↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カナメ -君はどう考える?-  作者: 旭月
第三章 任せた先にあるもの
PR
75/134

先輩になった日

 2032年5月。


 株式会社カナメでは、新年度が始まって一か月が経っていた。


 四月には、四名の新卒社員が入社した。


 開発部も三課体制へ移行し、大型案件を担当する開発一課、小型案件を担当する開発二課、そして基盤運用課が、それぞれの仕事を進めている。


 開発一課に所属する柴崎真帆も、社会人二年目になっていた。


 昨年の今頃は、開発環境を動かすだけでも苦労していた。


 今では、小さな機能修正を任され、実装方針について自分の考えを説明できるようになっている。


 しかし、今年は昨年と少し違うことがあった。


 自分より後に入社した社員がいる。


 つまり、柴崎も先輩になったのだった。


     *


「柴崎さん、少しよろしいでしょうか?」


 午前中。


 柴崎のもとに、新卒社員から連絡が入った。


「うん。どうしたの?」


「あの、開発環境の設定なんですけど、うまく動かなくて……」


「ああ、環境構築?」


「はい」


「じゃあ、ちょっと画面を見せてもらえる?」


「ありがとうございます」


 オンライン会議に切り替えると、新卒社員が画面を共有した。


 設定ファイル。


 実行したコマンド。


 そして、表示されたエラーメッセージ。


 柴崎は、画面を確認した。


「……ああ、そこね」


「何かわかりますか?」


「うん。私も去年、同じところで困ったんだよ」


「そうなんですか?」


「そうそう」


 柴崎は、少し笑った。


「最初、何が悪いのか全然わからなくて」


 新卒社員も、少し笑った。


「僕も、昨日からずっと調べているんですけど……」


「そっか」


 柴崎は、画面を見直した。


「ちなみに、今までどこまで確認した?」


「えっと、手順書を見ながら設定して、エラーが出たので調べてみました」


「うん」


「それで、設定ファイルを少し変更したんですけど、まだ動かなくて」


「なるほど」


 柴崎は、変更内容を確認した。


「……ここ、ちょっと気になるな」


「どこでしょうか?」


「この設定なんだけど、手順書と違う値になってるよね」


「あ、本当ですね」


「何か理由があって変えた?」


「調べた記事に、こうすると動くって書いてあったので……」


「なるほど」


 柴崎は、少し考えた。


「じゃあ、まず元の設定に戻してみようか」


「はい」


 新卒社員が設定を戻した。


 もう一度、コマンドを実行する。


 しかし、エラーは消えなかった。


「……まだ駄目ですね」


「そうだね」


 柴崎は、画面を見ながら考えた。


 去年、自分も同じところでつまずいた。


 あのとき、上條に何を教えてもらっただろう。


 確か、設定ファイルだけでなく、実行している環境そのものを確認したはずだった。


「……あ、そうだ」


 柴崎が言った。


「今使っている環境のバージョン、確認してもらっていい?」


「はい」


 新卒社員がコマンドを実行した。


 表示された数字を見て、柴崎はうなずいた。


「これだね」


「……バージョンですか?」


「うん。手順書で指定されているものと違うみたい」


「あ、本当だ……」


「じゃあ、まずそこを合わせてみようか」


「はい!」


 しばらくして、開発環境が正常に起動した。


「……動きました!」


「よかった」


 柴崎は、少し笑った。


「ありがとうございます!」


「ううん。私も去年、同じことやったから」


 新卒社員が笑った。


「そうなんですね」


「うん。だから、あんまり気にしなくて大丈夫だよ」


「ありがとうございます」


 会議が終わった。


     *


 柴崎は、少し大きく息をついた。


「……ふう」


 問題は解決した。


 しかし、思っていたよりも時間がかかった。


 自分で設定するだけなら、もっと早く気づけたかもしれない。


