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カナメ -君はどう考える?-  作者: 旭月
第三章 任せた先にあるもの
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任せる余裕

 2032年8月。


 株式会社カナメでは、夏を迎えても、いつもどおりの仕事が続いていた。


 四月に開発部が三課体制となってから、四か月。


 大型案件を担当する開発一課。


 小型案件を担当する開発二課。


 そして、既存システムの保守・運用を担う基盤運用課。


 それぞれの課が、自分たちの役割に合わせて仕事を進めている。


 今年も採用活動は続いており、開発部には新しい社員が少しずつ加わっていた。


 基盤運用課でも、以前と比べて仕事を分担できるようになっている。


 ただ、日々の運用がなくなったわけではない。


 システムが動いている限り、確認するべきことは毎日のようにあった。


     *


「……まだ結構あるなあ」


 井上修一は、改善項目の一覧を眺めていた。


 八月上旬。


 基盤運用課では、日々の運用業務に加えて、以前から後回しになっていた改善項目を整理していた。


 監視設定の見直し。


 障害対応手順の更新。


 定期確認作業の自動化。


 そして、古くなった運用資料の整理。


 どれも、以前から必要性は認識していた仕事だった。


 しかし、日々の問い合わせや障害対応を優先しているうちに、なかなか手をつけられずにいた。


「井上さん、改善項目の整理ですか?」


 藤井直人が声をかけた。


「せやねん」


 井上は、少し笑った。


「前からやりたいと思っとったこと、結構残っとるなと思って」


「そうですね」


 藤井は、一覧を確認した。


「普段の運用を止めるわけにはいきませんし」


「せやな」


「でも、最近は少しずつ手をつけられるようになってきましたね」


「ほんまやな」


 井上は、うなずいた。


 以前は、問い合わせが重なるだけで、ほかの仕事に手が回らなくなることもあった。


 しかし、今は新しい社員も加わり、担当を分けられるようになっている。


 日々の確認作業も、少しずつ整理が進んでいた。


「……ほな、そろそろ本格的に改善していこうか」


 井上が言った。


「そうですね」


 藤井もうなずいた。


     *


「小川君、ちょっとええ?」


 井上が声をかけた。


「はい。どうしました?」


 小川悠斗が答えた。


 小川は、以前からアプリケーションの運用支援や一次調査に関わっていた。


 その経験を生かす形で、四月の組織再編に合わせて基盤運用課へ正式に異動していた。


 最初は、運用手順の確認や問い合わせの一次調査を中心に担当していたが、最近は少しずつ任される仕事も増えている。


「今、改善項目を整理しとるんやけどな」


「はい」


「小川君から見て、気になるところとかある?」


 小川は、少し考えた。


「そうですね……」


 一覧を確認する。


「毎朝の確認作業って、結構時間かかっていますよね」


「せやな」


「同じ画面を開いて、同じ項目を確認しているところもありますし」


「なるほど」


 井上は、うなずいた。


「確かに、毎日同じことしとる部分はあるな」


「はい」


「そこは、自動化できるかもしれませんね」


 藤井も、少し考えた。


「以前から話には出ていましたね」


「せやな」


 井上は、改善項目の一覧を見直した。


「ほな、まずそこから考えてみようか」


     *


 数日後。


 基盤運用課では、毎朝の確認作業について打ち合わせを行っていた。


 井上、藤井、小川。


 そして、昨年入社した運用経験者も参加している。


「今の確認作業なんですけど」


 運用経験者が、手順書を共有した。


「毎朝、同じ画面を開いて、決まった項目を確認していますよね」


「せやな」


 井上が答えた。


「異常がないか確認するために、毎日実施しとる」


「はい」


「この部分なら、自動で情報を取得することはできそうです」


「なるほど」


 藤井が、少し考えた。


「ただ、異常が出たときの判断は、どうしますか?」


「そこは、今までどおり人が確認する形にした方がよいと思います」


 運用経験者が答えた。


「まずは、情報を集めるところだけ自動化する方法です」


「なるほどな」


 井上は、うなずいた。


「それがええと思う」


 小川が尋ねた。


「最初から、自動で異常判定までやるわけではないんですね」


「せやな」


 井上が答えた。


「今の手順がちゃんと動いとるんやから、いきなり全部変える必要はないと思う」


「なるほど」


