第2章 4話 シッポがああああああああ!
残酷な描写が含まれます。苦手な方はご遠慮下さい。
この物語はフィクションです。実在の人物、法人等は一切関係はございません。
レジェンド Online
ほのぼのと
第2章 4話 シッポがああああああああ!
「GM ミチ」として現れた道上によって発生したゲーム内の別空間に牙はいた。今後実装される予定の「PVP(プレイヤー ヴァーサス プレイヤー)」の特殊フィールドと説明されたその空間は牙の夜目をもってしても薄暗く果てが見えないほど広大なフィールドの様だった。何日かぶりに牙の体から離れた雅と、鬼族のアバターを使用した道上が頭に角を二本突き出している。(会社で鬼~~~とかっていわれてるんだろうな~~)と牙は思いながら殆んどいじっていないと言う道上のアバターを見るのだった。二人が個別通話を始め15分以上が過ぎていた。
白い狼の姿になった牙は、あまりに暇すぎて黒嶺と追いかけっこを始めていた。
必死になって牙の白いシッポを捕まえようと追いかける黒嶺近づくのを見計らったように振り上げられる牙のシッポ!猫じゃらしを追う猫のような可愛らしさをひねったか体で横目で見ながら、何ともだらしなく牙の目じりが下がっている。
(これもそろそろ飽きてきた…)と思いながら、いまだに話し続ける二人を視界の中に捕らえる。(ううううううううう……まだ話してる……)と思った瞬間牙はお尻の先に激痛を覚えるのだった。
「いってええええええええええええええええええええ!」(キャイン! キャイン! キャイン!)
黒嶺が一瞬の隙を狙って牙のモフモフなシッポに噛み付いていた!
牙が人の姿に戻ってバックの中からあわててパンを取り出して黒嶺に見えるように目の前に持っていくとパンに気を取られた黒嶺が嚙んだ牙のシッポを放す。
「いて、いて、いってえええええええし!」
牙は噛まれて少し血のにじんたシッポを握る。
「ううううううううう、モッフモフのしっぽがあああああああ!」
握ったことによってじんわりと痛みがやわらいで少し減ったHP が回復していく”ポーン”といつもの音が聞こえ「手当てを覚えました」とアナウンスが牙の頭に響くのだった。
「おおお! 回復系スキル始めて覚えた!」思わず大声を上げる。
「ミャー?」とパンにかぶりつく黒嶺が一瞬牙に振り返るが、すぐにパンに向き直り一心不乱にパンに向き合うのだった。
「黒嶺さんのおかげです…痛かったけど…」と黒嶺の頭を撫でようとするがその手を止める。
(ご飯を食べてる飼い犬を撫ぜようと思って手を出したら噛まれたっけ……)と小学生の頃の記憶を思い出す。
(でも…黒嶺さんは犬じゃないから…)
近づけた左手の小指が、みごとに噛まれるのだった。
「いってええええええええええええ! いたいです~~黒嶺さん! もうしませんから! 放してください!」
黒嶺が怒って鋭い目つきで牙を睨みつける。
ようやく放された左の小指にくっきりと黒嶺の犬歯の跡が残り血が垂れていた。あわてて噛まれた小指を右手で握ると手当てがLv2に…痛みは引くが、跡が残ったままなのでHP回復丸薬を取り出して直径2センチ程の巨大なイクラのような丸薬を口にする……プチっと口の中ではじけるとオレンジ味が口いっぱいに広がる、(イクラ味じゃなくてよかった~~~!)と思うのだが、傷跡が変化する様子はない。
「効かない……」もう一つ取り出して患部に押し当ててイクラを割る、はじけたイクラの中身が辺りに拡散し、オレンジの香りが広がって犬歯の跡がみるみる消え元に戻っていく。
「ここで使っててよかったよ…」
雅との契約で、回復効果が一番高いであろう光属性の回復魔法を受け付けない体である。回復はアイテム頼みと言ってよかった。
牙は「月闇」を抜いてわざと自分の体に切り傷を作ってはHP回復丸薬を使っていく、効果範囲がどれくらいまで及ぶのか実験しているのだった。自分のつま先を斬ったとしても頭の上で丸薬を使えば回復出来るのを確認し、いちいち斬られた患部に丸薬を当てて使用しなくても傷口が回復することを確認するのだった。
「何してんだ? 牙君」
不意に掛かられた声に牙が後ろを向くとミチと雅の姿がある。
「あっ! 話、終わってたんですね…いや、回復薬の効果範囲を確認していただけです」
「はあ~? まあいいが…」勝手にやってろ、というような投げやりにも思えるその口調に雅が微笑する。
