16・坊ちゃんの彼女◇
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坊ちゃんに、彼女ができた。
体は大きく伸び、体格もしっかりしてきた坊ちゃんは、もう立派な大人だ。
お父さんよりずっとがっしりしたガタイで、眼鏡の美丈夫。そりゃあ彼女の一人もできるだろう。
むしろ今までよくいなかったなと思うぐらい、坊ちゃんは良い感じだ。働き者だし、辛抱強くて、お父さん譲りで優しい。私の面倒をよくみてくれる。
それから、当然のように私は坊ちゃんと触れ合う機会が減った。
そりゃ彼女優先するよ。付き合いたてなんて一番大事な時期だろう。
ちょっと寂しいが、仕方がない。私はただのペットで、彼女はそのままゴールインするかどうかなんてのまではわからないが、坊ちゃんの将来的にも大事な相手だ。
わかっているが、気持ちがくさくさすることが止められなかった。
むしゃくしゃする気持ちは糸で発散する。
……これは、昔の坊ちゃんと同じだ。仲良くしてた人が他に時間を使いだして、嫉妬している。
もうちょっと遊んでくれてもいいじゃんとか、最近彼女の話ばっかりでつまんないよとか、私も我儘になったような気がするものだ。
私がもはや完璧に坊ちゃんの言葉を理解できるまでになっているのも、良くない。
他人ののろけ話とか……楽しくないんだもん。
坊ちゃんと遊びたいけど、大好きだけど、一緒にいたくない、みたいな気持ちが増えてきた。
反抗期かもしれない。
坊ちゃんもちょっと前まで反抗期で大好きな親に反発してたこともあるし、私もいい加減幼体が長いから、そろそろ反抗期が来てもおかしくはない。体が成体になる準備をしているのかも。
イマイチぎくしゃくと、坊ちゃんと上手く付き合えなくなっていたある日、坊ちゃんが彼女を紹介したいと言い出した。
坊ちゃんが褒めまくる、噂の彼女だ。
私は身をこわばらせた。奥さんは私を苦手だし、この世界ではどうかわからないが……虫型のモンスターが苦手だったりはしないだろうか。
坊ちゃんが私のせいで振られるなんてことはあってはいけない。その辺大丈夫か坊ちゃん!?
坊ちゃんが言うには、詳細を聞いた上で会うことを決めたというから、大丈夫なのかも。すごいな彼女。
当日、坊ちゃんの彼女が家にやって来た。
輝くような明るい笑顔、振る舞いは可憐で、坊ちゃんが褒めまくるのも頷ける。
私に対しても平気でニコニコと触れ合い、優しく扱ってくれる。
……完璧じゃないか。
坊ちゃんに似合いの、完璧な、人間の女の子だ。
世界が憎い。
夜、私は反抗期的悪感情で心が支配されていた。
息が荒くなる。この世の全てを呪いたくなる気持ちを、息とともに必死で体の外に発散させながら、耐える。
私は一体どうしてしまった? 反抗期ってこんなに辛く苦しいものだったのか。
苦しいまま、悶え、所構わず糸を吐き出した。
感情をぶつけるように、本能のまま糸を吐き続けて、どのぐらい経ったのかはわからない。糸まみれの視界で、微かな朝日を、糸の向こうに感じた気がした。
やわらかな糸に包まれた私は、そのままゆっくりと、深く眠ってしまった。




