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カナメ -君はどう考える?-  作者: 旭月
第四章 それぞれの場所で
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三十九人の年末

 2033年12月。


 大阪・本町。


 株式会社カナメでは、新しい事務所に移転して初めての年末を迎えていた。


 普段はリモート勤務の社員も多く、三十席ある執務スペースがすべて埋まる日はほとんどない。


 それでも、会議室では打ち合わせが行われ、オープンスペースでは部署を越えた相談が交わされている。


 四月には少し広く感じた事務所も、今ではすっかり日常の風景になっていた。


     *


「……これで、今年の採用予定はすべて完了ですね」


 福原奈央が、社員一覧を確認しながら言った。


 業務部では、年内最後の中途社員の受け入れ手続きが終わったところだった。


「そうですね。お疲れさまでした」


 高瀬が答えた。


「ありがとうございます」


 福原は、社員数の欄を確認した。


 三十九名。


 四月に新卒社員を二名迎え、八月には初めて一名を送り出した。


 そして、年内に中途社員三名が加わった。


「……四十名には、一名届きませんでしたね」


「そうですね。ただ、採用計画は予定どおり完了しています」


「はい」


「人数を合わせるために採用するわけではありませんから」


 福原は、少し笑った。


「金目さんも、同じことをおっしゃりそうですね」


「そうですね(笑)」


     *


 業務部では、年末調整や給与の処理も進められていた。


 社員が増えれば、確認する情報も増える。


 しかし、これまで整えてきた仕組みのおかげで、作業が人数に比例して増えるわけではなかった。


「高瀬さん、年末調整の確認待ちは、あと二件です」


「ありがとうございます。期限までに確認できそうですか?」


「はい。ご本人には連絡済みです」


「では、予定どおり進めましょう」


「承知しました」


 福原は、資料を閉じた。


「……今年は、入社だけじゃなくて、退職の手続きもありましたね」


「そうですね」


「最初は少し緊張しました」


 高瀬が、少し笑った。


「初めてのことでしたからね」


「はい。でも、必要な手順を確認して進められました」


「それはよかったです」


 福原は、うなずいた。


 新しい社員を迎えること。


 別の道へ進む社員を送り出すこと。


 どちらも、業務部にとって大切な仕事だった。


     *


 十二月中旬。


 開発部では、西田を中心に三人の課長が集まっていた。


 開発一課の田村洋介。


 開発二課の尾崎達也。


 基盤運用課の井上修一。


 年内最後の進捗確認だった。


「ほな、一課から頼むわ」


 西田が言った。


「大型案件の方は、年内の予定分まで終わっとるで」


 田村が答えた。


「年明けから結合試験を進める予定や」


「了解。八月に担当変更した案件は?」


「そっちも問題ない。引き継いだ担当者が、ちゃんと進めてくれとる」


「そらよかった」


 西田は、うなずいた。


 初めて退職者が出た開発一課。


 担当変更に伴う調整は必要だったが、残る社員に無理をさせず、仕事を続けることができていた。


     *


「二課はどうや?」


「こっちも予定どおりや」


 尾崎が答えた。


「小規模案件がいくつか並行しとるけど、年内に終わらせる分は片づいたで」


「年明けは?」


「担当も決まっとる。問題ないと思う」


「了解」


「……ただ、正月明けにいきなり予定詰め込むんは勘弁してな(笑)」


 西田が笑った。


「誰もそんなこと言うてへんやろ(笑)」


「念のためや(笑)」


 田村も笑った。


     *


「井上のところは?」


「年末年始の監視体制は、もう決まっとるで」


 井上が答えた。


「当番も連絡経路も確認済みや」


「了解」


「まあ、何も起きへんのが一番やけどな」


「ほんま、それやな」


 西田は、うなずいた。


「当番以外は、ちゃんと休んでもろてな」


「もちろんや」


 尾崎が、少し笑った。


「……井上のところは、正月も仕事あるんやな」


「システムが正月休みしてくれたらええんやけどな(笑)」


「そら無理やな(笑)」


 三人は笑った。


     *


「……ほな、今年はこのくらいやな」


 西田が資料を閉じた。


「今年も一年、お疲れさん」


「お疲れさん」


 田村が答えた。


「来年も頼むで」


「こちらこそや」


 尾崎も、井上も、うなずいた。


 開発部では、三つの課がそれぞれ異なる仕事を担っている。


 その仕事を、西田が一つずつ確認している。


 以前のように、西田がすべての案件を直接管理する必要はなかった。


 課長たちが判断し、必要なときに相談する。


 そんな体制が、今年はすっかり定着していた。


     *


 同じ頃。


 営業部でも、年内の案件確認が進められていた。