「まずは、自動で集めた結果が、今までの確認と同じになるか見たいな」


 藤井もうなずいた。


「手動確認と並行して、結果を比較する形ですね」


「せやな」


 井上は、少し笑った。


「問題なさそうやったら、少しずつ切り替えていこう」


「わかりました」


     *


 その後、運用経験者を中心に、確認結果を自動で取得する仕組みの試作が始まった。


 小川も、既存の確認手順を整理する作業に参加している。


「この項目って、どこを見れば正しいかわかるんですか?」


 小川が尋ねた。


 藤井は、手順書を開いた。


「ここですね」


「なるほど」


「ただ、正常値が一つに決まっているわけではないので、そこは注意が必要です」


「そうなんですね」


「はい。時間帯や処理状況によって、多少変わることがありますから」


 小川は、メモを取った。


「じゃあ、単純に数字だけ比較したらあかんのですね」


「そうですね」


 藤井がうなずいた。


「だから、今回はまず取得した情報を一覧にするところまでにしています」


「なるほど」


 小川は、少し考えた。


「……自動化って、思っていたより確認することが多いですね」


 藤井が笑った。


「そうですね。今まで人が判断していたことを、全部そのまま機械に任せられるわけではありませんから」


「勉強になります」


     *


 八月中旬。


 試作した仕組みが、実際の運用環境で動き始めていた。


 ただし、まだ正式な運用には切り替えていない。


 毎朝、これまでどおり人が確認する。


 同時に、自動取得した結果も保存する。


 そして、両者の内容が一致しているかを比較する。


「……今のところ、問題なさそうですね」


 藤井が言った。


 小川が、比較結果を確認している。


「はい。今日の分も一致しています」


「そらよかった」


 井上がうなずいた。


「ただ、まだ始めたばっかりやからな」


「そうですね」


 藤井が答えた。


「しばらく並行して確認した方がよさそうです」


「せやな」


 井上は、資料を見直した。


「異常が出たときの結果も確認したいしな」


「はい」


「ほな、もう少し続けようか」


 小川もうなずいた。


「わかりました」


     *


 その日の午後。


 井上は、改善項目の一覧を更新していた。


 毎朝の確認作業。


 自動取得の試行中。


 手動確認との比較を継続。


 正式な切り替えは、まだ先だった。


 しかし、以前なら、こうした改善に取り組む時間そのものがなかなか取れなかった。


 今は、日々の運用を続けながら、改善のための仕事も進められている。


「……少しずつやな」


 井上は、少し笑った。


 改善項目の一覧には、まだ多くの仕事が残っている。


 それでも、以前とは違っていた。


 後回しにしていた仕事へ、少しずつ手をつけられるようになっている。


 井上は、次の項目を開いた。


 障害対応手順の更新。


 これも、以前から気になっていた仕事だった。


「……次は、これやな」


 日々の運用を止めずに、少しずつ改善を進める。


 基盤運用課では、そんな新しい仕事の進め方が始まっていた。


     *


 八月中旬。


 株式会社カナメの基盤運用課では、毎朝の確認作業について、自動化の試行が続いていた。


 これまで人が画面を開き、一つずつ確認していた項目。


 その情報を自動で取得し、一覧にまとめる仕組みを試している。


 ただし、まだ手動確認は続けていた。


 自動で取得した結果が正しいかどうか。


 そして、異常が発生したときにも必要な情報を確認できるか。


 その検証が終わるまでは、正式な切り替えを行わない方針だった。


     *


「……今日も一致しとるな」


 井上修一は、比較結果を確認していた。


 藤井直人と小川悠斗も、オンライン会議に参加している。


「はい。通常時の結果については、今のところ問題ありません」


 藤井が答えた。


「そらよかった」


 井上は、資料を見直した。


「異常が出たときの確認は、どうなっとる?」


「そちらは、まだ実際の障害が発生していないので、過去の記録を使って確認しています」


「なるほど」


「ただ、取得する情報自体は、必要な項目を揃えられています」


「そうか」


 井上は、少し考えた。


「ほな、もう少し並行運用を続けようか」


「そうですね」


 藤井がうなずいた。


「正式に切り替える前に、手順書も更新しておきたいです」


「せやな」


 小川が、少し考えた。


「自動で取得できるようになったら、毎朝の作業はなくなるんですか?」


「全部なくなるわけちゃうで」


 井上が答えた。


「情報を集める作業は減るけど、その結果を確認する仕事は残るからな」


