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カナメ -君はどう考える?-  作者: 旭月
第四章 それぞれの場所で
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任された仕事

 2034年1月。


 大阪・本町。


 株式会社カナメでは、新しい年の仕事が始まっていた。


 年末年始も監視業務を続けていた基盤運用課を除けば、多くの社員にとっては仕事始めだった。


 社員数は三十九名。


 昨年十月から始まった三部長体制も、すっかり日常のものになっている。


 営業部では、小坂千尋を中心に、松井慎吾と大本恭平が年明けの案件を確認していた。


     *


「……ほな、今年最初の案件確認を始めましょうか」


 小坂が言った。


「はい」


 松井が答えた。


「よろしくお願いします!」


 大本も、元気よく返事をした。


「まず、昨年から継続している案件についてですが」


 小坂は、資料を共有した。


 年明けに打ち合わせを予定している顧客。


 開発部との調整が必要な案件。


 そして、これから提案を進める新しい相談。


 それぞれの状況を確認していく。


「……大本さん」


「はい?」


「昨年末にお話しした件、覚えていますか?」


「もちろんです!」


 大本は、少し姿勢を正した。


「少し大きな案件を任せていただけるという話ですよね」


「そうです」


 小坂は、少し笑った。


「こちらの案件を、主担当としてお願いしたいと思っています」


     *


 小坂が共有したのは、既存顧客からの追加開発案件だった。


 現在利用しているシステムに、いくつかの機能を追加したいという相談。


 これまで大本が担当してきた案件よりも、少し規模が大きい。


 顧客側の関係者も複数おり、要望を整理するところから始める必要があった。


「……俺が主担当ですか?」


 大本が尋ねた。


「はい」


「……おお」


 大本は、資料を見直した。


「結構、いろいろありますね」


「そうですね」


「でも、やってみたいです!」


 小坂がうなずいた。


「では、お願いします」


「はい!」


     *


「ただし、最初から全部一人で進める必要はありません」


 小坂が続けた。


「はい」


「松井さんにも、レビューをお願いしています」


「承知しました」


 松井が答えた。


「大本さん、まずはお客様の要望を整理するところから始めましょう」


「よろしくお願いします!」


「こちらこそ」


 小坂は、少し考えた。


「それと、今回は大本さんが主担当ですので、お客様との打ち合わせも中心になって進めてください」


「はい!」


「ただ、わからないことがあれば、早めに相談してくださいね」


「了解です!」


     *


 数日後。


 大本は、顧客との初回打ち合わせに臨んでいた。


 松井も同席している。


 顧客側からは、システムの運用担当者と、利用部門の担当者が参加していた。


「本日は、お時間いただきありがとうございます」


 大本が挨拶した。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 顧客担当者が答えた。


「今回は、現在お使いのシステムについて、追加したい機能があると伺っています」


「はい」


 顧客は、資料を共有した。


 入力作業を減らすための機能。


 確認作業を簡単にするための機能。


 そして、集計結果を見やすくするための機能。


 いずれも、日常業務を改善するための要望だった。


     *


「……なるほど」


 大本は、資料を確認した。


「ちなみに、今回の機能は、すべて同じ時期に必要なんでしょうか?」


 顧客担当者は、少し考えた。


「できれば、まとめて対応していただきたいですね」


「承知しました」


「ただ、現場からは、入力作業の改善を早めに進めたいという声が出ています」


「なるほど」


 大本は、メモを取った。


「では、入力作業の改善が、一番優先度が高いということでしょうか?」


「そうですね」


「ほかの機能については、少し時期をずらしても問題ないでしょうか?」


「確認作業の方は、多少遅れても大丈夫だと思います」


「ありがとうございます」


「集計機能については、次の報告時期までに使えるようにしたいですね」


「なるほど」


     *


 大本は、顧客の話を整理した。


 入力作業の改善は、できるだけ早く。


 確認作業の改善は、多少時期を調整できる。


 集計機能は、次の報告時期までに必要。


