第1章 10話 俺のギターを聴きやがれ~~~!
残酷な描写が含まれます。苦手な方はご遠慮下さい。
この物語はフィクションです。実在の人物、法人等は一切関係はございません。
レジェンド Online
ほのぼのと
第1章 10話 俺のギターを聴きやがれ~~~!
同日 フェニックスゲームズ本社VR開発部長室
高い山の中腹ほどにあるその社屋からは、いつもは見える市街地の光景が今日は低い位置に発生した雲によってさえぎられ真っ白な雲海の下となっていた。高い位置にも雲があるのか昼過ぎだというのに空は暗くどんよりしているのだった。
(いやな時期が始まる)とこれから始まる梅雨の気配を感じ「レジェンド」のとりあえずの成功とは裏腹に気分が優れない道上であった。
デスク上にある電話の呼び出し音が内線であることを道上に知らせた。通知が「レジェンド」の開発室である事を確認してから受話器を取る。
「はい。道上です」
「おはようございます、開発室、高橋です」
「おはよう・・・何かあったか?」
「通常の運営報告と言いたいところなんですが・・・クリアされるのがLv50以降と考えていた精霊が発見され、精霊との契約者が出てしまいました」
(そんなことか・・・多少開発のペースが速くなるだけだろう・・・)道上は判断する。
「まあ~規格外のお客様も中には居るだろうから・・・いたしかたないだろう・・・」
レジェンドに於いては「ほぼ」種族の違いによって初期ステータス及びステータスの伸びに違いが見られたとしても、全プレイヤーが存在する全てのスキルを使用することが出来る仕様となっていた。その中で特例として精霊と呼ばれる者達に選ばれた者だけが精霊のAI のサポートと精霊の従者である特別な騎乗ペット、1つの属性魔法に特化したキャラクターになる事が出来る仕様となっていた。
「それだけならいいんですが・・・その契約したお客様のキャラクターの名前が変わってるんですよ・・・システム的に途中で名前を変更することは出来ない事になってるんですが・・・」高橋の声から開発室全体が困り果てている様子が伝わってくる。
「精霊と契約したキャラクター名だけなのか?・・・他に考えられる原因は思いつかないのか?」
「考えられるのは今回の精霊のキャラクターに使ってるAI(人工知能)の仕業かなにかかと思って、現在調査中です・・・とりあえず道上さんには報告入れとこうと思いまして」
「AIか・・・」道上の頭にすぐに思い浮かぶ物はあったがあえて口にすることを止めていた。
「精霊との契約者が出現したことで、開発スケジュールの変更が出たら教えてくれないか・・・名前が変わったキャラクターの件は、とりあえずこっちのVR・技術開発の方で調査させるから一旦切り上げていい」
「えっ! いいんですか? 」高橋は驚きの声を上げる。
「VR の制御プログラムまで、そっちじゃわからんだろうし・・・思い当たる事もある・・・何でもかんでも開発まかせじゃ悪いからな・・・名前の変わったキャラクターデータだけメールで送ってくれないか」
「わかりました。ありがとうございます」
「開発のみんなによろしく!」それだけ言うと道上は受話器を置く。
レジェンドに於いては「ほぼ」種族の違いによって初期ステータス及びステータスの伸びに違いが見られたとしても、「ほぼ」全プレイヤーが存在する全てのスキルを使用することが出来る仕様となっていた。その中にも特例として精霊と呼ばれる者達に選ばれた者だけが精霊のAI のサポートと精霊の従者である特別な騎乗ペット、1つの属性魔法に特化したキャラクターになる事が出来る仕様となっていた。
道上は立ち上げられているPCのモニターに開発からのデータが早速送らて来たのを確認するとVR のヘッドセットを装着する。PCのキーボードを叩くよりもVR の中で思考操作したほうが操作速度が速いのだ。
早速届いている添付ファイルを開ける。
狼族、Lv23、プレイヤー名「牙」から「月夜闇の雅乃守牙」にキャラクター名が改変されている件というタイトルが表示さる。
「なんだ~~~~~・・・またワンコか~~~~! 」心の叫びだった・・・
次にキャラクターの所載データ及び契約した精霊の種別を確認していく。
(ん? なんで? 精霊に名前がついてる? 確か・・・闇の精霊は名前が闇の精霊のはZU・・・まあいい・・・闇の精霊を管理しているAI の種類をあたった方が早い)そう思い直す道上だった。
AI に関する管理画面からAI のデーターを呼び出す。
「闇の精霊・・闇の精霊・・と・・・・やっぱり軍のか! 」
フェニックスゲームズでは、今回のレジェンドOnlineに於いて9つのAIを採用していた。その中の6つは大学等との共同開発した物で残り3つが軍の独自開発と言われているAIであったのだ。
