屋だと思っていた建物の前だった。だがその店舗に人の姿は無く、がらーんとした空っぽの空間がショーウィンドーとなったガラス越しに見えるだけだった。

 NPCともPCともわからない、あの仲むつまじい親子の姿もそこには無かった。

(不思議ではあるが、所詮ゲームの中だから・・・・考えるだけ無駄)と言う結論を仁は出していた。

 

 久しぶりに獣人の姿になって歩いているのだが、普通の人と同じアバターに、猫耳ならぬ狼耳が頭の上にちょんとのり、尾骶骨のあたりからシッポがハエテいるだけで、なんら違和感は感じていなかった。

普段人の耳があるところに耳が無く、見た目の違和感を感じた為、アバターを作るときに髪で隠れて見えないように、肩より下まである長髪にしたのだが、それが違和感として感じる一番の部分であった。中学に入るまで有無を言わさず丸坊主にされていて、短い髪が当たり前の仁にとっては長い髪は(・・・・気持ち悪い・・・・)のである。


 そうそう・・・・獣人の姿になってきずいたことが一つ、赤青黄色の三原色の組紐で編まれたミサンガのような首輪がいつのまにか・・・・勝手に装備されていた。

(これが??マリーお手製の首輪???だよな?)

今日ログインしたときに確認した冒険者のバックの中には、クエストのクリアアイテムは確認できなかったのだ。猪の牙×2、猪のシッポ、猪の毛皮、野ウサギの毛皮×5、熊の毛皮・・・・後は、肉と肉と肉と肉と肉と肉と肉と肉と肉と・・・熊の手×2だけであった。


 (毛皮とかは、防具屋で売れるかな~)と仁は思い防具屋探しにうろついている。何をするにもゲーム内コインである、Gゴールドがなかった。「レジェンド」でGを得るには、妖獣と呼ばれるMOBを倒すか、NPCからクエストの報酬としてGを得るしか方法がない。

 奇遇クエストでの報酬が特殊スキルとユニークアイテムだった為、牙は今のところ一文無しのオケラ状態。着ている物は麻のシャツに麻のズボン、後は首輪だけ。(狼になったとき、この麻のシャツやズボンはどこに行くんだ??)と一瞬思うが、(ゲームですから~)と言う事で納得する。・・・おいw


 4~5分歩いて東西南北に通った大通りが交差したところに差し掛かる、その四つ角付近にNPCの店と思われる店を発見する。

「防具屋わ~?」探そうと思う前に様々な動物のにおいが伝わってくる、大通りの南西の角からのにおいだった。近づくとショーウィンドー越しに立派な毛皮のコートや防具のようなものが、飾られていた。


(ちょっと、入るのに勇気がいるな)と思うが、(一文無しの不安を抱えたまま、過ごすよりは・・・)と思い直す。牙は意を決して(突撃!)と心の中で叫んで、防具屋のドアを開けた。

中に入ると防具屋というよりは、小さなブティックというくらい、整然と商品が陳列されている。(うっ臭いが・・・・)様々な種類の革製品から、獣たちの臭いが牙の敏感な嗅覚を襲っう。牙は思わず鼻を押さえてしまった。


「狼族の兄ちゃんには、きっついだろうよ」店の主人らしき精霊族にしては、ガタイのいい中年の親父さんが姿を現した。


「ええ、すいません・・・・ちょっと、きついです」本音だった。

(なんでこんなに自然な会話になるんだ?)と少し驚く。


「今日はどんなものを探しに来たんだい?」


「あ~あ、こっちが買ってもらいたい物があって~、毛皮の買取してくれませんか?」


「物によるけど・・・こっちにきて見せてみな!」店主の言葉に牙は主人の後を着いて店の奥へ、カウンターと言うよりは、もっと大きな作業代に熊の毛皮を広げていく。


「こりゃあ・・・・熊だな・・・・しかも相当大きいな・・・うん・・・」主人は質を確かめるように表裏を隅々まで確認していく。

「こんなのも有るんですが・・・・」と野うさぎと猪の毛皮も出してみる。


「なに~~!野うさぎに猪も・・・」驚いて主人は目を丸くする。「最近のこの町じゃあ野うさぎ一匹狩るのに、妖精魔法使わないと狩れないやつらばっかりになっちまって、質のいい毛皮が手に入らねえ・・・」毛皮の鑑定をしながら主人が愚痴をこぼす。


「・・・・・ん~~ん、20でどうだ?」主人の言う値段が安いのか高いのかさっぱり判らない仁は、黙りこくってしまった。

「わかった・・・22・・・いや25・・・限界だ」(ありゃ~~上がったわ)


「わかりました25で」と言うと主人は手を差し伸べてくる・・(握手でいいんだよな・・)

牙は主人の手を握り返した。その瞬間に牙の冒険者のバックの中に25万Gが買取金額として入金され、毛皮に付いていた所有者の名前が、牙から防具屋主人に変更された。

(25Gじゃなく25万Gなのねww)と少し驚くが、始めてゲーム内通貨を手にしたのである。(25万Gって??どれだけの価値なんだ???)・・・・のうてんきな牙君であった。