 最初に聞いていた「まとめて対応してほしい」という要望だけでは、わからなかったことだった。


「……ありがとうございます」


 大本が言った。


「少し、優先順位が見えてきました」


「そうですね」


 顧客担当者がうなずいた。


「では、こちらで一度整理して、進め方をご提案させていただきます」


「よろしくお願いします」


「ただし、開発に必要な期間については、社内で確認してからご案内します」


「承知しました」


     *


 打ち合わせを終えたあと。


「……いやあ、緊張しましたわ」


 大本が言った。


 松井が、少し笑った。


「お疲れさまでした」


「ありがとうございます」


「でも、必要なことは確認できていましたね」


「そうですか?」


「はい」


 松井は、打ち合わせのメモを確認した。


「特に、機能ごとの優先順位を確認できたのはよかったと思います」


「ありがとうございます」


「ただ、一つだけ」


「はい?」


「集計機能について、次の報告時期がいつなのか、具体的に確認できていませんでしたね」


 大本は、少し考えた。


「……あ」


 松井がうなずいた。


「そこは、次回までに確認しておきましょう」


「了解です!」


     *


 数日後。


 大本は、顧客から追加で確認した情報をもとに、提案資料を作成していた。


 入力作業の改善。


 確認作業の改善。


 そして、集計機能の追加。


 それぞれの目的と希望時期を整理する。


 すべてを同時に開発する方法。


 優先度の高い機能から段階的に開発する方法。


 大本は、二つの進め方を比較していた。


「……こっちの方が、ええんかな」


 資料を見直す。


 ただし、技術的な実現方法については、まだわからないことがあった。


 以前なら、そのまま松井へ質問していたかもしれない。


 しかし、今回は少し違った。


 自分なりに、二つの案を考えてみた。


     *


「松井さん、ちょっと確認してもらえます?」


 大本が連絡した。


「はい。どうしました?」


「今回の提案なんですけど、二つ方法を考えてみたんです」


「なるほど」


「一つは、全部まとめて開発する方法です」


「はい」


「もう一つは、優先度の高い機能から順番に開発する方法です」


「なるほど」


 松井は、資料を確認した。


「大本さんは、どちらがよいと思いますか?」


 大本は、少し考えた。


「……俺は、段階的に進める方がええんちゃうかと思っています」


「理由は?」


「お客様が必要としている時期が、機能ごとに違うからです」


「なるほど」


「それに、最初から全部まとめて進めるより、優先度の高いものから確認してもらった方が、使いやすいものになるんちゃうかなと思いまして」


 松井は、うなずいた。


「よい考えだと思います」


     *


「ただし、技術的にその進め方が可能かどうかは、開発部へ確認する必要がありますね」


 松井が言った。


「そうですね」


「段階的に進めることで、かえって費用が増える場合もありますから」


「なるほど」


「ですので、両方の方法について、開発部に相談してみましょう」


「了解です!」


 大本は、うなずいた。


     *


 一月中旬。


 大本は、松井とともに開発一課の田村洋介へ連絡した。


「田村さん、少しご相談してもよろしいですか?」


「ええで。どうしたん?」


「既存のお客様から、追加開発の相談がありまして」


「なるほど」


「進め方について、二つ案を考えているんです」


「ほう」


 田村は、資料を確認した。


 すべての機能をまとめて開発する案。


 優先度の高い機能から段階的に開発する案。


「……なるほどな」


 田村は、少し考えた。


「どっちも、技術的にはできると思うで」


「そうなんですね」


「ただ、それぞれ違いはあるな」


「はい」


     *


「まとめて作る方は、最初に全体の設計を決められるからな」


 田村が説明した。


「なるほど」


「ただ、完成するまでに時間はかかると思う」


「そうですね」


「段階的に進める方は、必要な機能から先に使ってもらえる可能性がある」


「はい」


「ただ、あとから機能を追加することも考えて、最初の設計はちゃんとしとかなあかん」


 大本は、うなずいた。


「……なるほど」


「最初の費用だけで決めたらあかんわけですね」


「せやな」


 田村は、少し笑った。


「あとから作り直すことになったら、結局高くつくかもしれんしな」


「そうですね」


     *


「ちなみに、大本くんは、どっちを提案したいん?」


