二人を結ぶ呪い2
「ここの景色、本当に綺麗だね」
「お前、こういうの好きだよな」
ディオンと並んで桜を眺めていると、ふと、さっき見た平行世界へ消えて行ったもう1人のディオンを思い出した。
「……そういえばディオン」
「ん?」
「前から気になってたんだけど、どうしてあの赤い石を使って平行世界を超えるって知ってたの?」
と聞くと、ディオンの目がこちらに向く。
「私を助けに来てくれた瞬間、あの石を壊してたじゃない?」
「あー……」
ディオンは後頭部に手を回しながら答えた。
「別に知ってたわけじゃない」
「え?」
「見た瞬間、移動系の魔法陣に使う物っぽい気がして、念のため壊しただけだ。あいつ、元々ちょこまかと逃げる奴だったし」
「そうなんだ……」
さすが……
「まぁ、でもまさか、あれが平行世界を超えるような大層な装置だとは思わなかったけどな」
マジでそんな事出来るんだな、と続けた。
ディオンの言葉を聞きながら、私はさっき見た平行世界の空間が開かれた瞬間を思い出した。
それだけで、全身に鳥肌が立った。
あの瞬間、膨大な魔力が辺りに一気に解き放たれて、空間が捻じ曲がるようだった。
アレは、ただの人間が踏み込んではいけない領域のように感じた。
まるで……
神の領域に触れたかのような、言葉にできない感覚だった。
彼は、あんなものを何度も……
「私も、思った……」
「私も、じゃねぇよ!」
突然デコピンをされて額に痛みが走る。
「痛っ!」
「連れて行かれそうになってんじゃねぇよ!」
怒鳴られて、痛む額を抑えながら目を丸くした。
「俺があと一歩でも遅かったら、お前はこの世から居なくなってたんだぞ!警戒心を持てってあれほど言っただろうが!」
ディオンの厳しい言葉に、私はしんみりと俯いた。
「だって……ディオンと、同じ姿だったから……」
ディオンは私の様子に、片方の口をグッと噛みしめた。
「本物じゃない事くらい見抜けよ!」
「そんなの……無理だよ!確かに所々は違ったけど……」
「じゃあそれで分かるだろ!」
「それだけでもう1人ディオンがいるなんて思わな……」
と話していると、ディオンはサッと自分の前髪を掴んだ。
「はぁー……マジで。二度と……んな気持ちにさ……んな……」
ディオンは呟くようにそう口にし、苦し気に顔を歪めた。
ハッキリ聞き取れなくて、私は「え?なんて?」と聞き返すと、ディオンは「んでもねぇよ……」と、そっぽを向いた。
その時、ザザッと風の音が遠くから聞こえ、やがて木々がざわめき始めた。
直後――桜吹雪のように花びらが舞い上がり、辺り一面をピンク色で染め上げる。
「うわぁ~……」
美しく舞い散る桜に、しばらく見惚れてしまう。
桜の雨が止んだ時、ディオンが手を伸ばしてくるのが目の端に映った。
「花びら、付いてる」
「どこ?」
振り返ると、ディオンと至近距離で目が合い、瞬時にドキッと胸が跳ねた。
見つめてくるディオンの瞳に、思わず釘付けになる。
「……な、何?」
ドキドキし始める鼓動。
普段は意識しないように気をつけていたのに、突然の距離感に嫌でも意識してしまう。
ディオンは何も言わず、じっと私を見つめ続けている。
そんな瞳で見つめるから、視線に縫い付けられたように動けなくなる。
すると、顔が近づけてくる。
「え……?ディ、ディオン……!?」
私は思わずギュッと目を閉じてしまった。