 けれど、相手が何をして、どこで困っているのかを確認しながら説明するとなると、話は違う。


「……教えるのって、難しいな」


 柴崎は、小さくつぶやいた。


 そして、上條亮介へ連絡した。


     *


「上條さん、少しよろしいでしょうか?」


「はい。どうしました?」


「今日、新卒の方から環境構築について相談されたんですけど」


「ああ、そうなんですね」


「はい。無事に動いたんですが……」


 柴崎は、少し考えた。


「……教えるのって、難しいですね」


 上條が、少し笑った。


「そうですね」


「自分ではわかっているつもりだったんですけど、説明しようとすると、なかなか言葉が出てこなくて」


「ありますよね(笑)」


「はい」


 柴崎は、少し笑った。


「去年、上條さんに教えていただいたときは、もっと簡単に説明してもらっていた気がします」


「そうですか?」


「はい」


 上條は、少し考えた。


「でも、柴崎さんも、ちゃんと原因を見つけて解決できたんですよね?」


「はい」


「それなら、まずは十分だと思いますよ」


「そうでしょうか?」


「はい。最初から上手に説明できる人ばかりではありませんから」


 柴崎は、うなずいた。


「……そうですね」


「それに、教えるときって、自分がどこまで理解しているのかもわかるんですよ」


「なるほど」


「普段は何となくできていることでも、理由を聞かれると説明できないことがありますから」


「……確かに、そうでした」


 柴崎は、少し笑った。


「今回も、途中で自分が何を確認すればいいのか、わからなくなりかけました」


「そういう経験も、大切だと思います」


「ありがとうございます」


 上條は、少し間を置いた。


「ただ、無理に全部教えようとしなくても大丈夫ですよ」


「はい」


「わからないところがあれば、僕にも聞いてください」


 柴崎は、少し安心したように笑った。


「ありがとうございます」


     *


 五月中旬。


 営業部では、大本恭平が、新卒社員から仕事について質問を受けていた。


 今年の新卒社員は、開発部を中心に配属されている。


 営業部への新しい配属はなかった。


 しかし、全社研修の一環として、ほかの部署の仕事について学ぶ機会が設けられていた。


 その中で、大本にも質問が回ってきたのだった。


「大本さん、営業の仕事って、普段どんなことをされているんですか?」


「……ええ質問やな(笑)」


 大本は、少し笑った。


 隣には、松井慎吾と小坂千尋がいる。


「大本君、ちゃんと説明できる?」


 小坂が尋ねた。


「……たぶん(笑)」


 松井も、少し笑った。


「では、お願いします」


「はい」


 大本は、少し考えた。


「営業の仕事いうたら、まずお客様の困りごとを聞くことやと思います」


 新卒社員がうなずいた。


「はい」


「ほんで、うちの会社で何ができるかを考えるんです」


「なるほど」


「ただ、お客様が言うたことを、そのまま開発部へ渡すわけではないんですよ」


「そうなんですか?」


「せやねん」


 大本は、少し考えた。


「例えば、何かの機能を追加してほしいって相談されたとするやろ?」


「はい」


「でも、なんでその機能が必要なんかを確認せな、ほんまにそれを作ったらええんかわからへんねん」


「なるほど」


「場合によっては、別の方法の方がええこともあるし」


 松井がうなずいた。


「そうですね」


 大本は、続けた。


「それに、うちで対応できるかどうかも、開発部と相談せなあかん」


「はい」


「無理な約束したら、お客様にも迷惑かけるからな」


 小坂が、少し笑った。


「……大本君、ちゃんと覚えてるね」


「そら、覚えてますよ(笑)」


「八月の案件のこと?」


「そうです」


 大本は、少し笑った。


「結局、受注できへんかったんですけど、あのとき勉強になったんで」


 新卒社員が、少し考えた。


「……営業って、契約を取るだけじゃないんですね」


「せやな」


 大本は、うなずいた。


「お客様と会社の間で、ちゃんとできることを考える仕事やと思います」