「こちらのお客様については、年明けに打ち合わせを予定しています」


 松井慎吾が説明した。


「ありがとうございます」


 営業部長の小坂千尋が、資料を確認した。


「必要な資料は揃っていますか?」


「はい。先方からの確認事項も反映しています」


「では、その内容で進めましょう」


「承知しました」


 隣では、大本恭平が自分の担当案件を確認していた。


「……いやあ、今年もようけ仕事しましたね」


 小坂が笑った。


「まだ終わってないわよ(笑)」


「……あ、そうでした(笑)」


 松井も笑った。


     *


「そういえば、大本さん」


 小坂が声をかけた。


「はい?」


「来年から、少し大きな案件を担当していただこうと思っています」


「……ほんまですか!」


 大本が顔を上げた。


「もちろん、最初から全部任せるわけではありませんよ」


「はい!」


「松井さんにも、引き続き支援していただきます」


「承知しました」


 松井がうなずいた。


「でも、これまでより自分で判断していただく場面は増えると思います」


「……なるほど」


 大本は、少し考えた。


「ほな、頑張らなあきませんね」


「そうですね」


 小坂は、少し笑った。


「ただ、無理に背伸びする必要はありませんから」


「了解です!」


     *


 打ち合わせを終えたあと。


 大本は、松井へ声をかけた。


「……来年、ちょっと楽しみですね」


「そうですね」


「最初は、何もわからんかったんですけど」


 松井が、少し笑った。


「今も、わからないことはあるでしょう?」


「……そら、ありますけど(笑)」


「それでいいんですよ」


「そうなんですか?」


「わからないことを確認できるようになったのも、成長ですから」


 大本は、少し考えた。


「……なるほど」


「それに、今は自分で考えてから相談してくれるようになりましたしね」


「……そう言われると、ちょっと嬉しいですね(笑)」


 二人は笑った。


     *


 十二月中旬。


 業務部では、会社を支えるための手続きが進み、開発部では三つの課がそれぞれの案件を締めくくろうとしていた。


 営業部では、来年へ向けた準備が進んでいる。


 仕事の内容も、働く場所も、それぞれ違う。


 それでも、同じ会社で仕事をしている。


 そして、今年最後の経営会議を控えたある日。


 福原は、新事務所のオープンスペースを見渡していた。


「……ここなら、できそうですね」


 隣にいた高瀬が、うなずいた。


「そうですね」


「会議室も一部使えば、十分だと思います」


「はい」


 福原は、手元の資料を確認した。


 参加予定人数。


 ケータリングの手配。


 飲み物の準備。


 そして、当日の会場配置。


「……新しい事務所で初めての忘年会ですね」


 福原が、少し笑った。


「そうですね」


 高瀬も笑った。


「皆さんに、楽しんでいただけるといいですね」


「はい」


 福原は、うなずいた。


 十二月も、残りわずか。


 カナメでは、今年最後の仕事と、初めての新事務所での忘年会に向けた準備が進んでいた。


     *


 十二月下旬。


 株式会社カナメでは、年内最後の経営会議が開かれていた。


 参加しているのは、金目、西田、高瀬、小坂の四人。


 十月に三部長体制へ移行してから、初めて迎える年末だった。


「ほな、今年最後の確認をしようか」


 金目が言った。


「はい」


 高瀬が資料を共有した。


「今年の売上は、年間計画を上回る見込みです。利益も計画の範囲内に収まる見通しです」


「そらよかった」


「資金繰りについても、年末年始の支払いを含めて問題ありません」


「了解です」


 金目は、うなずいた。


「西田、開発部の方は?」


「三課とも、年内の予定はだいたい終わっとるで。年明けの準備もできとる」


「そらよかった」


「基盤運用課の年末年始の体制も確認済みや」


「了解」


「営業部はどうですか?」


 小坂が答えた。


「年明けの案件についても、準備は進んでいます。受注見込みは十一月の計画から大きく変わっていません」


「ありがとうございます」


 金目は、資料を閉じた。


「ほな、来年もこの方針で進めようか」


 三人がうなずいた。


     *


「……しかし、今年もいろいろあったな」


 金目が言った。


「そうですね」


 高瀬が答えた。


「新事務所への移転もありましたし、初めて退職される方もいらっしゃいました」


「せやな」


「そして、三部長体制にもなりました」


 小坂が、少し笑った。


「私も、まだ部長になって三か月近くですけどね」


「そうでしたね(笑)」


 金目も笑った。


 西田が、少し考えた。


「……しかし、今年は会社の形がだいぶ変わったな」


「ほんまやな」


 金目は、うなずいた。


「ほな、来年もよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 こうして、2033年最後の経営会議は終わった。