「なるほど」


「異常があったら、誰かが調べなあかんし」


「そうですね」


 藤井も続けた。


「自動で情報を集められても、それが正常かどうかを判断する必要はありますから」


 小川は、うなずいた。


「……自動化したら、全部任せられるわけではないんですね」


「せやな」


 井上は、少し笑った。


「まずは、人がせんでもええ作業を減らすところからやな」


     *


 数日後。


 基盤運用課では、障害対応手順の見直しが始まっていた。


 これまで、日々の運用を優先する中で、手順書の更新が後回しになっていた。


 実際の対応方法と、資料に書かれている内容が少し違っているところもある。


「……これ、前の手順のままやな」


 藤井が、資料を確認していた。


「どこ?」


 井上が尋ねた。


「この障害対応のところです」


 藤井は、画面を共有した。


「今は確認する順番が変わっているんですが、手順書には以前の方法が残っています」


「なるほど」


 井上は、資料を見直した。


「……確かに、今は先にこっちを見るな」


「そうですね」


 小川が、少し考えた。


「これ、初めて対応する人やったら、手順書どおりに進めてしまいますよね」


「せやな」


 井上がうなずいた。


「それは、あんまりよくないな」


 藤井も、少し笑った。


「普段から対応していると、つい覚えている手順で進めてしまいますから」


「そうなんよな」


 井上は、少し考えた。


「ほな、一回、今の手順を整理し直そうか」


「わかりました」


「小川君にも、確認してもらいたいな」


「僕ですか?」


「せやで」


 井上は、少し笑った。


「今の手順を覚えとる人だけで見ても、わかりにくいところに気づかへんかもしれんし」


「なるほど」


「初めて対応するつもりで、読んでみてほしいねん」


「わかりました」


     *


 小川は、更新された手順書を確認していた。


 障害が発生したときに、最初に確認する項目。


 ログの確認方法。


 関係するシステムの状態。


 そして、どのような場合に井上や藤井へ連絡するべきか。


 内容を一つずつ追いながら、気になるところをメモしていく。


「……ここ、ちょっとわからんな」


 小川は、藤井へ連絡した。


「藤井さん、少しよろしいでしょうか?」


「はい。どうしました?」


「この手順なんですけど、異常が見つかった場合、次にどちらを確認するのかわからなくて」


「ああ、そこですね」


 藤井は、資料を確認した。


「確かに、少しわかりにくいですね」


「はい」


「実際には、エラーの種類によって確認するところが変わるんです」


「なるほど」


 小川は、少し考えた。


「それなら、エラーの種類ごとに分けて書いた方がわかりやすいかもしれませんね」


「そうですね」


 藤井は、うなずいた。


「その方が、初めて対応する人も迷わずに済みそうです」


「ありがとうございます」


 小川は、修正案をまとめた。


 普段から対応している人にとっては、当たり前のことだった。


 しかし、初めて読む人にとっては、判断に必要な情報が不足していた。


 その違いに気づけたことが、小川には少しうれしかった。


     *


 八月下旬。


 井上は、藤井と小川を交えて、今後の運用体制について話していた。


「毎朝の確認作業の方は、だいぶ形になってきたな」


 井上が言った。


「そうですね」


 藤井が答えた。


「並行運用の結果も安定していますし、手順書の更新も進んでいます」


「そらよかった」


 井上は、少し考えた。


「ほな、そろそろ正式な切り替えを考えようか」


「はい」


「ただ、異常が出たときの対応は、引き続き人が判断する形でいきたい」


「そうですね」


 藤井がうなずいた。


「情報の取得だけを自動化して、確認と判断は今までどおり行う形ですね」


「せやな」


 井上は、資料を確認した。


「それと、今まで藤井が中心になって担当しとった確認作業の一部を、小川君にもお願いしたいと思っとる」


 小川が、少し姿勢を正した。


「僕ですか?」


「せやで」


「はい。ぜひ、やってみたいです」


 井上は、少し笑った。


「最初は藤井と一緒に確認してもらうけどな」


「わかりました」


 藤井もうなずいた。


「最初は一緒に進めましょう」


「よろしくお願いします」


 小川は、少し笑った。


 四月に基盤運用課へ異動してから、まだ数か月。


 最初は一次調査やアプリの運用支援が中心だった。


 しかし、今は手順書の見直しにも関わり、新しい確認作業も任されようとしている。


 少しずつ、自分が担当できる仕事が増えていた。


