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13・数年後、反抗期◇

   ◇◇◇


ここに来てから何年が経ったのだろう?

この体になってから、なんとなく面倒くさくてまともに月日を数えていない。生まれてからはよく意識を飛ばしていたし。

出会った頃より、坊っちゃんは大きくなった。

最初はまだまだおちびさんといった体だったのに、すくすくと成長し、今は若干反抗期特有の空気を漂わせて思春期している。

反抗期っぽくはあるものの、私に対しての態度は昔より随分和らいで、逆にお兄さんぶってきている感じがする。二人はすっかり仲良し! 知らんけど!


私は相変わらず、のんびり糸を作る毎日。

坊っちゃんほどではないが、体もちゃんとじっくり育って大きくなってきている……と思う。最近は水槽がちょっぴり狭くなってきた感じがする。


そろそろ……坊っちゃんに合わせて私も成虫……とは言いたくないので、成体になる時がやってくるのではないか?

もう随分安定して、今や自由自在に糸を吐けるようになっているのだし、繭になるのを試してみてもいい……いいが、私にできるのかが、まだちょっと不安だ。変態したら糸を吐けなくなるかもしれないし。

先に翔び立った兄は、どう見ても糸を吐くような見た目をしていなかった。


そうなると私が生かされるのか疑問がある。この家の家族とまで認識されていれば、まだ生きられる可能性はあるが、現状そうなっているかの判断がつかない。この家族が、用済みになったらポイ……なんてことはしないと思うけど、兄のように危険思想を持つかもと処分されてしまう可能性は、まだあるような。


人間と共存するならまず意思疎通から!

と言わんばかりに、私は貪欲に言語の習得に努めている。

当初は遅々として進まなかった理解が、最近は、ちょっとわかるようになってきた気がする。

これは睡眠を邪魔したあの夜から坊っちゃんが、私に語りかけるクセがついたおかげだと思う。私も毎度しっかり傾聴の姿勢をアピールしたおかげかな!

当初は幼児に話しかけるような雰囲気だったのが、最近は親への文句だったりしている。ザ反抗期ィ~。


あれから坊っちゃんは、私を連れてよくお庭の散歩をするようにもなった。

昼に運動させとけば夜寝るだろという気持ちなのだろうか。もしかしたら、ぷくぷくとまんまるぷりぷり健康な私の魅惑のもちもちボディが段々重くなってきて面倒くさいという理由かもしれない。

散歩中、疲れすぎたら遠慮なく坊っちゃんに抱っこしてくれとせがみに行くし、駄々こねれば最終的には仕方ないなあで持ってくれるので、坊っちゃんは甘い。


「お前はいいよな。いつものんびりしてて。」


おっと坊っちゃんの語りが私への文句になったぞ?

とろいみたいな事を言われているようだ。失敬な! こうして散歩してるおかげで、最近じゃ生まれて一番俊敏ですよ!

ぷうぷう音を出して抗議する。人の言葉はまだ喋れないが、何種類かの音は出せる。食べれる、糸出せる、音出せる、人は咬まない。なんて優秀なモンスター!


「ああ、ああ、悪かったよ。お前も一生懸命働いてるもんな。毎日食っちゃ寝して、糸出して、夜はお構いなしにしょっちゅう部屋に侵入してくんだから。

お前はしょうがないやつだよ。」


ヨシヨシされながら、しかし不満は受け流されたように感じる。

まあいいけどさ、私の好きなおやつくれるから。なんだかんだ愛されてはいるのかもしれない。


「……お前さ、前に繭作ろうとしたことあるだろ?」


ん? 


「変わらないでくれよな。このままずっと。」


坊っちゃんが珍しく、神妙な顔して私に何かを言い聞かせるように喋っている。

変化? 私のことか? 私変化し始めてる? 繭になる日も近かったりする? そう見える? ちょっと期待しちゃうな。

基本的に安定と平穏を望む私だが、格好良い姿にも、なれるものならなりたいのだ。


私はぼっちゃんの喋ってることが、まだ断片しか理解できていなかった。

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