     *


 年内最終営業日。


 開発部では、年明けの案件予定が共有され、営業部では顧客への連絡が終わろうとしていた。


 業務部も、年末の処理をひととおり終えている。


 ただし、基盤運用課では年末年始も監視が続く。


 当番を担当する社員には、必要な連絡先と対応手順が共有されていた。


 そして、夕方。


 新事務所のオープンスペースでは、いつもとは少し違う準備が進められていた。


     *


「……これ、どこに置いたらええ?」


 金目が、飲み物の入った箱を抱えて尋ねた。


「あ、金目さん。そちらのテーブルにお願いします」


 福原が答えた。


「了解!」


 金目は、箱を運んだ。


 オープンスペースには、ケータリングの料理が並べられている。


 会議室の一部も開放し、社員たちが自由に行き来できるようになっていた。


 新事務所で初めて開催する忘年会。


 参加は任意で、家庭の事情や業務の都合で来られない社員もいる。


 それでも、普段はリモート勤務をしている社員たちも集まり、事務所はいつもより賑やかだった。


「……しかし、結構な量やな」


 金目が言った。


「参加人数に合わせて用意していますから」


 福原が笑った。


「……余ったら持って帰ってええんかな(笑)」


「それは終わってから考えましょう(笑)」


「……せやな(笑)」


     *


「……いやあ、今年もお疲れさまでした!」


 大本恭平が、元気よく声を上げた。


 隣にいた柴崎真帆が笑った。


「まだ乾杯してないよ(笑)」


「……あ、せやった(笑)」


「もう少し待ちなよ」


「いや、料理見たら腹減ってきてな(笑)」


「子どもか(笑)」


 二人は笑った。


 少し離れたところでは、田村と尾崎が料理を眺めていた。


「……これ、結構うまそうやな」


 田村が言った。


「せやな」


 尾崎がうなずいた。


「……まだ食べたらあかんのかな?」


「乾杯してからちゃう?」


「……せやった(笑)」


 そこへ井上がやってきた。


「何や、もう食べる気なんか(笑)」


「いや、見とっただけや(笑)」


「ほんまかいな(笑)」


 三人は笑った。


     *


「……ほな、そろそろ始めようか」


 金目が声をかけた。


 社員たちが、飲み物を手に集まってくる。


「えー、今年も一年、お疲れさまでした」


 金目は、周囲を見渡した。


「今年は事務所も移転したし、新しい人も増えたし、いろいろありましたけど」


 少し笑った。


「まあ、無事に年末を迎えられてよかったです」


 社員たちがうなずいた。


「……長い話しても料理冷めるしな(笑)」


 笑いが起きた。


「ほな、乾杯!」


「乾杯!」


 オープンスペースに、明るい声が響いた。


     *


 乾杯が終わると、社員たちは思い思いの場所で話し始めた。


 普段は画面越しに会うことが多い社員同士も、今日は同じ場所にいる。


 仕事の話をする人もいれば、休日の予定を話す人もいた。


 大本は、料理を皿に取りながら、柴崎と話していた。


「……そういや、正月は何するん?」


 大本が尋ねた。


「実家に帰るよ。大本は?」


「俺も帰るつもりやで」


「へえ。久しぶり?」


「せやな。最近、なかなか帰れてへんかったし」


「そっか」


 柴崎は、少し笑った。


「じゃあ、ゆっくりしてきなよ」


「せやな。仕事のこと忘れて休むわ(笑)」


「それ、できるの?(笑)」


「……たぶん(笑)」


 二人は笑った。


     *


 別のテーブルでは、田村と尾崎、井上が話していた。


「……しかし、今年は新しい事務所になってよかったな」


 田村が言った。


「せやな」


 尾崎が答えた。


「会議室も増えたし、前より使いやすなったわ」


