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傾国の少女と嫌われた少年  作者: 末乃
第三章 『扇谷会』
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叫び

(あ、つい…………? い、や………、これは……つめ、たい………、の、か……?)

 絢瀬世奈には、まだ息があった。そして、今にも消え入りそうな意識が、かろうじて絢瀬には残っていた。その身体は灼熱に侵されていて、神経すらまともに作用していない。痛みも温度も適切に知覚出来ず、自分が立っているのか寝転んでいるのかも分からない状況だ。

 地面に伏しているその身体は、爆発の熱によって溶かされ、手榴弾の破片によって削り取られ、肌の一部を失い、その中身が露出している。もはや絢瀬それは人ではなく、血に濡れた肉塊と表現をした方が適切かもしれない。身体の至る所に穴があり、特に手榴弾に向けられていた背中側は、反対側まで透けて見えてしまいそうに思える。

 華火は一体どうなったのか。絢瀬が必死に耳を澄ましても、何も聞こえない。目を開いても、何も見えない。いや、そもそも目を開くことも出来ていないのかもしれない。真っ暗な空間で、徐々に意識だけが失われていく。そして、意識が完全に消滅しようとする。

 ───しかし、そのとき誰かの声が聞こえた。

 まともに働かない思考でも分かる。それは、絢瀬にとって重大な意味を持つ誰かの声だ。

 でもここには、華火や案内人ナビゲーター、巻き込んでしまった女の子、扇谷天征くらいしかいなかったはずだ。だが、声はそのどれとも違う。何故だか、機能を失ったはずの絢瀬の耳にクリアに流れてくる。

 声、より正確には叫び。

 絢瀬は、その声の持ち主を誰か理解した。だから、もう動かないはずのその目は、絢瀬の意思に関係なく開かれた。


 そして、絢瀬は()()()()


 絢瀬が死んでも隣に立ちたかったはずの少女、一宮玲佳がそこには立っていて、

 絢瀬は、一宮玲佳が血塗ちまみれの自分を見て、『崩壊』するところを目撃した。


 そのまま、絶望の底の底で、絢瀬世奈の思考は完全に活動を停止した。

 少年は、少女を取り巻く世界に敗北した。

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