「え、いや、医療従事者として、不確定要素は少ないに越したことはないんで…」
「ほ~、牙君は看護師か! へ~~~~~ぇ!」と言ってミチが好奇な目で牙を見るのだ。
「まあ一応……」
会話の意味が解からないといった表情を見せる雅なのだが、聞かれたら後で説明すればいいと牙はそのまま流していく。
「あの…」と雅が口を開く。
「ん?」牙とミチが同時に反応する。
「牙さんに、服を作って差し上げたいのですが……、よろしいでしょうか?」
「それくらいなら、問題ない! 作ってやってくれ!」ミチが牙をチラッと見る。
「装備は別として、ファッションが一つの売りでもある『レジェンド』で、いつまでも初期の麻の服セットっていうのは…知り合いとしてもちと恥ずかしい気が…」
(そうなんだ……全然気にしてなかった……)
「その通りです! 牙さんは、装備に気を使っても服に関しては無頓着すぎるので、 契約精霊としては、きちんとした服装でいていただきたいのです!」
「は、はあ? 皆さんが、そうおっしゃるのなら…」と言いながらも(服なんてどうでもいいじゃんか!)と牙は思うのだが……
牙のバックの中から絹糸と黒い染料が消え、牙の体に絹糸の色そのままの詰襟のハーフコートとスラックスが着せられる。少し黒い染料で染められ灰色と言うよりは絹の光沢で銀色に近い色に染められた糸で夕顔の花と葉、ツルがコート全体にバランスよく刺繍された物だった。
「おお~~! 孫にも衣装じゃないが、似合ってるぞ!」とミチが冷やかしの言葉を吐くのだった。
「詰襟なんて、2年以上着てません…少し恥ずかしいような…」と言って照れくささをかくすのだった。
「似合ってます! 作ってよかった!」と嬉しそうに雅が微笑む姿に(雅さんが喜んでくれるならいいや)と牙は絹独特の肌触りを確かめるように生地を手で撫ぜ、肩を廻したり、刀を振るような動作をする。
「すごく軽くて動きやすい…雅さんありがとう!」
「喜んでいただけてわたくしも嬉しいです!」ニコニコな笑顔が牙の目に眩しく写る。
「ま~時間もなくなってきたし、牙君には聞く権利があると思うから、今回の件について話をしようと思う!」喜ぶ二人を微笑ましいと思いながらもミチが話しを進めていく。
「牙君も知ってのとおり、闇の精霊である『月夜闇の雅』は、とある研究機関の人工知能を使っている物なんだが、今日話しをしてみて人工知能というよりは意思を持った何か? だと俺は思った。これは俺の私見なのでどうでもいいとして、『月夜闇の雅』が行ったプレイヤー名の変更は、本人からの聞き取りをしても原因不明…としか言えない。研究機関との契約もあるから、彼女を今すぐドウコウスルッテ話にはならないが、今後二度とレジェンドのプログラムに対して改変等の行為は行わないと約束をしてくれたので、今回の事については不問と言うことにした」そこまで言い終えると二人の目を交互に覗き込むように見るミチ。
「後は本人達しだいだが? …どうするかはお互いに話し合って決めてほしい!」
一瞬雅の方を見た牙だったが、すぐにミチに向き直るのだった。
「俺は…このままで、問題ありません! 雅さんに異論が無ければ、このゲームがいつか終わりになるまで一緒にこのゲームをプレーしてもいいと思っています」
「わたしも牙さんと同じです」すかさず雅が答えた。
「そこなんだよな~~~ぁ」とミチが頭を抱え悩ましい表情をする。
(人工知能に感情の表現があるのがおかしい! ましてや軍事用だろうに? 人殺しの道具に感情が必要か?)とミチは思うのだ。
「まっ、いいさ! おいおい調べるとするさ~」
さっぱり要領のつかめない二人は、ミチの独りよがりの会話に取り残されていた。
「ご協力感謝いたします! って、消えるわけにゃ~あいかないんだった……牙君に雅ちゃんが戻ってくれないと、設定上おかしなことになる! 雅ちゃん牙君の中に戻ってくれるか?」
雅は無言のまま頷くと自身の体を黒い霧へと姿を変え牙の中へ返っていく。
ミチにより特殊フィールドが解除され牙と黒嶺はポーリング南西の転送陣へ姿を現す。闇の中から一気に通常の明るい場所へと現れた為、牙と黒嶺は眩しさに目を覆う。
目が眩しさに慣れるまで少し掛かったが、牙は美和と賢治との待ち合わせ場所である中央広場のオープンカフェへと歩みを進めるのだった。
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