 松井が、少し笑った。


「いい説明ですね」


「ありがとうございます」


 大本は、少し照れたように笑った。


     *


 研修を終えたあと。


 小坂が、大本へ声をかけた。


「大本君、ちゃんと説明できてたね」


「ほんまですか?」


「うん。よかったと思うよ」


「ありがとうございます」


 大本は、少し笑った。


「でも、説明しながら思ったんですけど」


「うん?」


「俺も、まだまだ知らんこと多いなって」


 松井がうなずいた。


「それでいいと思いますよ」


「そうなんですか?」


「はい。全部知っている必要はありませんから」


 松井は、少し笑った。


「わからないことを確認して、自分で考えられるようになればいいんです」


「……なるほど」


 大本は、少し考えた。


「……なんか、それ去年も聞いた気がします(笑)」


 小坂が笑った。


「松井さん、いつも同じこと言ってるからね(笑)」


「大切なことですから」


 松井も笑った。


 大本は、二人を見ながら少し笑った。


 一年前。


 自分は、営業の仕事についてほとんど知らなかった。


 今でも、まだ経験は浅い。


 しかし、少なくとも、自分がこの一年で学んだことを、ほかの人へ説明できるようにはなっていた。


 それが、少しうれしかった。


     *


 五月中旬。


 柴崎真帆は、昼休みに大本恭平と話していた。


 二人とも、社会人二年目。


 部署は違うものの、同期として時々こうして近況を話している。


「……そういえば、大本君も新入社員に仕事を教えたんだって?」


 柴崎が尋ねた。


「教えたいうほどでもないで」


 大本は、少し笑った。


「営業部の仕事を説明しただけや」


「でも、すごいね」


「何が?」


「私、後輩に説明するの、結構難しかったから」


「……ああ、それはわかるわ」


 大本がうなずいた。


「俺も、何から説明したらええんかわからんかった」


「そうなんだ」


「せやねん。自分ではわかっとるつもりでも、いざ説明するとなるとな」


 柴崎は、少し笑った。


「そうそう。それ」


「ほんで、説明しながら思ったんやけど」


「うん?」


「……俺、松井さんに教えてもろたこと、そのまま話しとるなって(笑)」


 柴崎が笑った。


「私も、上條さんに教えてもらったことを思い出してた」


「やっぱりそうなるんやな」


「うん」


 柴崎は、少し考えた。


「上條さんって、すぐに答えを教えるんじゃなくて、どう考えたのか聞いてくれることが多いんだよね」


「ああ、それ松井さんもや」


 大本が笑った。


「質問したら、質問で返ってくるねん(笑)」


「そうなんだ(笑)」


「でも、何も教えてくれへんわけちゃうんよな」


「うん。そうだね」


 柴崎は、うなずいた。


「わからないことは教えてくれるし、考え方も一緒に整理してくれる」


「せやな」


 大本は、少し考えた。


「……ただ質問で返したらええ、いう話でもないんやろな」


「うん。私もそう思う」


「相手が何も知らんかったら、考えようがないもんな」


「そうだね」


 二人は、少し笑った。


 去年は、教えてもらう側だった。


 今でも、わからないことは多い。


 それでも、自分たちが教わってきたことを、少しずつ次の誰かへ伝えられるようになっていた。


     *


 五月下旬。


 柴崎のもとへ、再び新卒社員から連絡が入った。


「柴崎さん、少しご相談してもよろしいでしょうか?」


「うん。大丈夫だよ」


「ありがとうございます」


 今回は、開発環境の設定ではなかった。


 担当している小さな機能修正についての相談だった。


「実装の進め方で、少し迷っていまして」


「そっか。じゃあ、一緒に見てみようか」


 オンライン会議に切り替えると、新卒社員が画面を共有した。


 既存システムの画面修正。


 表示する項目を一つ追加するという、比較的小さな変更だった。


「ここまでは確認したんですが、この先がわからなくて」


