第2章 5話 義姉弟
残酷な描写が含まれます。苦手な方はご遠慮下さい。
この物語はフィクションです。実在の人物、法人等は一切関係はございません。
笑って終われるストーリーを思い浮かべながら、書き終えると ええええええええええ!
ということで、更新しようかどうか。。。。
迷いましたが「いっけえええええええ!」勢いだっけっで、爆死覚悟の更新!
レジェンド Online
ほのぼのと
第2章 5話 義姉弟
先ほどから牙に個別通話の着信を知らせる表示とコールが何度も通知されていた。
「出ないんですか?」雅の問いに「関わりたくない人なんです…」と答え、放置すること8回目のコールが今も鳴っている。
「あの野朗! 完璧に無視してやがる!」
牙が座っている席の3つ後ろの席に座った雪朱雀がいらだちの絶頂に達しようとしていた。隊長連中を連れ立って街の中をうろついていた際にレオパルドが牙を見かけ、雪朱雀も牙が木羽であることを確認し着けて来たのだ。
何度も個別通話で呼び出しをかけるが、出ない事が何よりの確信となっていた。
「木羽~~~~~!」雪朱雀は叫びながら立ち上がると牙に向けてテーブルごと押し出していく、白い大理石になった床を押し出されたテーブルが滑べる音かあたりに響き、牙との間に置かれたテーブルをも巻き込んで一緒に押し出される。
聞き覚えのある女性の叫び声に振り向いた牙は、普段誰もが綺麗だと褒めたその顔が、鬼の形相となってテーブルごと突っ込んでくるのを確認すると「月闇」と黒嶺を抱き上げて自分の座っていた席のテーブルの上に飛び乗り、テーブルの間に挟まれるのを回避する。
「きさま~~~~~! 人が何度も呼び出して居るのに何故出ない!」
「いや~~~、なんとなく…」と言いながら黒嶺をバックの中にあわてて突っ込んで、いまだに押され続けるテーブルの上でバランスを保とうとする。辺りは騒然として牙の席の前に座っていた何人かがテーブルの間に挟まれ巻き込まれる。
「なんとなくだと! ふ~ざ~け~るなああああああああああああ!」
近くに転がった椅子を持ち上げた雪朱雀が牙目がけて投げ放つ。
「あぶねええええええっし!」難なくよけられた椅子が誰もいないテーブルで跳ねて店外へ転がっていく様を見ながら牙が叫ぶ。
「貴様が避けるからだろ~~が~~~!」
「避けなきゃもっとあぶねえっし!」牙は周りの状況を確認し、テーブルの上を走ってバラの木で囲まれたオープンカフェの垣根を飛び越え、南に向けて走り出しす。
雪朱雀も同じようにテーブルの上を駆けながら魔法の詠唱を始める。
「炎の妖精の加護を受け、放つ! 火炎弾!」放たれた直径1メートル程の火の玉が走る牙のすぐ後で着弾してロータリーの石畳を焦がしていく。飛び散った火の粉が牙に降りかかり3%程のダメージを受ける。
「あっぶねえええええええええ! 他のプレイヤーがいてもお構いなしだからな~~あいつは…」と2年前に闘った時の事を、ずいぶんと昔の事の様に思い出すのだった。
「氷の妖精の加護を受け、放つ! 氷流波!」
雪朱雀の下から振り上げられた手の向けられた方向に、氷が地面を伝って流れるように放たれ牙の足をかすめていくのだった。
ダメージを受けると共に走力が削られ、開いた二人の間合いが徐々に詰まっていく。
牙は南の更地まで来ると逃げるの足を止め雪朱雀と正対する。
野次馬が遠巻きに二人の喧嘩を冷やかすような声を上げるが、当人たちは全く気にする様子も無い。
「ずいぶん息が上がってますが、まだやるんですか?」
二人が走ってきた距離は200メートルほどだったが、ほぼ全力疾走だったため雪朱雀は、少し肩で息をしている。それを見て牙が挑発するのだ。挑発するように見せかけて牙は闇の魔法について、牙が持っている資料を思考操作しながら大急ぎで閲覧しているのだった。”ポーン”といういつもの音がして思考加速を覚えた事を表示するが、かまわず闇属性魔法の詠唱とその効果について資料を読み続ける…その度に思考加速がLvアップしすぐにLv10に到達する。
「あたりまえだあああああああああ!」
雪朱雀の怒声に周りが圧倒されるが、牙は全く動じない! …というより…違うことをしていた。
「何やってるんだ?」
二人の周りを取り囲む野次馬を掻き分けて入る男。鍛冶だった。鍛冶は近くの野次馬に声をかけたのだった。
「いや~~~、ただの姉弟喧嘩っすね!」と鬼族の男が言う。
身長180センチ強で鍛冶と変わらないほどの背の高い男で、堀の深い顔に短い髪、一本だけの角が他の鬼族のプレイヤーより長めに伸びている。灰色の着物に蒼い羽織という和風のたたずまいをしていたので、鍛冶は親近感を抱いたのだった。仁の幼なじみの光輝だった。