VR の技術自体が軍需産業から派生しており、もちろん今回のレジェンド開発にも例外なく軍との結びつがある軍需会社とも共同で仕事をしていた。そこの紹介で軍のAI のテストもかねてと言う形でそのAI は導入されていたのだった。道上も軍との契約の際に立ち会ったためその内情を知る一人である。
「渡したのは・・・精霊のキャラクター設定だけだったか? 」道上は契約の際に軍の開発者に渡した資料の中身を思い出そうとしていた。
軍のAI を採用しているといっても、AI の本体はフェニックス・ゲームズにはなく、軍のAI 端末がサーバーを通じて常時接続されて居るのみなのだ。軍事機密と言う言葉に阻まれて道上を含めゲーム会社の誰一人としてスーパーコンピュータ並みの大きさであろうAI の外装すらまともに見た者は居ないのだった。
道上は軍のAI からのアクセスログの確認作業に取り掛かるのだが、レジェンドの根幹となるシステムに何度もアクセスしたというログが発見されないのだった。プログラムに対して不正なアクセスを試みようとすればそのアクセスログが必ず残る仕組みになっているのだが、どこにもそんな記録は残されていないのだった。
(いったいどうなってる? 軍のAI って一体なんなんだ? )道上は何ともいえない憤りを感じていた。
起こっている事実に対して説明できない事象があることに対してのもどかしさが、元々研究者だった道上の探究心を刺激しているのだった。
(小さなことからこつこつと・・・あたるしか・・・ないだろう)気持ちだけは研究者に戻った道上がいた。
「まずは、ワンコと会ってからだな・・・」
(連絡が全くつかない他のプレイヤーじゃなくてよかった・・・)と思いながらレジェンドにアクセスする。フレンド登録を呼び出して 「月夜闇の雅乃守牙」にメールを送るのだった。
「帰りが遅くなる日が増えるか・・・」と独り言が道上の口をついて出る。
(世の中は10連休と言って騒ぎ立てて居るのに・・・サービス業についてしまった者の定めとはいっても・・・)道上の頭の中に二人の息子と愛妻の顔が浮かぶ。
(息子たちは焼肉にでも連れて行けば何とかなるとして・・・順子には・・・カーネーションの花束とやつの好きなワインか・・・財布が寂しくなる・・・)あきらめる道上だった。
><><><><><><
久しぶりに定時退勤となったにもかかわらず仁は院内のロビーに居た。普段であれば外来に来た患者の清算待ちでごったがえしているはずのその場所には、今年の春にここの勤務となった10人程度の同期達が集まっていた。4階まで吹き抜けとなった音のよく響くそのロビーに彼らの声だけが聞こえていた。
彼らは受付、会計、入退院手続き・・・・等書かれたカウンターの前に整然と並べられた椅子に3グループに分かれて思い思いの場所を確保していた。仁の横には美和が座りその前の椅子の背もたれにもたれ掛かる佐藤賢治が居た。賢治は痩せ型で180センチの長身でモデルに成っても成功するだろうと誰もが思う醤油顔に細めのメガネをかけたいい男である。看護学校に於いても女性からは1,2を争う人気者であった。
「で、人斬り方向音痴の仁君はどこまで来たんだい? 」メガネの右のフレームを右手の親指と人差し指で持ち上げるしぐさが妙に様になっている賢治だった。
「あ・・・そだ! 人斬りだったんだ」仁の隣の席に座る美和が席をもう一つ隣の席に移つし仁との間にいつも持ち歩いているスポーツバックを置く。
「それは、日本刀をだな~~~手に入れるために鍛冶さんって言う人と手合わせしたからで~~~」
「言い訳にしかなってないです~~人斬りさん」美和だ。
「人斬りの話はわかった、俺が知りたいのはその先の話だ」仁が人斬りの称号を受けた事を気にしているのをわかりながら、わざと人の気持ちを逆なでするように言う賢治なのだ。
「ったく・・・俺は君たちのおもちゃじゃな~~~い! 」
上気して少し顔が赤くなった仁。
「いや・・・仁君、君は僕たちの娯楽だ。・・・・・僕たちの予想にたがわぬ・・・いな、予想以上の行動で僕たちを楽しませてくれるおもちゃである、うん」
「今まで自覚していなかったとわ・・・やっと自身の存在価値をみいだせてよかったではないか・・・フハハハハハ~~~」
賢治の大笑いする声がロビーに響いて仁と美和は周りを気にするようにキョロキョロと見回す、自分たち以外の同期がいつの間にか居なくなって居ることに気づきホッとする二人だった。
(なんとも、よくわからない理論を展開するやつだ・・・賢治らしいが・・・)さっきまでの憤りを通り過ぎ、半分呆れ顔の仁である。
(・・・中身がこんなんじゃなければもっとモテルノニ・・・痛いのです・・・賢治は・・・)と思う美和だった。
><><><><><><
仁は二人に昨晩に闇の精霊と契約した時の話をするのだった。最初こそ二人の横槍が入ったが、徐々に二人の顔が真剣な顔つきに変化していった。
「という事わ~~、他の属性の妖精にも上位種である精霊がいて、その精霊と契約したプレイヤーも君と同じようにその属性の魔法しか使えなくなるって事ですね~~多分」美和が仁の話をまとめたところだった。
