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嫉妬なんか、してねぇ

 食堂を出ると、昼の光が石畳を照らし、影がくっきり伸びていた。

 風は穏やかで、さっきまでの喧騒が嘘のように静かだ。


 アレンは俺の隣を歩きながら、やけに楽しそうに口元を緩めていた。

 その視線が、時々わざとらしく俺の横顔をなぞってくる。


 (……なんだよ。絶対なんか企んでる)


 髪に触れられた感触がまだ残っていて、胸の奥が落ち着かない。


 「殿下、さっきの……怒ってませんよね?」

 「怒ってねぇよ」

 「へぇ。じゃあ、その顔は何です?」


 アレンは挑発するように笑う。

 その目は完全に俺の反応を楽しんでいた。


 「別に普通だろ」

 「普通の顔で、あんなに僕のこと見ます?」


 「見てねぇ!」

 「ふふ、否定が早い」


 アレンはわざと俺の前に回り込み、歩く道を塞ぐ。

 昼の光の中で、わざとらしく首を傾げる。


 「殿下って、ほんとわかりやすいですよね」

 「何がだよ」

 「僕に触られたの、まだ気にしてるところ」


 「……っ!」


 アレンは俺の手元へ視線を落とし、わざとらしく近づいてくる。


 「……何がしたいんだよ」

 「殿下が僕を見てた理由、知りたいんですよ」


 アレンは一歩近づき、声を落とした。


 「殿下って、僕が他の人に囲まれてると……面白くなさそうな顔しますよね」

 「してねぇ!」

 「ふふ、また否定が早い」


 アレンは俺の手の甲に指先をかすめた。

 その一瞬だけで、心臓が跳ねる。


 「……殿下」

 「……なんだよ」

 「こういうの、嫌いじゃないですよね?」


 そう言って、アレンは俺の手をそっと掴んだ。

 逃げる前に、指先を絡めてくる。


 「おい……っ」


 指が絡まった瞬間、胸が一気に熱くなる。

 手のひらがじんわり熱くなり、心臓の鼓動が耳の奥でうるさく響く。


 (……なんだこれ……落ち着けねぇ……!)


 アレンはその反応を見逃さず、挑発的に笑った。


 「殿下、顔赤いですよ」

 「赤くねぇ!」

 「ふふ、可愛い」


 アレンはわざと指を絡め直し、俺の手をきゅっと握る。

 そのたびに胸が跳ねて、呼吸が浅くなる。


 「殿下、歩幅合わせてくださいね。僕、こういうの好きなんで」

 「……勝手にしろ」


 そう言いながらも、手を振り払う気にはなれなかった。

 アレンはそれを完全に見抜いている。

 

 (……俺はどうしたいんだよ。男同士なのに……こんなの、おかしいだろ……俺は……百合展開を目指してんのに……)


 「殿下って、ほんと扱いやすい」

 「扱いやすくねぇ!」


 そんなやり取りをしながら歩いていたときだった。


 アレンが急に俺の腕を引いた。

 ぐいっと引き寄せられ、細い路地の影へ押し込まれる。


 「しっ……静かに」


 耳元で低く囁かれ、思わず息が止まる。


 「な、なんだよ……」

 「ほら、あそこ」


 アレンは俺の肩に手を置いたまま、路地の先を指さす。


 その指先の向こう──


 ノエルとフランソワの姿があった。

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