 田村が尋ねた。


「俺は、段階的に進める方がええと思っています」


「ほう」


「お客様が必要としている時期が違うので、先に使えるものから提供した方がええんちゃうかと」


「なるほど」


 田村は、うなずいた。


「それなら、最初に全体の設計を考えたうえで、段階的に開発する方法がええかもしれんな」


「……なるほど!」


「ただ、具体的な工数や費用は、もう少し詳しく確認せなあかんで」


「もちろんです」


 大本は、うなずいた。


     *


 打ち合わせを終えたあと。


 大本は、提案資料を見直した。


 顧客が必要としている機能。


 それぞれの優先順位。


 開発部が対応できる方法。


 そして、費用や期間について確認が必要な項目。


 まだ、提案は完成していない。


 しかし、最初に顧客から相談を受けたときよりも、何を考えるべきかがはっきりしていた。


「……よし」


 大本は、小さくつぶやいた。


 自分で考える。


 わからないところは、必要な人に相談する。


 そして、集めた情報をもとに、もう一度考える。


 その繰り返しだった。


 大本は、資料の続きを作り始めた。


 今度は、自分の考えを、顧客へ伝えるために。


     *


 一月中旬。


 大本恭平は、開発一課との打ち合わせを終え、提案資料の修正を進めていた。


 顧客から依頼されているのは、既存システムへの機能追加。


 入力作業の改善。


 確認作業の効率化。


 そして、集計機能の追加。


 最初は、すべてまとめて開発する方法と、優先度の高い機能から段階的に開発する方法を考えていた。


 しかし、田村との相談で、一つわかったことがある。


 段階的に開発する場合でも、最初に全体の設計を考えておく必要があるということだった。


     *


「……ほな、ここを直そうか」


 大本は、資料を見直した。


 最初に全体の構成を整理する。


 そのうえで、優先度の高い機能から順番に実装する。


 そうすれば、顧客が必要としている機能を先に提供しながら、後から追加する機能についても考慮できる。


 ただし、費用や期間については、まだ開発部の確認が必要だった。


 大本は、田村から受け取った確認事項を整理し、松井へ連絡した。


「松井さん、提案資料を更新しました」


「ありがとうございます。確認しますね」


     *


 松井慎吾は、資料を開いた。


「……なるほど」


 少し考えたあと、口を開いた。


「前より、わかりやすくなりましたね」


「ほんまですか?」


「はい。お客様が何を優先したいのか、整理されています」


「ありがとうございます」


「ただ、こちらの費用については、まだ概算ですね」


「はい。田村さんに確認中です」


「では、正式な見積もりと区別しておきましょう」


「了解です」


 松井は、資料の一部を示した。


「それと、二つの案の違いを、もう少し明確にした方がよいですね」


「なるほど」


「まとめて開発する場合と、段階的に開発する場合で、お客様にとって何が変わるのか」


「そうですね」


「そこがわかれば、判断しやすくなると思います」


「ありがとうございます!」


     *


 数日後。


 開発一課から、工数と費用の概算が届いた。


 大本は、それをもとに提案資料を仕上げた。


 一つ目は、すべての機能をまとめて開発する案。


 最初に全体の要件を確定し、まとめて実装する。


 機能間の調整を一度に進められる一方、すべての機能が揃うまで利用開始を待つ必要がある。


 二つ目は、全体設計を行ったうえで、優先度の高い機能から段階的に開発する案。


 入力作業の改善を先行し、その後、確認作業と集計機能を追加する。


 早い段階から一部の機能を利用できる可能性がある一方、段階ごとの確認や調整が必要になる。


 それぞれの利点と注意点を整理した。


     *


「……よし」


 大本は、資料を保存した。


 以前なら、先輩が作った資料を確認し、その内容を説明することが多かった。


 しかし、今回は違う。


 顧客から要望を聞いた。


 自分で進め方を考えた。


 開発部へ相談し、実現方法を確認した。


 そして、松井のレビューを受けながら提案をまとめた。


 もちろん、すべて一人で作ったわけではない。


 それでも、今回の提案には、自分で考えた内容が含まれていた。


     *


 一月下旬。


 大本は、顧客との提案打ち合わせに臨んでいた。


 松井も同席している。


「本日は、前回伺った内容をもとに、開発の進め方をご提案します」


 大本が説明を始めた。


「よろしくお願いします」


