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カナメ -君はどう考える?-  作者: 旭月
第三章 任せた先にあるもの
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小さな決裁

 2032年6月。


 株式会社カナメでは、四月に発足した新しい開発体制が、少しずつ日常のものになっていた。


 大型案件を担当する開発一課。


 小型案件を担当する開発二課。


 そして、既存システムの保守・運用を担う基盤運用課。


 それぞれの課が、開発部マネージャーの西田のもとで仕事を進めている。


 開発二課長となった尾崎達也も、新しい役割に少しずつ慣れ始めていた。


 もっとも、課長になったからといって、急に仕事の内容がすべて変わるわけではない。


 これまでも、案件の進行を任されてきた。


 ただ、今はその先にある判断まで、自分の責任になっている。


     *


「尾崎さん、ちょっとよろしいですか?」


 六月上旬。


 上田拓海から連絡が入った。


「ええで。どうした?」


「既存のお客様から、機能追加の相談が来ていまして」


「ほう」


 尾崎は、案件一覧を開いた。


「どんな内容?」


「一覧画面に、検索条件を一つ追加してほしいそうです」


「なるほど」


 上田は、画面を共有した。


 顧客が利用している業務システムの一覧画面。


 現在は、日付や担当者など、いくつかの条件でデータを絞り込めるようになっている。


 そこへ、新しい検索条件を一つ追加したいという依頼だった。


「実装自体は、それほど難しくないと思います」


「そうなん?」


「はい。既存の検索処理を少し変更すれば、対応できそうです」


「なるほどな」


 尾崎は、資料を確認した。


「……納期は?」


「それが、今週中にお願いしたいそうで」


「……今週中か」


 尾崎は、少し考えた。


 開発二課では、現在も複数の小規模案件を進めている。


 それぞれの作業量は大きくない。


 しかし、短期間で完結する案件が多いため、予定は細かく組まれていた。


「今の担当で、対応できそう?」


「実装だけなら、何とかなると思います」


「……実装だけなら、か」


「はい」


 尾崎は、少し笑った。


「ほな、まず全体の作業量を確認しようか」


「わかりました」


「岡元にも相談して、テストまで含めて見積もってほしい」


「承知しました」


 尾崎は、案件一覧に確認事項を追加した。


 小さな機能追加。


 しかし、引き受けるかどうかは、まだ決められなかった。


     *


 その日の午後。


 尾崎は、上田と岡元遥を交えて、追加要望について確認していた。


「ほな、今のところどうや?」


 尾崎が尋ねた。


「実装については、半日程度で対応できると思います」


 上田が答えた。


「既存の検索処理に条件を追加するだけなので」


「なるほど」


 岡元が、資料を確認した。


「ただ、テストはもう少しかかると思う」


「そうなん?」


 尾崎が尋ねた。


「うん。検索条件を増やしたら、今ある条件との組み合わせも確認せなあかんから」


「なるほど」


「例えば、日付だけで検索した場合と、担当者だけで検索した場合」


「うん」


「そこに新しい条件を組み合わせても、正しく結果が出るか確認する必要があるやろ?」


「確かに」


 上田がうなずいた。


「そこまでは、まだ詳しく見ていませんでした」


 岡元は、少し笑った。


「実装だけなら簡単でも、確認することは増えるからな」


「そうですね」


 尾崎は、作業見積もりを確認した。


 実装。


 テスト。


 リリース準備。


 そして、顧客への確認。


「……今週中に全部終わらせるんは、ちょっと厳しいな」


 尾崎が言った。


「そうですね」


 上田が答えた。


「今の案件の予定を動かせば、できなくはないと思いますが」


「なるほど」


 尾崎は、少し考えた。


「でも、ほかのお客様の仕事を遅らせるわけにもいかんしな」


「はい」


 岡元もうなずいた。


「無理に進めて、確認が足らんまま出すのも避けたいですね」


「せやな」


 尾崎は、資料を閉じた。


「ほな、今週中の対応は、いったん難しいという前提で考えようか」


「わかりました」