「ふ~~~ん、ワンコにあんな歳の近い姉がいたんだ……」
「あ~~! 母親が再婚して…義理の姉っすね! 同級生の…って、牙のこと知ってるんですか?」
驚いた顔をした光が鍛冶の方に振り向く。
「ちょっと斬り合っただけだ!」鍛冶は大笑いするのだった。
「ええええええええええええええええ! 鍛冶さん? ですか?」の問いに無言で頷く鍛冶。
「ワンコ、刀もぬいてねぇじゃねぇか!?」
「相手が魔法を主体に闘う相手なんで…でも、すぐ抜くと思いますよ」
相手の利き手じゃない方にお互いが走り出した瞬間「月闇」が抜かれる。見たことも無い黒い霧が「月闇」から放たれ、相手を包むようにまとわりつく。
「雷の妖精の加護を受け、放つ! 雷光!」雪朱雀が天に放った雷が雪朱雀の頭上で光を放ち彼女の周囲10メートルほどを全て焼き尽くしていく、後ろに回り込もうとした牙にもその直撃が落ちた様に見えた。黒い霧が牙を覆って、焦げ付いて黒い煙が上がっているかの様に周囲からは見えていた。
「終わったか!」野次馬が口を揃えるように叫ぶ、千基行軍の者からは「さすが副団長!」など雪朱雀を称える言葉が放たれる。
二人を覆った黒い霧が晴れ、二人の姿が忽然と現れる。
「あれをくらって、倒れないだと!」雪朱雀が叫ぶ。
「なんだよ? あの霧? 霧なのか? 煙?」野次馬達が様々な憶測を叫ぶが牙はそれに答えようとはしない。
「みたいですね……」(雅さんありがとう!)心の中で叫ぶ牙がいた。
くらう瞬間に雅が発動させた「闇霧」によって雪朱雀の雷光の威力を無効化されていた。
「クールタイムは5分です! すぐにあれと同じような威力の魔法が来ても防ぎきれません!」雅の声に牙は我に戻って、構えをとる。
「闇属性の魔法みてぇだな…あれが」鍛冶が独り言のようにポツリと呟いた。
「えっ? えええええええええ!」周囲に驚愕の声が上がる。
長めの両刃となった両手剣を抜く雪朱雀。
「最後はこれしかないよな! しねえええええええええええぃ!」叫ぶと同時に猛然と牙に斬りかかって行く。
「だから無駄美人って言われる!」受け流しながら牙が叫ぶ。
「うるせえええええ! てめえにはぜってぇ~言わせねぇ~~!」更にスピードも威力も増していく雪朱雀の剣に、周囲が圧倒されていく。
「遊んでねぇで、さっさと斬っちまえ! 牙!」鍛冶には牙が遊んで居るようにしか映っていないのだ。
鍛冶の叫びに一瞬間合いを取った雪朱雀が思考操作で詠唱した火炎弾を鍛冶に放とうとする。
「あ! あの人は関係ないだろ~~!」と牙の叫びも虚しく放たれた火炎弾に鍛冶は一歩野次馬の前に踏み出すと何もせずにそれを受けるのだった。
直撃が鍛冶を襲うが、全くダメージを感じさせない鍛冶がそこにいた。「俺に火の属性はきかねぇよ!」と笑みを見せる。
鍛冶の周りで驚きの声が上がるが鍛冶は全く気にしないそぶりを見せるのだった。
(そおだった…)と牙は、ほっと胸を撫で下ろすのだ。
次を放とうとする雪朱雀だったが、MP切れの様で、発動しかけた魔法が消えていった。
「姉弟喧嘩だ! 口出し無用!」とだけ言い放つと牙にその剣先を向けるのだ。
牙は大上段から振り下ろされる剣を何度も受け流す。
(胴が、がら空きだっちゅうの!)と思いながらも、斬りに行けずにいる。
綺麗な黒髪に汗がにじむのが解かるほど懸命に振り抜かれる剣を受けながら、剣を合わせるうちに雪朱雀の寂しさが牙に伝わってくる様な気がしていた。
剣と剣とが打ち付けられる音だけが、世界に存在する唯一の音と錯覚されるほど、激しい打ち合いが続く。
「わたしや、わたしの父をどう思おうが、それはいい!」
「だが、自分の母親に対してまで、他人行儀になるのは何故だ!?」
雪朱雀の目に涙があふれでているのが、見て取れる。ほとんど牙の姿など見えていないはず…と思いながら、剣を受け流す。
「お前の母……優し過ぎるあの人を…悲しませるな!」
むせび泣くような声でそれだけ言うと雪朱雀は膝から崩れ落ち、剣を大地に突き刺し上半身が崩れ落ちるのを必死でこらえるのだ。
牙は「月闇」を鞘に戻す。
「幸せになってくれって伝えてくれ! 俺の帰る場所は、もうあそこには無いから…」
牙を知る誰もがその場所に居て、二人の喧嘩の行方を見守っていた。
勝負がついた後に牙に声を掛けられる者は、誰一人居なかった。
牙の去る後ろで、雪朱雀が大声を上げて泣き叫ぶ声が牙の耳にもかすかに届いていた。
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