 顧客担当者が答えた。


 大本は、資料を共有した。


「今回は、大きく二つの方法を考えています」


「なるほど」


「一つ目は、すべての機能をまとめて開発する方法です」


 大本は、資料を示した。


「こちらは、最初に全体の要件を決めて、まとめて開発を進める形になります」


「なるほど」


「ただし、すべての機能が完成してから利用を開始する想定です」


「そうなんですね」


     *


「もう一つは、段階的に開発する方法です」


 大本が続けた。


「こちらは、最初に全体の設計を考えたうえで、優先度の高い機能から順番に開発します」


「なるほど」


「前回のお話では、入力作業の改善を早めに進めたいと伺っていました」


「そうですね」


「ですので、まず入力作業の改善を先に行い、その後、確認作業や集計機能を追加する方法です」


 顧客担当者は、資料を確認した。


「……なるほど。そういう進め方もできるんですね」


「はい。ただし、段階ごとに確認や調整が必要になります」


「わかりました」


     *


「ちなみに、費用はどのくらい違うんでしょうか?」


 顧客担当者が尋ねた。


「はい」


 大本は、費用比較の資料を開いた。


「現時点では、こちらの概算を想定しています」


「なるほど」


「ただし、正式な金額については、詳細な要件を確認したうえでのお見積もりとなります」


「承知しました」


「また、段階的に開発する場合は、途中で仕様を変更すると、追加の費用が発生する可能性があります」


「そうなんですね」


「ですので、最初に全体の方向性を整理しておくことが大切だと考えています」


 顧客担当者は、うなずいた。


     *


「……大本さんとしては、どちらがおすすめですか?」


 顧客担当者が尋ねた。


 大本は、少し考えた。


「今回のお話でしたら、私は段階的に進める方法がよいと思っています」


「なるほど」


「理由は、機能ごとに必要な時期が違うからです」


「そうですね」


「入力作業の改善を先に進めることで、早い段階から効果を確認していただけると思います」


「なるほど」


「ただし、集計機能については、次の報告時期までに必要と伺っていますので、全体の予定を確認しながら進める必要があります」


「わかりました」


 大本は、少し笑った。


「ですので、どちらがよいかは、お客様のご都合も踏まえて決めていただければと思います」


     *


 顧客担当者は、資料を見直した。


「……ありがとうございます」


「いえ」


「社内でも、一度確認してみます」


「承知しました」


「特に、利用部門の担当者にも確認したいと思っています」


「そうですね」


 大本は、うなずいた。


「もし追加で確認したいことがあれば、ご連絡ください」


「ありがとうございます」


「正式なお見積もりについては、進め方が決まり次第、改めてご案内します」


「よろしくお願いします」


     *


 打ち合わせを終えたあと。


 大本は、椅子にもたれかかった。


「……いやあ、緊張しましたわ」


 松井が、少し笑った。


「お疲れさまでした」


「ありがとうございます」


「でも、落ち着いて説明できていましたね」


「ほんまですか?」


「はい」


 松井は、資料を確認した。


「特に、どちらの案をおすすめするか聞かれたとき、理由を説明できていました」


「ありがとうございます」


「ただ、少し気になったところもあります」


「……どこですか?」


「最後の説明ですね」


 大本は、少し考えた。


「……最後?」


「はい。おすすめする理由を説明したあと、もう少しお客様の反応を確認してもよかったと思います」


「なるほど」


「こちらが説明して終わりではなく、相手がどう受け止めたかを確認することも大切ですから」


「……確かに」


 大本は、うなずいた。


「次は気をつけます」


     *


 数日後。


 大本は、小坂へ案件の状況を報告していた。


「……ということで、先方へ二つの案をご提案しました」


「ありがとうございます」


 小坂が答えた。


「現在は、社内で検討していただいています」


「承知しました」


 小坂は、資料を確認した。


「今回、どうして二つの案にしたんですか?」


 大本は、少し考えた。


「お客様が、初期費用と今後の拡張性の両方を気にされていたので」


「なるほど」


「それに、必要な時期が機能ごとに違っていたので、進め方を比較していただいた方がええと思いました」


「そうですね」


「最初から、こちらで一つに決めてしまうのも違うかなと思いまして」


