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傾国の少女と嫌われた少年  作者: 末乃
第三章 『扇谷会』
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裏の世界

 翔麗しょうれい高校の向かいの敷地、そこには背の高いビルがいくつも立ち並んでいる。そのビルの一角、FIX窓に覆われた高層階の一室に、扇谷おうぎやてんせいは立っていた。その部屋には何も物が置かれておらず、どことなく無機質で、まるで窓から街の景色を眺めるためだけに設けられたスペースのようだ。

 長めの黒い前髪を中央で分けているその男は、黒地に金色が散りばめられたシャツの上に黒いスーツを纏っている。手には、オペラグラスのようにが付いた双眼鏡が握られている。

「……、」

 視線の先は、翔麗高校の屋上。そこに立っている少年である。

「───てんせいさん‼」

 すると扇谷おうぎやの後ろから、彼を呼ぶ声があった。

「……うっさいのう、もっと静かに呼べんのかい」

 呆れながら扇谷が振り返ると、彼と同じようなシャツに黒いスーツの男が、丁度汗をかきながら走ってやって来たところだった。

「それで……、分かったんか? あの高校生の素性は」

 あの高校生、とは、扇谷が今現在双眼鏡で監視していた少年のことだ。

「は、はい。少年の名前は、絢瀬あやせ世奈せな、現在十五歳。三丁目の住宅街の一軒家で一人暮らし中、両親は海外に滞在。先週の入学式で翔麗高校に入学。そして一年四組に在籍、とのことで……」

「あほ、そっちじゃないわ。あの例の傾国の少女おんなのこと、どう関わりがあるのかって聞いとんじゃ」

 扇谷は部下と思わしき男の胸をど突きながら言う。

「……っ、失礼しました! 絢瀬世奈が例の少女と直接関わりを持ったのはつい先週の火曜日、入学式の朝のことです。そこで一度会話があったようなのですが、基本的にはそれきりで仲良く会話をする、といった関係性ではないようです」

「その会話内容は?」

「ローションを用いた部活動に関するもの、と報告されています」

(……?)

「ほう、まあええわ。……それ以外には、二人の会話はあったんか?」

「その放課後、絢瀬世奈と例の案内人ナビゲーターでの戦闘があり、それをあの少女がおさめています」

「なに……?」

 案内人ナビゲーター、扇谷も知るその名前が出たことで、かすかに扇谷からは驚きが伺える。

「あの案内人ナビゲーターが出てきたんか?」

「はい。そこでの会話内容は明らかになっていませんが、少年に対して案内人ナビゲーターサイドからの接触があったと」

(……案内人からの接触、それもただの高校生に?)

「いや、重要なのはそっちじゃないな。あの傾国の少女がそれを止めたって方か」

 しばし、扇谷は考えて、

「今の屋上でのやり取りもそうやけど、その話が本当なら。──ハッ、使えんで。あの高校生」

 ニヤリと、たくらむような笑みを浮かべて、

案内人ナビゲーターを除けば、あの傾国の少女が唯一反応を示す男か。……おい、アイツのこと隅から隅まで調べ上げろ。その交友関係も含めて全部じゃ」

「はい、了解しました!」

「少なくとも明日、朝までには調べ上げろよ。せっかくの機会チャンスを、他の連中に持っていかれちゃかなわんからな」

 扇谷天征、彼は、絢瀬あやせがまだ知らない裏の世界の住人である。

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