     *


 その日の午後。


 井上は、西田へ運用改善の状況を報告していた。


「毎朝の確認作業について、自動化の試行が進んどるで」


「ほう」


 西田が、資料を確認した。


「ええやん。毎朝の作業が減るんやな」


「せやな」


「どのくらい減りそう?」


「まだ正式な切り替え前やから、正確な数字はこれからやけど」


 井上は、少し考えた。


「情報を集める作業は、だいぶ減らせそうや」


「なるほど」


「ただ、異常があったときの確認や判断は、今までどおり人が担当する」


「せやな」


 西田がうなずいた。


「そこは無理に自動化せんでもええと思うで」


「そう思っとる」


 井上は、次の資料を開いた。


「それと、今まで後回しにしとった障害対応手順の更新も進めとる」


「ほう」


「小川にも確認してもろて、初めて対応する人でもわかるように整理し直しとるんよ」


「それはええな」


 西田は、少し笑った。


「人が増えた効果も出てきたんやな」


「せやな」


 井上がうなずいた。


「前は、日々の運用だけで手いっぱいやったから」


「そうやろな」


「今は、少し先のことも考えられるようになってきたわ」


 西田は、うなずいた。


「それが大事やと思うで」


     *


「ただ、改善した分の時間を、また別の仕事に使っとるんやな」


 西田が言った。


 井上は、少し笑った。


「せやねん」


「結局、忙しいままちゃうん?(笑)」


「……まあ、そうとも言うな(笑)」


 二人は笑った。


「でも、前とはちょっと違うんよ」


 井上が言った。


「どういうこと?」


「前は、今日の仕事を終わらせるだけで精いっぱいやった」


「うん」


「今は、明日以降の仕事を楽にするためのこともできるようになってきた」


「なるほどな」


 西田は、少し考えた。


「それは、ええ変化やな」


「せやろ?」


「せやな」


 井上は、少し笑った。


「まあ、まだまだ改善したいところはあるけどな」


「ぼちぼち進めてくれたらええで」


「了解」


     *


 八月末。


 金目は、井上から基盤運用課の状況を聞いていた。


「最近、運用の方はどうですか?」


 金目が尋ねた。


「少しずつ改善できるようになってきました」


 井上が答えた。


「そらよかった」


「毎朝の確認作業を自動化する取り組みも進んでいます」


「ほう」


「まだ完全に切り替えたわけではないんですけど、情報を集める作業は減らせそうです」


「なるほど」


 金目は、少し考えた。


「ほな、仕事が楽になるんかな?」


「そうですね」


 井上は、少し笑った。


「ただ、空いた時間で、今まで後回しにしとった手順書の整備も進めとるんです」


「……ああ、なるほど」


「それに、小川にも少しずつ仕事を任せられるようになってきました」


「そらええな」


 金目は、うなずいた。


「仕事を減らした分、また別の仕事ができるようになったんやな」


「せやな」


 井上が答えた。


「前は、そこまで手が回らんかったから」


「なるほどな」


 金目は、少し笑った。


「……なんか、うちの会社らしいな(笑)」


 井上も笑った。


「そうかもしれんな(笑)」


     *


 会議を終えた井上は、改善項目の一覧を開いた。


 毎朝の確認作業。


 自動取得の試行は、順調に進んでいる。


 障害対応手順。


 古くなっていた資料の更新が進んでいる。


 そして、小川の担当業務。


 一次調査や運用支援に加えて、新しい確認作業も少しずつ任せ始めている。


 以前なら、どれも後回しになっていたかもしれない。


 しかし、今は違う。


 日々の仕事を進めながら、次の仕事を考える時間ができていた。


「……まだまだあるな」


 井上は、少し笑った。


 改善項目の一覧には、まだ多くの仕事が残っている。


 それでも、以前のように、ただ積み上がっているだけではなかった。


 一つずつ、手をつけられるようになっている。


 井上は、次の改善項目を開いた。


 今すぐ対応する必要はない。


 しかし、いつか必要になる仕事だった。


「……ほな、次はこれやな」


 株式会社カナメの基盤運用課では、今日もシステムを支える仕事が続いている。


 その仕事は、少しずつ変わり始めていた。


 目の前の仕事を終わらせるだけではなく、これからの仕事を進めやすくするために。


 そして、新しい仲間へ、少しずつ仕事を任せていくために。


 人が増えたことで生まれた余裕は、次の仕事を育てるための時間になっていた。

お読みいただきありがとうございます。旭月です。


今回は、基盤運用課の業務改善についてのお話でした。