 新卒社員は、調べた内容を説明した。


 既存の画面構成。


 データの取得方法。


 そして、変更が必要になりそうな箇所。


 柴崎は、画面を見ながらうなずいた。


「うん。結構調べたね」


「ありがとうございます」


「前より、ちゃんと整理できてると思う」


 新卒社員は、少しうれしそうに笑った。


「ただ、ここからどう変更したらいいのか、迷ってしまって」


「なるほど」


 柴崎は、資料を確認した。


 表示項目を追加するだけなら、画面側の変更で済むようにも見える。


 しかし、実際にはデータの取得処理も関係していた。


「ちなみに、この項目の値って、どこから取ってくる予定?」


「えっと、今の取得処理には含まれていないので、追加する必要があると思います」


「そうだね」


「ただ、取得処理を変更すると、ほかの画面にも影響するかもしれなくて」


 柴崎は、うなずいた。


「うん。そこに気づいたのはいいと思う」


「ありがとうございます」


 柴崎は、少し考えた。


 自分が答えを教えることはできる。


 しかし、今回は新卒社員も、必要な情報をかなり調べている。


 それなら、もう少し自分で考えてもらってもよさそうだった。


「……じゃあ、今わかっていることを整理してみようか」


「はい」


「変更したいのは、画面に項目を一つ追加することだよね」


「はい」


「そのためには、表示する値が必要になる」


「そうですね」


「でも、今の取得処理には、その値が含まれていない」


「はい」


「じゃあ、どうしたらいいと思う?」


 新卒社員は、少し考えた。


「……取得処理に項目を追加する必要があると思います」


「うん」


「ただ、ほかの画面でも同じ処理を使っているので、影響がないか確認した方がいいですよね」


「そうだね」


 柴崎は、少し笑った。


「じゃあ、まずその処理を使っているところを調べてみようか」


「はい!」


「そのうえで、どう変更するか考えよう」


「わかりました」


 新卒社員は、メモを取った。


     *


 しばらくして。


 新卒社員は、関連する画面と処理を調べ終えた。


「柴崎さん、確認できました」


「うん。どうだった?」


「同じ処理を使っている画面が、ほかにも二つありました」


「なるほど」


「ただ、今回追加する項目を返しても、既存の画面には影響しないと思います」


「どうしてそう思ったの?」


「今の画面では、必要な項目だけを使っているので、取得する値が増えても表示には影響しないはずです」


 柴崎は、少し考えた。


「うん。考え方は合ってると思う」


「ありがとうございます」


「ただ、取得する値が増えることで、処理の負荷が変わる可能性はあるよね」


「あ……そうですね」


「そこも確認してみようか」


「はい」


 新卒社員は、もう一度資料を見直した。


 柴崎は、必要なところだけ補足した。


 どこを確認すればよいのか。


 何を調べれば判断できるのか。


 そして、どのような点に注意するべきなのか。


 すべてを代わりに考えるのではなく、判断するための材料を一緒に整理していった。


     *


 その日の夕方。


 新卒社員から、再び連絡が届いた。


『確認した内容をもとに、実装方針を整理しました。お時間のあるときに確認いただけますでしょうか』


 柴崎は、資料を開いた。


 変更する箇所。


 関連する処理。


 影響範囲。


 そして、確認するべきテスト項目。


 まだ不足しているところはある。


 しかし、最初に相談されたときよりも、ずいぶん整理されていた。


「……すごいな」


 柴崎は、小さくつぶやいた。


 そして、返信した。


『確認しました。方向性はよいと思います。テスト項目について、もう少し一緒に確認しましょう』


 少しして、返事が届いた。


『ありがとうございます! よろしくお願いします!』


 柴崎は、少し笑った。


 去年の自分も、こんなふうに相談していたのだろうか。


 上條に何度も質問し、教えてもらいながら、少しずつ仕事を覚えてきた。


 今度は、自分がその役割を担っている。