><><><><><><




 牙はその後、食料品店で肉の山を売りさばき、11万G程を獲得・・・・200Kgもの熊の肉は1キロ500G程だったが・・・・なぜかサービスでパンを大量にゲットしていた。


 今は、いかにも頑固そうな武器屋の爺が牙の前にいた。


「これなんですが・・・・」牙は残った熊の手×2と猪の牙×2猪のシッポを店主の前に広げていく。


「うちで買取できるのは、これだけだな」と言って店主が手にしたのは、以外にも猪のシッポだった。「5000でいいなら、買い取るよ」


「わかりました、5000で」牙は主人に手を差し伸べる、がっちり握手して売買が完了する。残った熊の手、猪の牙・・・「これらは何処に行ったら売れますか?」駄目もとで聞いた。


「・・・・知らんのか?・・・・熊の手も、猪の牙も、薬の高級材料じゃよ・・・・まあ薬と言ってもこっちのじゃがな」と言って腕を下から持ち上げる仕草をする。


(あ~~あ、元気にするアヤシイくすりね~~)と愛想笑いでごまかした。


「この町に薬屋さんは・・・・見かけなかったんですが??」


「あったりまえじゃ~~、そこらへんの森に行けば普通に薬草が手に入る、買うやつなんか、おりりゃ~せんよ」もっともな話だった。

「この町から南南西に少し行った所に、小人族の町がある・・・そこなら買い取ってくれるかもしれんの~」


(南ですか~~~~、ざんね~~~ん)


「わかりました。買い取って頂いてありがとうございます」そそくさと店を出ようとする牙。


「おぬし・・・武器はいらんのか?」店主が牙を呼び止める。


「金属の武器は売り切れだって、さっき言いませんでしたっけ?」


「そうじゃ、うちには無い・・・じゃが小人族の町に行けば良い物がみつかるじゃろ~、なんたって鍛冶屋の町じゃからの~」


(ん?鍛冶屋の町だって・・・薬は・・・・何処にいった?)と思うが、武器が欲しい牙の心が少し揺れる。(いつまでも爪と噛み付きじゃあ・・・・)


武器屋の主人も何かたくらみがありそうだった。

「そこで相談なんだが・・・・うちの仕入れの品を小人族の村から運んできて欲しいんじゃが?1万Gで請け負ってみる気はないか?」

(おお~~、クエストだ~~、始めてじゃないか~まともなクエストするのわ~)感動だった。

「北に行く予定なんですが・・・・」困った振りをする。(このゲームでの物や報酬は渋れば値段が上がるはずだ)

「わかった、1万3千だそう、これ以上は赤字になる・・・」


「わかりました、バックで持ってこれる量を一往復だけ1万4千で・・・」ふっかけた。


「う~~ん~~~、よろしく頼む」店主が渋々手を出した。牙は出された手を握り返す。

”ポーン”「お使いクエスト受け取りました」

”ポーン”「パッシブスキル、交渉術を覚えました」とシステムメッセージが流れた。

(???こおいうのも・・・・スキルなんだ・・・・)と驚く牙。

(何がスキルになるか判らないから、なんでもやってみよ~~)と思うのだった。


 武器屋の主人から、商品受け取りの際の書類やら相手方に支払う手形等の一式を受け取る。(いや~なんか・・・本格的・・・なのだが、少し面倒くさい)と思ってしまう。

 小人族の町は、この町の南門を出て5キロほど行った所にあって、そこまでは広い通りを道なりに行けば着く事、小人族の町には鍛冶屋が一軒しか無いことを武器屋の主人から聞き、牙は小人族の町に向け出発した。


(人が歩いて時速4kmだから、狼で5キロなら1時間は掛からないだろう、向こうで商品の受け取りに1時間掛かったとしても、往復で3時間あれば終わる)と考えた。

 町を出てそれまでの石畳の道から乾いた土の道になった街道を狼の姿に戻って、ひたすら走っているのであった。

 町を出ると街道はすぐに広葉樹の森の中に入っていく、幅10mはあろうかという、そこそこ広い道だった。この世界に大型トラックが有ったとしても、すれ違えるほどの道幅だと思えた。前から向かって来る人影が無いのを確認して、牙はいっきに加速していく。加速すると景色が前方に集中して、横にあるはずの森が流れるように通り過ぎていく。(???はい??自転車のフルスピードと同じくらいか??)と思わせるほどだ。


 しばらく走っていると、急に腹痛が襲ってきた。差し込むような痛さに、初めわ(走り過ぎか??)と思ったのだが、すぐに腹がグルグルいってきた・・・・・・・・(あ~~、当たった~~)と思うのだった。

 無視して走り続けようかと思ったが、ログアウトしなかった時の惨状が目に浮かび慌ててログアウトする。


森は、まだまだ続いていた。




><><><><><><




 ログアウトした仁君は小さな小部屋へ・・・・(・書きたいが・・・・止めておこう・・・・)