「ただ、お客様が何でそんなに急いどるんか、確認したいな」


 上田がうなずいた。


「営業部に聞いてみます」


「頼むわ」


     *


 翌日。


 尾崎は、営業部の松井慎吾と話していた。


「松井さん、ちょっと確認したいことがあるんやけど」


「はい。何でしょうか?」


「この検索条件の追加、今週中に必要いう話なんやけど」


「はい」


「何でそんなに急いどるん?」


 松井は、顧客とのやり取りを確認した。


「来週から、社内の運用手順を変更されるそうなんです」


「なるほど」


「その際に、特定の条件に合うデータを抽出する必要があるそうで」


「……抽出?」


 尾崎が聞き返した。


「はい」


「画面で検索したいんやなくて?」


「そこなんですが」


 松井は、少し考えた。


「お客様としては、必要なデータをすぐに取り出せるようにしたい、というのが本来の目的のようです」


「なるほどな」


 尾崎は、画面を見直した。


 一覧画面への検索条件追加。


 それは、顧客から依頼された方法だった。


 しかし、本当に必要なのは、その検索機能そのものではないのかもしれない。


「……ちょっと待ってな」


 尾崎は、既存システムの機能一覧を開いた。


「このシステム、データの出力機能あったよな?」


「はい。CSV形式で出力できる機能があります」


「せやんな」


 尾崎は、少し考えた。


「その出力機能を使って、必要なデータだけ取り出せへんかな」


 松井も、少し考えた。


「なるほど。確かに、それなら目的を満たせる可能性がありますね」


「せやろ?」


「ただ、お客様がその方法で問題ないかは、確認が必要ですね」


「もちろんや」


 尾崎は、うなずいた。


「あと、データの取り扱いも確認せなあかんしな」


「そうですね」


「ほな、一回こっちで実現できるか調べるわ」


「お願いします」


「そのうえで、お客様に提案してもらえたら助かる」


「承知しました」


     *


 尾崎は、上田へ連絡した。


「上田、ちょっとええ?」


「はい」


「昨日の検索条件の件なんやけど」


「はい」


「お客様が本当に必要なんは、特定のデータを抽出することらしいねん」


「なるほど」


「ほんで、既存の出力機能を使えへんかなと思ってな」


 上田は、少し考えた。


「……それなら、別の方法もありそうですね」


「せやろ?」


「今の出力機能で、どこまで条件を指定できるか確認してみます」


「頼むわ」


「あと、出力したデータをお客様側で加工する必要があるかも確認します」


「それもお願い」


 尾崎は、少し考えた。


「岡元にも、出力結果の確認方法を相談してもらえる?」


「わかりました」


「今週中にできる方法があるか、もう一回整理しよう」


「承知しました」


     *


 その日の夕方。


 上田から、調査結果が届いた。


 既存のデータ出力機能を利用すれば、必要な項目をCSV形式で取り出すことができる。


 ただし、顧客が求める条件で絞り込むには、出力後に一部のデータを加工する必要があった。


 その作業を、カナメ側で対応することは可能だった。


 また、出力するデータの範囲を限定すれば、既存のシステムへの変更も必要ない。


 岡元も、出力結果の確認方法を整理していた。


「……なるほどな」


 尾崎は、資料を確認した。


 正式な検索機能の追加には、実装とテストの時間が必要になる。


 しかし、今回の目的がデータの抽出であれば、別の方法で対応できる可能性がある。


 もちろん、顧客がその方法を受け入れるかどうかは、まだわからない。


 データの取り扱いについても、確認が必要だった。


 それでも、選択肢は一つ増えた。


「……ほな、これで相談してみようか」


 尾崎は、松井へ連絡した。


 顧客が求めているのは、検索条件そのものなのか。


 それとも、来週からの業務に必要なデータなのか。


 その違いを確認することが、次の仕事だった。


     *


 翌朝。


 尾崎達也は、上田拓海と岡元遥を交えて、前日の調査結果を確認していた。


「ほな、もう一回整理しようか」


 尾崎が言った。


「はい」


 上田は、資料を共有した。


「既存の出力機能を使えば、必要なデータは取得できます」


「うん」


「ただ、お客様が指定された条件に合わせるには、出力後に一部加工する必要があります」


「なるほど」