「多分ね・・・」と仁。
「今まで僕たちプレイヤーが探せた妖精が、火、水、土、風、雷、氷、光、音の8種、で仁が契約した闇の精霊を含めて9種の属性魔法が発見された事になる・・・仁が伝道者から聞いた話を信用するなら全ての属性が出揃ったと見ていいと思う・・・ということわ・・・後残った8つの属性の精霊たちの取り合い合戦が始まろうとしているわけだ・・・いな、もう始まっていると言っていいだろ~~! 」
賢治が芝居のせりふの様に話す姿が慣れたとはいっても、傍に居て恥ずかしいと思う二人だった。
「それでは、残りの精霊探しについての作戦会議をとりおこなお~~~でわないか」
「却下!」仁が即答する。
「わたしも却下かな~~~」
「な~~ぜだ? 諸君は、公式チートとも言える精霊たちと契約したいとは思わないのか~? カッコ仁を除くカッコ閉じ・・・って二人しか居ないか・・・フハハハハハ~~~」二人の痛い視線を感じた賢治の笑いが終息する。
「で、なぜだ? 」
「レジェンドの中で二人が何を求め目指すのかがハッキリしていない現状で使える魔法属性が限定されるのはどうなんだろうって・・・二人ともビジョンが出来て居るならいいんだけど・・・」
「そお言われると~~~・・・」賢治は上を向いて考え始める。
「私は魔法も使えるソードダンサーですよ~~~。 一番Lvが上がってる火の魔法が武器に付与できるようになったから、いろんな魔法も付与出来る様になると思のです・・・だから魔法属性は限定しないで使えた方がいいかな~~」
仁は頭の中で、美和が少し軽めの片手剣を両手に持ってプロペラのように振り回す姿を想像した。そして(この人とは、やりあいたくないな・・・)と思うのだった。
「俺は剣技にしか興味が無いし・・・精霊が外に出たがってたのと、時間を操って優位に立てるならそれでいいかって・・・だから契約したんだけど・・・賢治は? 」
「歳三さんバカですからね~~君わ~~」美和が冷やかすのだった。
「前のゲームでは前衛職やってたが・・・面白みが無いのだ~~~、だから今回は魔法をメインにパーティー全体を見るようなキャラにしようかと考えていたんだが・・・」
そうとう悩んでいるのか賢治のしょうゆ顔の眉間にしわがよっていた。
「一つの属性魔法だけでパーティー全体を見るならヒーラーみたいな位置づけのキャラになるのです~~・・・精霊と契約するなら光、地、音、限定になるでのすよ~~? 賢治はどんなキャラにしたいのですか? 」
レジェンドで魔法に対しての知識が全くというほど無い仁には出来ない話だった。
「う~ん・・・回復はもちろん状況に応じていろんな魔法でパーティー全体を見れる属性といえば・・・音なのか~~? 高校時代はバンド組んでボーカルギターやってたから・・・楽器は得意なのだが・・・」
「賢治の歌は・・・うまいけど・・・戦闘中に聞きたくないから・・・楽器限定で」(始まる前に釘を挿しておかないと・・・)と思う仁だった。
「音属性なら一つの魔法楽曲でパーティーメンバーに対しての効果と逆の効果を相手に与えられるのです! ひそかにおいしい属性だと思っているのです! 音の精霊さん探しなら付き合ってもいいと思うのです」
音属性はHPとMPの回復はもちろん、状態異常とその回復、パーティー全体の指揮を高め攻撃力の底上げや防御力の底上げ等サポート系の魔法が多い属性だった。もっとも優れているところは、状態異常を回復させる魔法楽曲以外はMPの消費がなく演奏のみで効果を得られる事だった。ネックは魔法効果と持続時間が短い事が上げられていた。
それを知った上で(効果の薄さを精霊との契約で底上げできたなら・・・おいしいかも)と美和は考えたのだった。
「よ~~~っし、決めた~~~~! 俺のギターを聴きやがれ~~~! 」
そう叫んで賢治はエアギターの演奏を始める。
(ギターが無くてホントによかったよ~~~)と思う二人。
賢治の歌うオリジナル楽曲であろう歌を聴かされるのであった・・・・
「君の瞳がそんなに濡れているのわ~きっとぼくのせいだ~~ね~~ぇ
でも僕はき~め~た~の~さ、僕の道を進む~~~と
だ~か~ら~き~みに言う~~よ・・・・さ~よなら~~~を~~~」
・・・・・身勝手な男の歌である・・・・
二人が思っていたより・・・ず~~~っと、うまい歌なのだが・・・・。
(こいつは、なぜ芸能人じゃなく看護師になったんだ・・・・)と思う仁・・・思わず美和と目が合ってしまう。
・・・その後・・・賢治ノリノリの歌は3曲MO続いたのだった。
最後までお付き合いいただき大変ありがとうございます。
また、お気に入り登録ありがとうございます。筆者の励みになっております。
感想、評価、批判等絶賛募集中です。よろしくお願いします。
誤字脱字等のご指摘、作者ページにて随時受け付けております。




