32・拘束期、再会◇
◇◇◇
ご主人と奥さんが牢にやって来た。嬉しい!
けど……私のことわかるかな? 姿だいぶ変わっちゃったけど……。
坊っちゃんは繭を見てたから受け入れてくれたけど、ご主人達は、どうだろう。
おっかなびっくり、ああでもないこうでもないとごちゃごちゃ試した布もどきに隠れつつ、二人を見た。びっくりしている。
あ、でもなんか……奥さんの方が嬉しそう? 虫っぽくなくなったからか?
坊っちゃんから話を聞いたんだろうけど、二人とも平気で牢屋内に入ってくる。
久しぶり、とか、元気かを確認される。
私の作った人形とかを見たらしく、奥さんからはやたら褒められた。えへへ、そんな風に言われると嬉しい。
私の生命線であるお土産の果物を受け取ると、これはなあに? と、ぐちゃぐちゃの布もどきを指さされる。
繭を作った時よろしく固めてしまえば楽かと試せばそれだと着心地が悪すぎて、結局籠のあみあみをイメージしてどうにかしようとし、どうにもならなかったこれ。
お洋服作りたくってぇ……ともじもじ言うと、奥さんは糸や布の仕組みをイチから懇切丁寧に教えてくれた。
機織りがどうとか、編み方が……どうの…………? 覚えていられるか怪しいが、なんとなく理解した気がしたので……次は多分できると思う!
私は奥さんに感謝を伝えた。
なんか知らんが坊っちゃんがすっごい落ち込んでると言われた。
なんでぇ? お別れしたくなくて悲しむなんて、坊っちゃんってば兄のつもりで、精神的には私の方がお姉ちゃんなんじゃないの?
これからどうなるかわからないし、坊っちゃんたちの迷惑になりたくないことと、一人で大丈夫なこと。二人に丁寧に説明する。この辺が潮時なのだ。
私はこれからどうなろうとも、ちゃんと元気にしている坊っちゃんに会えたし、充分満足だ。
二人は理解してくれたようだが、気にしなくてもいいのに……とか言ってくれる。優しい。
私はそっと、ぐちゃぐちゃになった布ごと生成した糸を渡した。
家計と私の果物代の足しにしてください……果物、そこだけはホントお願いします。
私は二人が帰った後、猛烈に布づくりに打ち込んだ。
苦節何日かかったかわからないが、なんとかよれよれのケープ……ただの四角いだけの編んで作った布だが、私はケープと呼ぶ。呼びたい……みたいなものができた。私すごい。
奥さんがはしゃいだりして、私のへちょ布を留めるためのリボンを私にくれた。これは奥さんが編んだリボンらしい。すごい綺麗。上手。
奥さんは私のちゃんとした服を作りたいらしく、私の作った糸を利用して目下制作中とのこと。なんかすごいな。
あれから坊っちゃんも時々顔を出した。また坊っちゃんかあ、彼女大丈夫? って顔で見てると、なんか不機嫌になるようになった。
家族の中でハブられたような感じがして不満なのかい。
なんか彼女と上手くいってないらしい。
何してるんだ……数カ月行方不明でも待っててくれた良い彼女なんだから、大事にした方がいいよ。
たまに漏らす私への不満が、気に食わないとか。あ~なんか駄目な気がする~~それは駄目な気がする~~~~! 私は坊っちゃんを追い返した。
いい加減家族……お姉ちゃん離れしたまえ! 私も辛いからさ!!
そう言えば、最近の坊っちゃんは私に本を与えるようになった。
ことばのべんきょうワンツースリー、だ。幼児向けのやつ。
もうちょっと言葉の勉強をしよう、と言われた。
ご主人たちに私の思いを理解してもらった後、しばらくしてからのことだった。
え? 私の言語は完璧だが? と眉を寄せる。
「熟練者に何を言ってるんだみたいな顔してもだめだ。このままじゃそのうち致命的な誤解を生みそうだから、もうちょっと頑張って言葉の使い方を覚えてくれ。」
坊っちゃんは譲らないようだったので、しぶしぶ了承した。
そこから坊っちゃんが来る日はことばのお勉強会開催である。
最近じゃだいぶ上達したらしい。たしかに前よりすらすら喋れる気はするし、坊っちゃんが変に曲解することが減ったようだ。……元々歴戦の猛者レベルだったのに。