 尾崎は、作業内容を確認した。


「システム自体の変更は必要ないんやな?」


「はい。既存機能の範囲で対応できます」


「そら助かるな」


 岡元が、確認項目を表示した。


「ただ、出力したデータに漏れがないかは確認した方がええと思う」


「せやな」


「条件に合うデータだけを抽出できているか。それと、対象外のデータが混ざっていないか」


 尾崎がうなずいた。


「そこは大事やな」


 岡元は続けた。


「あと、出力したファイルをどう渡すかも確認が必要やと思う」


「なるほど」


「お客様のデータやから、普段の受け渡し方法と同じでええか確認しときたい」


「せやな」


 尾崎は、メモを取った。


 作業そのものは、それほど難しくない。


 しかし、顧客のデータを扱う以上、確認するべきことはある。


「ほな、技術的には対応できそうやな」


「はい」


 上田が答えた。


「今の案件にも、大きな影響は出さずに進められると思います」


「了解」


 尾崎は、少し考えた。


「じゃあ、松井さんに提案内容を共有しようか」


     *


「松井さん、ちょっとええですか?」


 尾崎が連絡した。


「はい。どうされました?」


「昨日の件、対応方法を整理できたんよ」


「ありがとうございます」


 尾崎は、資料を共有した。


「今回は、既存の出力機能を使って、必要なデータを用意する方法を考えとる」


「なるほど」


「正式な検索機能の追加は、別で対応する形やな」


 松井は、資料を確認した。


「来週からの業務には、こちらの方法で間に合いそうですね」


「せやな。ただ、お客様がそれで問題ないかは確認してほしい」


「承知しました」


「あと、データの受け渡し方法と、今回の作業が契約の範囲内かどうかもお願いできる?」


「はい。そこも確認します」


 松井は、少し考えた。


「ちなみに、正式な機能追加については、どのくらいで対応できそうでしょうか?」


「まだ確定はできへんけど、今の案件の予定を見ながら、改めて見積もりたいと思っとる」


「わかりました」


「今回の暫定対応と、正式な開発は分けて考えたいねん」


「そうですね」


 松井がうなずいた。


「では、まずお客様に今回の方法をご説明します」


「お願いします」


     *


 その日の午後。


 松井から連絡が届いた。


『お客様へご提案したところ、今回の方法で問題ないとの回答をいただきました』


 尾崎は、内容を確認した。


 顧客は、来週からの業務で必要なデータが取得できればよいと考えていた。


 検索画面への機能追加は、急いで実施する必要はない。


 また、データの受け渡し方法についても、既存の契約で定められた方法を利用できることが確認された。


 今回の作業についても、契約上の取り扱いが整理されている。


「……よし」


 尾崎は、上田と岡元へ連絡した。


「お客様から了承もろたで」


「よかったです」


 上田が答えた。


「ほな、予定どおり進めようか」


「はい」


「上田はデータの出力と加工をお願い」


「承知しました」


「岡元は、出力結果の確認を頼むわ」


「了解」


 尾崎は、少し考えた。


「作業が終わったら、結果を共有してな。問題なければ、松井さんに引き渡そう」


「わかりました」


 担当が決まった。


 尾崎は、案件管理表を更新した。


 今回は、自分でデータを出力するわけではない。


 自分で一つひとつの結果を確認するわけでもない。


 必要な作業を整理し、担当者を決め、確認するべきことを明確にする。


 そして、その結果に責任を持つ。


 それが、今の自分の仕事だった。


     *


 数日後。


「尾崎さん、出力処理が完了しました」


 上田から連絡が入った。


「了解。ありがとう」


「必要な条件でデータを抽出できています」


「確認の方は?」


「岡元さんにお願いしています」


「了解」


 しばらくして、岡元からも連絡が届いた。


「確認終わったで」


「どうやった?」


「対象のデータは揃っとるし、対象外のデータも混ざってへん」


「そらよかった」


「件数と内容も、確認した範囲では問題ないで」


「了解」


 尾崎は、確認結果を見直した。


 必要な作業は完了している。


 確認結果も記録されている。


 顧客への受け渡し方法も、すでに確認済みだった。


「ほな、完了でええな」