「ほんまやな」


 井上が、少し笑った。


「まあ、俺らはリモート多いけどな(笑)」


「それはそうや(笑)」


「でも、こうやって集まれる場所があるんはええな」


 田村がうなずいた。


「せやな」


「……ところで、正月の当番は大丈夫なん?」


 尾崎が尋ねた。


「大丈夫やで。もう調整済みや」


「そらよかった」


 井上は、少し笑った。


「まあ、何も起きんことを祈っといてくれ(笑)」


「祈っとくわ(笑)」


     *


「福原さん、準備ありがとうございました」


 小坂が声をかけた。


「いえいえ」


 福原は、少し笑った。


「皆さん、楽しんでいただけているようでよかったです」


「そうですね」


 小坂は、周囲を見渡した。


「普段は別々の場所で仕事をしていますけど、こうして集まると結構な人数ですね」


「はい」


「新しい事務所にして、よかったですね」


「そうですね」


 福原がうなずいた。


「……あ、福原さん」


 高瀬が、少し離れたところから声をかけた。


「はい?」


「準備はもう大丈夫ですから、福原さんも食べてくださいね」


「あ……そうですね(笑)」


 福原は、少し笑った。


「では、いただきます」


     *


 少しして。


「金目さん!」


 大本が声をかけた。


「おお、どうしたん?」


「今年も一年、お疲れさまでした!」


「お疲れさん(笑)」


「いやあ、今年もようけ仕事しましたわ!」


 金目が笑った。


「そらよかった(笑)」


「来年も頑張ります!」


「頼むで」


 大本は、うなずいた。


「……あ、でも正月は休みますけど(笑)」


「そら休んでええで(笑)」


 近くにいた柴崎が笑った。


「大本、何の宣言なの(笑)」


「いや、大事なことやろ(笑)」


 三人は笑った。


     *


 忘年会は、和やかな雰囲気のまま進んだ。


 大きな余興があるわけでも、特別な表彰があるわけでもない。


 ただ、一年の仕事を終えた社員たちが、料理を食べ、飲み物を片手に話している。


 新しい事務所のオープンスペースは、いつもとは違う形で、社員たちの居場所になっていた。


     *


 夜。


 忘年会が終わり、社員たちは少しずつ帰っていった。


 片づけも、ひと段落している。


 オープンスペースには、金目と西田が残っていた。


「……結構集まったな」


 西田が言った。


「せやな」


 金目が答えた。


「最初は、広すぎるかな思っとったけど」


「こういう使い方もあるんやな」


「ほんまやな」


 金目は、少し笑った。


     *


「……結局、四十人には届かへんかったな」


 西田が言った。


「せやな」


「残念か?」


「いや、別に(笑)」


「そうなん?」


 金目は、少し笑った。


「三十九人もおるやん(笑)」


 西田が笑った。


「……そらそうやな(笑)」


「四十人にするために会社やっとるわけちゃうしな」


「せやな」


     *


 金目は、片づけの終わったオープンスペースを見渡した。


 つい先ほどまで、社員たちの笑い声が響いていた場所。


 今は、テーブルも元の位置に戻され、いつもの事務所の姿になっている。


「……しかし、ようけ増えたな」


 金目が言った。


「人が?」


「せやな」


 西田は、少し笑った。


「最初は、こんな人数になると思ってへんかったやろ?」


「そらな(笑)」


「今は、部長が三人もおるしな」


「せやな」


「俺が知らんところで仕事も進んどるし」


「ええことやん」


「ほんまやな」


     *


「……でも、ほんまに変わったな」


 西田が言った。


「せやな」


