30・拘束期、牢屋2◇
◇◇◇
処分はいつなのだろうか。相変わらずご飯は出てくるし……読めない。
うわーん。ご主人、奥さん、坊っちゃんたちに会いたいよう。寂しいよう。
痛いのやだー。
だらだらふて寝して、幼虫時代を思い出しながらぷいぷい泣いて地面にべたっとしていた時、気付いたら外に坊っちゃんが立っていた。
嘘やだ! 私が人生終わって疲れて赤ちゃん返りして遊んでるみたいなアホ面してたの見られた!? やだ! ほんとやだ!!
ぱっと慌てて居住まいを正す。坊っちゃんは私の裸が苦手だったはずなので、自分の翅を無理にでも引っ張ってきて、なんとなく最低限でも身体の方を隠しておく。
坊っちゃんは複雑そうな表情で、思ったより元気そうだなって言った。
久しぶりの坊っちゃん、嬉しい。
坊っちゃんは中まで入って来て、両手にいっぱい持ってた果物を私にくれた。私の好物がいっぱいだ。
ありがとうありがとう!! さすがは坊っちゃんっすね! 抜かりねえっす!
三下の気持ちになりながらぼっちゃんに抱きつき甘えた。坊っちゃんはちょっと照れたようで、遠慮がちに撫で返してきた。この反応、幼体じゃ見れなかったやつだよな……かわいいなあ、坊っちゃん。
幼体だとなんならもうまたかよレベルの雑対応の時あったし。いや今でもやりすぎたらそうなる可能性は全然あるので気をつけよう。
坊っちゃんは、かわいこぶりつつ果物にむしゃつく私の横で、最近の状況と現状を話してくれた。
坊っちゃん含めたご主人たちの一家は大丈夫らしい。良かった。ずっと気になってたんだ坊っちゃん拘束されてる状態の時に意識途切れちゃったし、誰も答えてくれないしでさあ。
私は……上の方の人? の返事待ちだとかなんとか。
誰上の方の人って。王様とかってこと?
っていうか、処分はとんだ嘘っぱちだったらしい。ひ、ひどい!
肉も粗悪な食事も、一連のことは私を試すためのものだったとのこと。
私は陽気な人に対して不信感を持った。良い人だと思ってたのに!
今後は坊っちゃんたちは、私のお世話にここに来ることが許可された。わー嬉しい!
しかしちらつく彼女の言葉。やっぱり遠慮しといた方がいいのかもしれない……。
「えーとぉ、あのぉ……もーす、来る、いらなぁい、いいよぉ。
くだものぉ、ある。だけ。」
坊っちゃんはショックを受けた。その顔初めて見るかも。
急に妹が兄離れしたらそんな顔になるのかあ。
「ぁあれ、良い、良い!」
陽気な人は置いといて、あそこに今立ってる門番さんとかは普通に良い人なんだよ。指を指して示す。
だから寂しくないよ。このギルド予算無いらしいから果物だけは持ってきてほしいけど……。
坊っちゃんは眉をしかめた。その表情も見たこと無いかも。
「あ、ごはん、予算……お金!」
ごはん代要るよね。今あの家私が居ないから、糸売れなくて大変なんじゃない?
私はいそいそとこれまでに出していた糸たちを集めて渡した。
当初はお絵かきに使っていた糸たち。そのうち羊毛フェルトみたいにして立体物として形成させ始め、色んなふわふわマスコットとかを作ったり牢内に飾ったり、なんなら上からモビールよろしく吊るしてみていたのだ。それも全部渡してしまう。
坊っちゃんは呆気にとられた表情で、ぼやっとしたまま帰って行った。
羊毛フェルトは生前流行ってた頃に私も手を出してみたことがあるので、作り方はなんとなく覚えていた。最初に羊毛をイメージした糸……糸というか、繊維? を生成。ここが一番難しかった。それとは別に、今度は自分の糸を限界まで固くして針みたいに尖らせたものを作って、ぷすぷすぷすぷす。
あんまり上手とは言えないが、自分なりにかわいく成形したつもり。
思えば、今後坊っちゃんがまた来ることがあるならこの糸で自分の服でも作ればいいのか。糸を服にってどうやってするの? 知らない。編み込めばいいのか? 編むってどうやってするの? 何も知らない。おしまい。
再び暇になった私は、むしゃむしゃごろつきながら糸を繰り出して試行錯誤することにした。どうせ暇は腐るほどある。
要はあみあみの籠みたいに、交互に糸を重ねていけばいいんだろう……多分。
糸でお絵かきすら自在な私だ。そのくらい容易なはずだ。
とりあえず命の心配がなくなって、お腹いっぱい満たされた私には余裕ができた。
見張りの人も興味深そうに覗き込んだりしてくる。