「うん」


 岡元が答えた。


「上田もありがとうな」


「いえ。お疲れさまでした」


 尾崎は、松井へ連絡した。


「松井さん、データの準備ができました」


「ありがとうございます」


「確認結果も問題ありません。決めた方法でお渡しできる状態です」


「承知しました。では、お客様へご連絡します」


「お願いします」


 こうして、顧客が来週から必要としていたデータは、予定どおり用意された。


     *


 六月下旬。


 尾崎は、今回の対応記録を整理していた。


 当初の依頼は、検索条件の追加だった。


 しかし、顧客が本当に必要としていたのは、特定の条件に合うデータを取り出すことだった。


 その目的を確認したことで、既存の機能を利用するという選択肢が生まれた。


 もちろん、正式な機能追加の依頼がなくなったわけではない。


 尾崎は、そちらを別の案件として登録した。


 必要な機能。


 開発工数。


 テスト範囲。


 そして、実施時期。


 それらは、改めて松井と相談することになる。


「……よし、これでええな」


 尾崎は、対応記録を保存した。


 そこへ、田村から連絡が入った。


     *


「尾崎、ちょっとええ?」


「ええで」


「この前の小さい案件、どうなった?」


「ああ、無事に終わったで」


「そらよかった」


 田村は、少し笑った。


「検索機能の追加やったっけ?」


「最初はそうやったんやけどな」


 尾崎は、今回の経緯を説明した。


 顧客が必要としていたのは、来週からの業務で使うデータだったこと。


 既存の出力機能で対応できたこと。


 正式な機能追加は、別途進めることにしたこと。


「……なるほどな」


 田村がうなずいた。


「ええ判断やったと思うで」


「そうか?」


「せやな。お客様が何をしたいんか確認して、今できる方法を選んだんやろ?」


「まあ、そうやな」


「それに、無理して今週中に機能追加せんでも済んだわけやし」


「せやねん」


 尾崎は、少し笑った。


「ほかの案件の予定も動かさんで済んだわ」


「そらよかった」


 そこへ、西田も会議に加わった。


「なんや、二人で何の話しとるん?」


「この前の案件の話や」


 田村が答えた。


「ほう」


 尾崎が経緯を説明すると、西田はうなずいた。


「まあ、上田が方法を調べてくれたし、岡元が確認してくれたからできたんやけどな」


 尾崎が言った。


「それでええやん」


 西田が答えた。


 西田が笑った。


「自分で全部やっとったら、また仕事が集中するやろ?」


「……それは困るな(笑)」


 三人は笑った。


     *


「しかし、尾崎も課長らしなってきたな」


 田村が言った。


「そうか?」


「せやで」


「まだ二か月やけどな」


 尾崎は、少し笑った。


「でも、前より考えることは増えたわ」


「そらそうやろな」


 西田がうなずいた。


「今までは、案件をどう進めるかを中心に考えとった」


 尾崎が続けた。


「今は、誰に任せるかとか、ほかの案件に影響せえへんかとか、そういうことも考えなあかん」


「せやな」


「……まあ、課長やからな(笑)」


 田村が、思わず笑った。


「……便利な言葉やな、それ(笑)」


 尾崎も笑った。


「前に田村が言うとったやろ(笑)」


「せやったな(笑)」


 西田は、二人のやり取りを見ながら笑っていた。


 四月に開発課を二つへ分けた。


 それまで田村が担っていた判断の一部を、尾崎へ任せることになった。


 そして今、尾崎も自分の課の仕事を、自分で判断して進めている。


 もちろん、まだ慣れないこともある。


 それでも、少しずつ新しい体制が機能し始めていた。


     *


 会議を終えた尾崎は、開発二課の案件一覧を開いた。


 今週中に終わる案件。


 来週から始まる案件。


 顧客から確認待ちになっている案件。


 そして、今回新しく登録した検索機能の追加案件。


 どれも、それほど大きな仕事ではない。


 しかし、一つひとつに判断が必要だった。


 何を優先するのか。


 誰に任せるのか。


 いつまでに進めるのか。


 そして、何を確認して完了とするのか。


 尾崎は、次の案件を開いた。


「……さて、次はこれか」


 少し笑った。


 以前は、自分で作業を進めることが仕事だった。


