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傾国の少女と嫌われた少年  作者: 末乃
第一章 『傾国の少女』
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曲がり角大作戦! ~食パンを咥えて~

 その後も、定期的にファミレスで作戦会議は行われた。肝心の作戦の立案はグダグダで、ほとんど雑談しかしていなかったような気もするが、三人は出来ることを全てやった。きっと、胸を張ってそう言えるだろう。

 四月七日 火曜日

 その日は、絢瀬(あやせ)が待ちわびた翔麗しょうれい高校の入学式である。

 バラ色の高校生活が、今まさに幕を開けようとしていた。

「ふうー、はあっ」

 肺の呼吸をありったけ吐き出して、呼吸を整えリラックスをする。現在時刻午前七時丁度、絢瀬は既に家を出て通学路を歩いていた。見てみると、まだ少しサイズが大きい黒の学ランを身にまとっている。既にこの道は華火や平良と下見済み、あとは皆で決めた作戦を絢瀬がミスなく実行するのみである。

 重圧が絢瀬にのしかかる。

(いける、大丈夫、大丈夫だ。何度も二人と予行演習もしたし、イメージトレーニングもバッチリ、いける、いけるぞ僕!)

 三人が決めた初対面の演出プランはシンプルつ古典的なものである。

『高校』、『入学式』、『出会い』、『通学路』、こんなフレーズを聞いて、多くの人はどのような出会いを想像するだろうか。そう、決まっている。食パンを咥えて曲がり角でボカーンの伝統スタイルである。

 いつからか少女漫画で定番化したこのスタイルは、少年漫画やアニメ、映画、と日本の初対面を象徴するスタイルへと独自に発展を遂げている。

 これが発展した理由は至って単純、その出会いにみなが憧れたからである。確立されたからには確立された理由が存在する。つまり、一定以上の有用性が確かにあるのだ。

 後は、その状況を作り上げることが出来るかだ。

(ふっふっふ、作戦はこうだ。まず僕らの地域から翔麗高校に行くには、絶対にとある視界不良の曲がり角を曲がらなくてはならない。食パンをするならここ! 狙うならここしかありえない! ……平良(たいら)の受け売りだけど、少なくともここで僕が待ち構えていれば彼女は絶対に来るはずだ! ──ただ、彼女が食パンを咥えているか分からない以上、少なくとも僕は絶対に食パンを咥えていなければならない。彼女が来るのをずっと咥えて待っているのは苦しい。だが問題ない! この食パンには、華火(はなび)自家製の美味しい苺ジャムが塗ってある。もはや死角はない。死角ある角の作戦に死角なし! 二人の力を借りて、必ず決めてみせる!)

 食パンを咥えウキウキで曲がり角にたどり着いた絢瀬。

 この曲がり角を曲がれば、いよいよ待ち伏せポイントだ。

「ぃよーし!」

 そうして、絢瀬が曲がり角を曲がった先には、

 食パンを咥えた恋敵ライバルという名の同志たちが、馬鹿みたいな人数で待ち構えていた。

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