15・成長◆(数年後、現状まとめ)
ギルドでは基本的に採取、時に討伐の依頼をこなしながら、変わらずモンスターの勉強はしている。しかし、まんじゅうのことは特にわからないままだった。
似たようなモンスターの記録も無いことはなかったが、大抵が人も襲うような肉食の固体ばかりだったのだ。まんじゅうのようなやつはいない。
珍しくギルドの中での仕事をしていたら、かつて父の採取を手伝っていた女冒険者に会った。
あのモンスターはどうしてる? と聞かれ、相変わらずですよと答える。
それは良かったと返されて、そのまま彼女はギルドの奥へ。
俺はギルドから出ようとして、忘れ物をしたことに気付いた。急いで戻って探していると、奥の部屋でこのギルドの長であるガーメインと、先程会った冒険者が会話しているのが聞こえてしまった。
近年起こった、遠い国での災厄。
巨大な蛾のような姿をした化物が大暴れし、一国が滅んだらしい。この近くにも昔、大きな蛾の化物が存在していたことがあるため、近隣で虫のような姿をしたモンスターを見掛けた場合は最大限警戒をする、と。
蛾のようなモンスター……まんじゅうも警戒対象に入る気がする。
気になって、気配を殺し、そのままそっと会話を盗み聞く。
話は近郊の対象モンスターについてになり、俺の家の話にもなった。
幼体を飼育している家庭がある、と。
ガーメインは言った。
繭を引き取る手筈になっているなら丁度良い。そのまま処分したほうが良い、と。
俺は衝撃を受けた。
冒険者になるのも良いと思って所属していたギルドが、黙ってそんなことをしようとしているとは。
何も言わず、聞いたことにもできず、黙って何事もなかったかのように家へ帰る。
今の話を聞いていましたとは、とても言えない。
まんじゅうと出会ってから、十年以上が経過していた。
昔よりは丸く、大きくなっていたまんじゅうだったが、今も繭になる気配はない。
糸を生み出すことだけはめきめきと上達しているが、こいつは一生このままなのかもしれない。
家に帰って、今日も変わらないまんじゅうを見てほっとする。
果物はないのかと催促し、ないとわかると早く水槽に戻せと大きな体には不似合いの、小さな手で一生懸命掴もうとしてくるまんじゅうを、ゆっくりと撫でる。
成長しないのもそれはそれで心配になるが、もしかしたら、昔父さんを悲しませたくない思いで俺が変わらないでくれと頼んだことを、素直に聞いてくれているのかもしれない。
まんじゅうは素直だから、その可能性だってある。
このまま、変わらずにいてくれれば……と、勝手な事を願ってしまう。
まんじゅうと大違いの俺は、背も伸びたし、体もしっかり作っている。
眼鏡が手放せないのが困るところだが、女の子からの評判は、まあ……悪くないから。
俺も年頃らしく、だんだんと女の子を意識するようになっていた。