 2時間後・・・・止めの薬が効いてきて事なきを得る・・・・乙




><><><><><><




 再びログインしたのはPM 3時を少し過ぎていた。


 走り出して10分ほど・・・・森を抜けあたりは草原となった。前方には見上げるような山が・・・・その東側稜線、3合目程の場所に石作りの建物が密集しているのが見受けられた。一本だけ高い煙突があり煙が上がって居るのが見える・・・・あれが鍛冶屋なのだろう・・・・。

九十九折の坂道が延々と続いているのが見えた・・・・。


(坂道なんて・・・・聞いてないし・・・・っていうか、どう見ても登山だろ~)牙は一瞬武器屋の親父に殺意を抱く。


 腹は立ったが、行かなければクエストも自分の武器も手に入らないと諦めて登山を開始する。勢いさえついていれば、2メートル位の崖ならジャンプで駆け上がることが出来るようになっていたので、ぴょんぴょん飛んで中腹位まではクリア、スタミナが続かなかった・・・・後は、歩いて登りきった。


 山肌を切り崩してそこに町を作ったという感じが伝わってきた。山のほうを見ると山肌にはいくつもの穴が空けられ、石を削りだしたような形跡も見受けられた。


(金属の取れる鉱脈の近くに町を作ったのだろう)と牙は推測した。


 町の建物は白っぽい柔石のような物を積み上げて建てられたものが多かった。ところどころ地形をそのまま利用して大きな岩に穴を掘ったような住居のようなものも時々見受けられる。比較的平屋の建物が多い中、鍛冶屋の煙突だけが4階建てのビルの高さくらいに伸びているのが異様に感じられた。


 牙君には珍しく、一発で鍛冶屋に到着。{毎回お約束じゃないのか??}


入り口に武器屋の看板が掛かっている木戸を開いて店に入った。

入ると店内は一坪ほどの広さでロウソクの明かりが灯されていた、窓が無いのだ。普通よりずいぶん低いカウンターが設置されていて、看板を見ないで入ると何屋に入ったのか全く判らない感じである。

「こんにちわ~、精霊族の町の武器屋の爺さんから言われて、買い付けに来ました~」


「はい」とカウンターの後ろにあるドアが開いて、小人族の店員らしき人が現れる。

身長140センチ程だが、中年のがっしりした体格の親父である。黒く煤けたシャツから伸びる両腕は体格に見合わない太さをしているのだ。(おお~すごい腕~)と牙は驚く。


「これなんですが」牙は精霊族の武器屋の爺に渡された書類をカウンターに並べていく。親父は書類一つ一つにじっくりと目を通す。温和そうな顔つきなのだが、眼光だけが鋭く感じられた。ひとおおり目を通すと「わかった、商品は裏の工房で渡すから裏にまわってくんな、そこ出てすぐ左に、裏にいく路地があるから」それだけ言ってドアの向こうに消えていってしまった。


(しっかし、このゲームのNPCは、NPCみたいじゃね~な・・・・)と思いつつ、人一人通るのがやっとの左右を石で囲まれた路地を通って裏に回る。途中から金属同士を打ち付ける小気味いい音が反響して聞こえてくる。突き当たった先は大きな通りだった。ふと鍛冶屋の建物に振り返ると、通りに面して扉も何も無い、ただ屋根だけがある作業場が広がっていた。工房の一番奥には真っ赤に燃え盛る炉のようなものが見えた。鉄なのかコークスなのか判らないが、少し硫黄の様な酸味がかった刺激臭が充満していた。その手前で10人ほどの小人族の職人がハンマーを振るっている。


(さっきのおっさんは~~)と見渡すと、職人連中に指示を出していた。(なるほどね~、それであの目か・・・・)と一人納得する。


「狼の兄ちゃん!」不意に牙が呼ばれる。

「まだ少し掛かりそうだ・・・こっちにきて休んでな」言われるままに工房の隅のほうにある休憩所なのだろうと思われる小屋に入る。10畳ほどはあると思われる広さの小屋の中には御座が敷かれていて、休憩の際に横になることも出来るようだった。


「兄ちゃんすまねえな」と言って差し出されたカップを受け取る。コーヒーのいい香りがした。 

「仕事ですから」牙は愛想笑いする。(所詮ゲーム・・・・この世界を楽しめればいいや・・・始めっからゲームのテンプレからはれてるし)と牙は考えるようになっていた。


 牙は渡されたコーヒーを一口・・・・素直に旨いと思える味だった。


牙は「この世界では、何をするのも自由・・・・」と言う「レジェンド」のうたい文句を思い出していた。(テンプレ通りじゃなくたって良いってことだよな?)そう思う。


「たとえ回り道でも、誰がなんと言おうと俺にしか出来ない道を行けばいいんだ・・・」

と思わず声に出して、強がってみたりするのであった。




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