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「……次は、私の番よ!」
フェリスが風を纏った矢を放ち、ノアが盾でセレナの反撃を完全に遮断する。
三人の連携によって作られた、わずか一瞬の「道」。
カイがその道を、音もなく滑るように進む。
水面の上を、まるで平地であるかのように歩くその歩法に、セレナは戦慄した。
「来なさい、野蛮な剣士! 水の中で息絶えよ! 『大渦巻』!」
カイの足元が巨大な渦となり、彼を飲み込もうとする。
だが、カイは剣を抜かない。ただ、鞘に収まったままの『虚空』を、渦の中心へと突き立てた。
(無色一刀流——『凪』)
ドォォォォン……!
激しく荒れ狂っていた水上庭園の水面が、一瞬にして鏡のような平穏を取り戻した。
カイが放った「無色の振動」が、渦を構成していた魔力の回転を、物理的に相殺したのだ。
「……魔法は、現象だ。現象には必ず、それを支える『理』がある。お前の水は、ただの魔力の浪費に過ぎない」
カイが初めて、セレナの目の前で剣を抜いた。
漆黒の刀身が、月明かりを吸い込んで妖しく光る。
「……終わりだ」
(無色一刀流——『水月』)
横一閃。
斬られたのは、セレナではない。
セレナと、彼女が支配していた「水のマナ」との**『繋がり』**そのものが斬り裂かれた。
「あ、ああ……力が、抜けていく……。私の水が、言うことを聞かない……!?」
セレナの身体から魔力が霧散し、彼女は支えを失った操り人形のように水面へと崩れ落ちた。




