27・拘束◇
「……ッ モース、お前……、このモンスターは、なんだ。
人…………じゃ、ないよな。なんだこれ、こんなのは初めて見たぞ。」
ガーメインは顔をしかめて手で口を覆った。
人型モンスターってあんまり居ない感じ?
「お前……人を、食わせたんじゃないだろうな。」
とんでもない疑惑が持ち上がっている。そんなわけあるか! お兄ちゃんは知らないけど、私は草食だぞ! なによりも、ご主人たちがそんなひどいことするわけないだろうが! シャープな男じゃないんだから!
「そんなことあるわけがない! こいつは肉は食わないんだ……昔からそうだった。
父さんたちに聞けばわかる。」
「しっかり縛って連れて行け!
お前たち家族には詳しく話を聞いた方が良いようだ。」
「……っ!
サヴェルノに聞けば同じ事を言うはずだ。昔あの人から、こいつのことで無理難題をふっかけられたことがある。」
ああああ……私が人型してたことで、坊っちゃんの立場がどんどん悪くなっていく。
みんな坊っちゃんの話聞いたげてよお! 彼女さんもなんか言ったげて! まじで!
急速に、怒りが沸き起こるのを感じた。坊っちゃんは私を守ってここに居ただけなのに、今や罪人のように扱われている。
明らかな殺意の産声を自覚する。いけない。
怒りに身を任せてしまいたい。助けなくちゃ。手を出しちゃ駄目。
感情を、抑えられない。発散しないと、耐えられない!
みんな消してしまえばいい。駄目だよ。違う方法で、モースやご主人たちが今後も、普通に暮らせるようにしなきゃ駄目だ……。
足元にナイフが、落ちている。
ぼっちゃんがここにいる間、使わないのにずっと腰につけていた小さなナイフだ。さっきのごたごたで落ちたらしい。
ガーメインもそれに気付き、警戒の色を見せる。
坊っちゃんは無理にでも小屋から出されようとするのに抵抗しつつ、私を見て、ざっと青ざめた顔で、叫んだ。
その顔が、視界が、揺らぐ。目から涙が止まらない。
止まらない激情が、糸ではなく、涙として溢れている。
「やめろ!!
そのナイフには毒が! ガーメイン、止めろ! そいつを止めてくれ!」
坊っちゃんは、私がナイフで誰かを傷付けるなんてことは全く想定していない。その声は、私が馬鹿なことをしないか心配している声だ。信用されているのだなあと、大変嬉しい。
でもそれ、他の人に通じてるかは怪しい……ガーメインは私がナイフを使って周りを傷つけないか警戒して、下手に動けばその前に攻撃してきそうだし。別に私は自分にナイフを使う気も無いよ。この状態をどうにかできるような知恵を持たない私は賢くはないかもしれないけど、とっても良いモンスターなので!
なるべく体を低く小さく保ったまま、ナイフを両手のひらに乗せて、ガーメインに向かって差し出す。
「もー……す、悪、違ぁう。の、助け、る。
がーめいん、もーす、お願い。」
口を開けば決壊して、所構わず叫びだしそうなのを耐えまくって、最低限必要な事だけは言った。
「ふ……ぅっ」
「ぅ…………うわあああああああん!!」
堪えきれない殺意を、怒りを、悲しみを増幅させて押しつぶしていく。
感情を爆発させる、まるで大人とは思えない姿。子供みたいに泣きじゃくって、坊っちゃんはじめたくさんの人前で、みっともなくも感情を発散していく。
恥ずかしいぐらいなんだ。人を傷付けるよりはいい……これで良いんだ。
私はそのまま泣きつかれて、寝た。