 小坂は、うなずいた。


「よい考えだと思います」


     *


「ただし、大本さん」


 小坂が続けた。


「はい?」


「お客様へ選択肢を示すことと、判断をすべてお任せすることは違いますからね」


「……なるほど」


「営業として、どちらが適していると思うのか。その理由も説明する必要があります」


「はい」


「今回は、そこまでできていましたか?」


「はい。段階的に進める方法をおすすめしました」


「そうですか」


 小坂は、少し笑った。


「では、よかったと思います」


「ありがとうございます!」


     *


「松井さんからも、何かありますか?」


 小坂が尋ねた。


「そうですね」


 松井は、少し考えた。


「以前より、自分の考えを持って相談してくれるようになりました」


「なるほど」


「今回も、最初から答えを求めるのではなく、二つの案を整理して持ってきてくれましたので」


 小坂がうなずいた。


「それはよかったですね」


 大本は、少し照れたように笑った。


「……まだ、わからんことばっかりですけど(笑)」


「それでいいんですよ」


 松井が答えた。


「わからないことを、わからないままにしないことが大切ですから」


「はい!」


     *


「……ちなみに、大本さん」


 小坂が言った。


「はい?」


「今回の案件、受注できると思いますか?」


 大本は、少し考えた。


「……まだ、わかりません」


「そうですね」


「でも、お客様が判断できる材料は、出せたと思います」


 小坂は、少し笑った。


「そうですね」


「では、先方からの確認事項に対応できるよう、準備を進めておいてください」


「了解です!」


     *


 一月末。


 大本は、顧客からの返事を待ちながら、次の案件の準備を進めていた。


 今回の提案が、受注につながるかどうかはまだわからない。


 しかし、以前とは少し違う感覚があった。


 顧客の要望を聞く。


 自分で進め方を考える。


 わからないところは、必要な人へ相談する。


 そして、集めた情報をもとに提案する。


 これまでも、先輩たちが教えてくれていたことだった。


 しかし、今回は自分が中心となって進めた。


     *


「……いやあ、結構大変でしたわ」


 大本が言った。


 松井が、少し笑った。


「そうですね」


「でも、なんか面白かったです」


「それはよかったです」


「自分で考えること、増えましたし」


「そうですね」


 大本は、少し考えた。


「……まあ、まだ松井さんに聞くことも多いですけど(笑)」


「それでいいんですよ(笑)」


 松井は、少し笑った。


「相談することと、任されていないことは違いますから」


「……なるほど」


「今回、大本さんは主担当として、ちゃんと仕事を進められていましたよ」


 大本は、少し照れたように笑った。


「……ありがとうございます」


     *


 2034年1月。


 株式会社カナメでは、新しい一年の仕事が始まっていた。


 大本は、これまでより少し大きな案件を任され、顧客への提案を終えた。


 まだ、受注が決まったわけではない。


 それでも、今回の仕事を通じて、少しだけできることが増えた。


 任されるということは、何でも一人で決めることではない。


 自分で考え、必要な人へ相談しながら、仕事を進めていくこと。


 大本は、そのことを少しずつ理解し始めていた。


 そして、次の仕事へ向けて、また資料を開いた。

お読みいただきありがとうございます。旭月です。


今回は、大本が少し大きな案件を任されるお話でした。


入社当初は、先輩たちに教わりながら仕事を覚えていた大本。


今回は自分が主担当となり、顧客の要望を整理し、開発部へ相談しながら提案をまとめました。


もちろん、まだ一人で何でもできるわけではありません。


松井や田村の助けも借りています。


でも、それでいいんですよね。


**仕事を任されることと、誰にも相談せず一人で抱え込むことは違います。**


大切なのは、自分なりに考え、必要な人の力を借りながら、仕事を前へ進められること。


今回の大本は、その一歩を踏み出せたのではないでしょうか。


さて、提案の結果はまだ出ていません。


それでも、大本自身には確かな経験が残りました。


……もっとも、本人はまだまだ先輩たちに教わる気満々のようですが(笑)。


次回も、引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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