「昔は、何かあったらすぐ金目に話が来とったやろ」


「そうやな」


「今は、田村らが判断して進めとることも多いし、小坂さんも営業部をまとめてくれとる」


「ほんま、助かっとるわ」


 金目は、少し笑った。


「高瀬さんも、会社のことよう見てくれとるしな」


「せやな」


「……俺らだけやったら、こうはならんかったやろな」


 西田がうなずいた。


「そらそうやろ」


 少し笑った。


「三十九人おるんやから、三十九人で会社やっとるんやで」


 金目は、少し考えた。


「……せやな」


     *


「そういや、来年はどうするん?」


 西田が尋ねた。


「何を?」


「会社や」


「……えらい大きな質問やな(笑)」


 西田が笑った。


「社長やろ?(笑)」


「せやったな(笑)」


 金目は、少し考えた。


「まあ、今年と一緒ちゃうかな」


「ほう?」


「必要な仕事をして、困ったことがあったら考えて、直せるところは直して」


「うん」


「ほんで、みんながちゃんと仕事できるようにする」


 西田は、うなずいた。


「……相変わらずやな」


「何が?」


「考え方や」


「そうか?」


「せやで」


 西田は、少し笑った。


「会社が大きなっても、そこは変わらへんな」


 金目も笑った。


「……まあ、面倒なこと増やしたくないだけやけどな(笑)」


「知っとるわ(笑)」


 二人は笑った。


     *


「……ほな、そろそろ帰ろか」


 金目が言った。


「せやな」


 西田は、上着を手に取った。


「今年もお疲れさん」


「お疲れさん」


「来年も頼むで」


「こちらこそや」


 金目は、少し笑った。


「……まあ、来年もぼちぼちやっていこうか」


「せやな」


 二人は、事務所の照明を落とした。


     *


 2033年12月。


 株式会社カナメは、三十九名の会社として一年を終えた。


 今年は、新しい事務所へ移転した。


 新しい仲間を迎え、初めて一人の社員を送り出した。


 そして、三つの部門に、それぞれ部長が置かれた。


 会社の形は、少しずつ変わっていた。


 それでも、変わらないものもある。


 必要な仕事を進めること。


 困ったときには相談すること。


 そして、もっとよい方法があれば、少しずつ変えていくこと。


 忘年会の賑わいが去った事務所には、いつもの静けさが戻っていた。


 年末年始も、基盤運用課では必要な監視が続いている。


 そして、年が明ければ、また新しい仕事が始まる。


 三十九名、それぞれの仕事がある。


 三十九名、それぞれの一年があった。


 カナメは、いつもどおりの年末を迎えた。

お読みいただきありがとうございます。旭月です。


今回は、カナメの2033年を締めくくるお話でした。


新事務所への移転、初めての退職者、そして三部長体制への移行。


振り返ってみると、会社の形が大きく変わった一年でしたね。


そんな一年の最後に、新事務所で初めての忘年会を開催しました。


普段はリモート勤務の社員も多いカナメですが、こうして顔を合わせ、仕事を離れて笑い合う時間も大切なのでしょう。


さて、年末の社員数は三十九名。


目標の四十名には一名届きませんでしたが、金目はあまり気にしていない様子。


人数を増やすこと自体が、会社の目的ではありませんからね。


**三十九人いれば、三十九人それぞれの仕事がある。**


そして、その一つひとつが会社を支えています。


……もっとも、金目は相変わらず仕事を楽にしたいだけのようですが(笑)。


さて、次回からは2034年。


カナメの新しい一年が始まります。


引き続き、お付き合いいただければ幸いです。

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