日々のシステム運用を支える井上たち。


毎朝の確認作業や問い合わせ対応、障害発生時の調査など、普段からさまざまな仕事を担当しています。


そして今回は、以前から後回しになっていた改善活動に、ようやく手をつけられるようになりました。


さて、今回取り組んだのは、毎朝の確認作業の自動化です。


毎日同じ画面を開き、決まった項目を確認する。


こうした作業は、一見すると自動化しやすそうに見えます。


しかし、実際には少し注意が必要です。


画面に表示されている数字が、正常なのか異常なのか。


それは、単純に一定の値と比較すれば判断できるとは限りません。


時間帯や処理状況によって、正常な値が変わることもあります。


そこで今回は、いきなりすべてを自動化するのではなく、まず情報を取得する部分から取り組むことにしました。


取得した結果を人が確認し、異常があれば調査する。


そして、しばらくは従来の手動確認と並行して運用する。


新しい仕組みが正しく動いていることを確かめながら、少しずつ切り替えていくわけです。


……便利そうだからといって、いきなり全部任せてしまうのは、少々怖いですからね(笑)。


さて、今回描きたかったのは、自動化の技術そのものではありません。


**自動化によって生まれた時間を、何に使うのか。**


こちらが、今回の中心となる話です。


仕事を効率化すれば、作業にかかる時間は減ります。


しかし、その時間を単に別の作業で埋めてしまうだけでは、いつまで経っても忙しいままかもしれません。


もちろん、空いた時間を別の仕事に使うこと自体が悪いわけではありません。


大切なのは、その時間を何のために使うのか、ということなのでしょう。


今回の井上たちは、後回しになっていた障害対応手順の整備に取り組みました。


日々の運用に追われていると、手順書の更新はつい後回しになりがちです。


普段から対応している人であれば、古い手順書でも、自分の経験をもとに仕事を進められるかもしれません。


しかし、初めて対応する人にとっては、そうはいきません。


書かれている内容が古かったり、判断に必要な情報が不足していたりすれば、そこで作業が止まってしまいます。


そこで今回は、小川にも手順書を確認してもらいました。


経験の浅い人だからこそ、気づけることもあります。


普段から仕事をしている人にとっては当たり前でも、初めて読む人にはわからない。


そんな違いを見つけることも、立派な改善活動なのだと思います。


そして、もう一つ。


今回は、小川が新しい仕事を任されることになりました。


四月に基盤運用課へ異動してから、少しずつ経験を積んできた小川。


今度は、これまで藤井が中心となって担当していた確認作業の一部を引き受けることになります。


もちろん、最初から一人で任せるわけではありません。


藤井と一緒に確認しながら、少しずつ担当範囲を広げていきます。


これもまた、時間に余裕ができたからこそ取り組めることなのでしょう。


人を育てるには、教える側にも時間が必要です。


目の前の仕事で手いっぱいの状態では、なかなか新しい仕事を任せる余裕も生まれません。


しかし、少しずつ仕事を整理し、時間を確保できるようになれば、次の人へ仕事を渡す準備も進められます。


さて、今回の井上。


西田から「結局、忙しいままちゃうん?」と聞かれていました。


……確かに、空いた時間で別の仕事を始めているのですから、忙しさそのものはあまり変わっていないのかもしれません(笑)。


ただ、以前とは仕事の中身が違います。


これまでは、今日の仕事を終わらせることで精いっぱいだった。


しかし、今は明日以降の仕事を進めやすくするための改善にも取り組める。


この違いは、決して小さくないと思います。


仕事の量が同じでも、将来の負担を減らすための仕事ができるようになれば、少しずつ状況は変わっていくはずです。


そして、改善を重ねることで、さらに新しいことへ取り組む余裕が生まれるかもしれません。


もっとも、改善した分だけ新しい仕事を増やしてしまえば、結局いつまでも忙しいままですが。


……カナメの社員たちは、どうもそういうところがありそうですね(笑)。


さて、2032年も後半に入りました。


カナメでは、今年も新しい仲間が増え続けています。


人が増えれば、できる仕事も増えます。


しかし、その人たちが力を発揮できるようにするには、仕事の進め方を整え、育成するための時間も必要になります。


今回の基盤運用課のように、目の前の仕事をこなすだけでなく、少し先のことまで考えられる組織になっていくといいですね。


次回も、引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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