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「——下がってろ」
カイが、仲間たちの前に立ち塞がった。
彼が抜いた『虚空』が、灰色の空の下で静かに黒い光を放つ。
怪物が鎌のような前脚を振り下ろす。
それは、魔法でも属性でもない、純粋な「暴力」としての質量攻撃。
だが、カイはそれを見切っていた。
(無色一刀流——『断』)
抜刀。
火花さえ散らない。
カイの剣が怪物の脚を通り抜けた瞬間、鉱石の体はバターのように滑らかに切り裂かれた。
「ギ、ギィィ……!?」
「……属性に頼りすぎたな。……ここでは、研ぎ澄まされた『個』の力だけが意味を持つ」
カイは一歩踏み込み、怪物の中心核を正確に突いた。
衝撃が内側から拡散し、怪物は悲鳴を上げる暇もなく、ただの砂となって崩れ落ちた。
「……カイさん、一人だけ動きが全然変わってない。……むしろ、こっちに来てからの方が『鋭い』くらいだわ」
フェリスが戦慄を覚えるほど、カイの動きはこの無色の世界に馴染んでいた。




