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26/36

26・突入◇

   ◇◇◇


翌朝、気配を感じた。

たくさんの人が気配を殺し、慎重に土を、草を踏む音。


坊っちゃんを起こす。

坊っちゃんはしまったという顔をした。今から逃げるには、もう遅そうだ。


こうなったら、せめて坊ちゃんは守らなければ……。

モースを腕で庇うようにする。

ええっと、どうしたら良いんだろう。庇ったほうが良いのか、逆に私が坊っちゃんを連れて行ったことにでもするのはどう? 被害者として人の世界に帰れるかな?

そうだ、私への攻撃に坊ちゃんが巻き込まれるのも困る。早めに突き放したほうが……?


「今ろくなこと考えてないだろう。お前は変なこと考えなくていいから。余計変なことになりそうな気がする。」


釘を差された気がする。私は坊っちゃんから、どこまで信用が無いのだろうか?

なぜだ。そんなに変な行動はしてなかっただろう今まで……。

しょもしょもいじけていると、坊っちゃんが手を握って、不安そうな、安心させたいような、困ったような……複雑な笑顔を向けてきた。かわいい。


一息に、複数の人が隠れ家ハウスに踏み込んできた。


私は恐怖でどうしても震えてしまう。

坊っちゃんが、力付けるように肩をぐっと抱き込んできた。


「モース! こんな場所に潜んで居たのか!!

 ギルドとの約束を破り危険な生物を匿うとは、何という愚行をしたんだ!」


坊っちゃんの影からこっそり、先頭で喋る人を観察する。

精悍そうだけど、ちょっと偉そう。上司なのかな?


「……ギルドは、こいつを問答無用で処分するつもりだっただろう?」

「それは……知っていたのか。

 そいつが問題の繭の、中身だな? ……でかいな。」

「ガーメイン、聞いてくれ。こいつと俺は昔からずっと一緒にいる家族で、大切なんだ。こうして無事に羽化したし、俺も無事だ。

 人を襲うような力もないし……殺す必要はない。」

「よくもこんな所で……、ずっと居たのか? 何ヶ月も。

 お前がなんと言おうとも、今そのモンスターを野放しにしておくことはできないぞ。翔び立たれでもしたらどうする? どう責任を取るつもりだ。」


坊っちゃんが全身で、坊っちゃんよりも大きくなった私を庇い、必死になって他の人を説得しようとしてくれている。彼の家族愛は、とても強かったのだ。


「待ってくれ、頼む。こいつは飛べない。」

「観念しろ。被害が出る前にお前らを見つけられて良かった。

 おい、捕まえろ。」

指示を受けた後ろの何人かが、坊っちゃんを拘束するために動いた。

無理矢理にでも私から引き剥がすようだ。

向こうは武装しているし、坊っちゃんはそもそも彼らと戦う気は無い。私も下手に動いたら坊っちゃんが危なそうだし、何もできずに震えるばかりである。


「モース!」


さらに後ろから、坊っちゃんの彼女が坊っちゃんに話しかけていた。そういえば彼女は冒険者ギルドの人だったか。

坊っちゃんの力が緩まる。ちょっと嫉妬する。いや執着を捨てろ! 坊っちゃんはあの子の彼氏で、あの子は坊っちゃんの彼女だ。


坊っちゃんは敢え無く引き剥がされ、拘束された。まるで罪人だ。ひどい。

私は最大限翅を広げ防御姿勢を取りながら、丸まっている。いやちょっと待て、この翅は私の弱点じゃなかったか? 防御姿勢が弱点全開なのはどうなんだ? バグってないかこの体。


他の人は警戒しながら、距離を取って、武器を私に向けている。すぐに攻撃してくるわけではないらしい。対話……できるかな?

でも、私は悪いものじゃないよ~、なんて急に喋るモンスターに出会っても、警戒しないでいられるのだろうかという不安もある。逆に怪しくならない?

喋っていいタイミングを図りつつ、無言のままで様子をうかがってしまう。


わからない。坊ちゃんが行ってしまう。

私は諦めてハンズアップしつつ翅を収め、ガーメインという男に顔を向けた。

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