 今は、ほかの社員が仕事を進められるようにすることも、自分の仕事になっている。


 その違いを、少しずつ実感し始めていた。


 株式会社カナメの開発二課では、今日も小さな判断が積み重ねられている。


 その一つひとつが、会社の仕事を前へ進めていた。

お読みいただきありがとうございます。旭月です。


今回は、開発二課長となった尾崎のお話でした。


四月の組織再編から二か月。


新しい体制にも少しずつ慣れ、尾崎も課長として仕事を進めるようになってきました。


さて、今回お客様から依頼されたのは、検索条件を一つ追加してほしいという、比較的小さな機能追加でした。


実装だけを考えれば、それほど難しい仕事ではありません。


しかし、実際にはテストやリリースの準備も必要になります。


既存の案件との兼ね合いもありますし、希望された納期に間に合わせようとすれば、ほかの仕事に影響が出る可能性もありました。


……小さな変更だからといって、簡単に引き受けてよいわけではないんですね。


そこで尾崎たちは、お客様がなぜその機能を必要としているのかを確認しました。


すると、本当に必要だったのは検索機能そのものではなく、翌週からの業務で使うデータを取り出すことだったわけです。


結果として、既存の出力機能を利用することで、当面の目的を満たせることがわかりました。


もちろん、これはどんな依頼にも当てはまる話ではありません。


お客様が指定した方法でなければ目的を達成できない場合もありますし、代替案を提案するなら、相手の同意が必要です。


今回は、松井が顧客との調整を担当し、契約条件やデータの取り扱いも確認しています。


開発側が勝手に「こちらの方が簡単だから」と決めたわけではありません。


このあたりは、大切にしたかったところです。


さて、今回の尾崎。


実は、自分でコードを書いたわけでも、データを加工したわけでもありません。


上田が実現方法を調べ、岡元が品質を確認し、松井が顧客との合意を取りました。


尾崎が担当したのは、必要な判断を行い、仕事を割り振り、結果を確認することでした。


課長になる前の尾崎なら、自分で作業していたかもしれません。


しかし、今は課全体の仕事を進める責任があります。


自分が手を動かすことよりも、ほかの社員が適切に仕事を進められるようにすることが求められる場面も増えてきたわけです。


もっとも、仕事を任せれば責任がなくなるというわけではありません。


誰に任せるのか。


何を確認してもらうのか。


どのような状態になれば完了と判断するのか。


そうしたことを決めるのも、任せる側の仕事です。


**仕事を任せることは、判断を放棄することではない。**


今回は、そんな尾崎の変化を描いてみました。


そして、もう一つ。


今回の題名は「小さな決裁」です。


大きな経営判断や、会社の将来を左右する決断ではありません。


日々の仕事の中で行われる、ほんの小さな判断です。


しかし、その判断を間違えれば、無理な納期を約束してしまったり、品質を落としてしまったりするかもしれません。


反対に、必要なことを確認して適切に判断できれば、お客様の目的を満たしながら、ほかの仕事への影響も抑えられます。


会社を動かしているのは、社長の大きな決断だけではありません。


こうした小さな判断の積み重ねも、会社を支えているのでしょう。


さて、最後には田村と西田も登場しました。


尾崎が「課長やからな」と言い、田村が「便利な言葉やな」と返す場面。


……以前は田村が言っていた言葉でしたね(笑)。


今度は尾崎が、同じ立場になりました。


こうして、仕事だけでなく、責任を担う人も少しずつ増えていきます。


もちろん、尾崎もまだ課長になって二か月。


これから迷うことも、判断に困ることもあるでしょう。


それでも、自分で考え、必要な人に相談しながら決めていく。


その積み重ねが、管理職としての経験になっていくのだと思います。


さて、2032年も半ばに差しかかりました。


カナメでは、今年も採用活動が続いています。


年末には三十五名体制を目指しており、これからさらに新しい仲間が増える予定です。


新しい組織が少しずつ機能し始めた一方で、会社としての仕事も増えていきます。


次回は、そんな成長の中で見えてくる、また別の仕事のお話です。


引き続き、お付き合いいただければ幸いです。

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