 まだ、上手に教えられている自信はない。


 それでも、少しずつできるようになってきた気がした。


     *


 五月末。


 柴崎は、上條亮介へ新卒社員の様子を報告していた。


「上條さん、この前相談してくれた新卒の方なんですが」


「はい」


「自分で実装方針を整理できるようになってきました」


「それはよかったですね」


 上條は、少し笑った。


「柴崎さんが、ちゃんと見てくれたんですね」


「いえ、そんな」


 柴崎は、少し照れたように笑った。


「私も、まだわからないことが多いですし」


「それは、僕も同じですよ」


「そうなんですか?」


「もちろんです」


 上條は、少し笑った。


「知らないことなんて、いくらでもありますから」


「……そうですよね」


「でも、柴崎さんは、自分がわかるところを教えて、わからないところは確認しているんですよね?」


「はい」


「それでいいと思います」


 柴崎は、少し考えた。


「……私も、少しは先輩らしくなれたでしょうか」


 上條は、少し笑った。


「もう十分、先輩だと思いますよ」


「……ありがとうございます」


 柴崎は、少し照れたように笑った。


     *


 会議を終えた柴崎は、作業一覧を確認していた。


 自分が担当している機能修正。


 レビューをお願いしている変更。


 そして、新卒社員からの相談。


 一年前には、そこに後輩からの相談という項目はなかった。


 今は、自分の仕事を進めながら、誰かの仕事を支えることもある。


 もちろん、まだすべてを任せられるわけではない。


 難しい問題があれば、上條や田村に相談する必要がある。


 それでも、自分が教わったことを、少しずつ次の誰かへ伝えられるようになっていた。


 柴崎は、少し笑った。


「……先輩、か」


 まだ、少し不思議な響きだった。


 けれど、悪い気はしなかった。


 株式会社カナメでは、今年も新しい仲間が仕事を覚え始めている。


 そして、その仕事を支える人たちも、少しずつ増えていた。


 誰かに教わったことが、次の誰かへ渡されていく。


 そんな小さな積み重ねが、今日も会社の中で続いていた。

お読みいただきありがとうございます。旭月です。


今回は、社会人二年目になった柴崎と大本のお話でした。


昨年四月に入社した二人も、気がつけば先輩になっています。


……時間が経つのは早いものですね(笑)。


もっとも、本人たちはまだまだ教わることの方が多いようですが。


さて、今回の中心人物は柴崎でした。


昨年は、開発環境を動かすところから苦労していた柴崎も、今では小さな機能修正を任されるようになっています。


そして今回は、初めて後輩から仕事の相談を受けることになりました。


自分で作業するだけなら、何となくわかっている。


ところが、いざ人に説明しようとすると、うまく言葉にできない。


こうした経験をしたことがある方も、いらっしゃるのではないでしょうか。


実は、人に何かを教えるというのは、なかなか難しいものです。


自分が理解していることと、相手が理解できるように説明することは、必ずしも同じではありません。


普段は当たり前のように行っている作業でも、なぜそうするのかと聞かれると、説明に困ることがあります。


そして、その理由を改めて考えることで、自分自身の理解が深まることもあるのでしょう。


**教えることは、自分が学び直すことでもある。**


今回は、そんなことを考えながら書いていました。


さて、後半では柴崎が、後輩に「どうしたらいいと思う?」と尋ねていました。


これは、これまで上條から何度も聞かれてきた問いでもあります。


ただし、何でも質問で返せばよいというわけではありません。


必要な知識がなければ、そもそも考えることができませんからね。


知らないことは教える。


わからないところは一緒に確認する。


そのうえで、本人が考えられるところは、できるだけ任せてみる。


大切なのは、答えを教えないことではなく、次に同じような問題が起きたとき、自分で考えられるようになることなのだと思います。


……もっとも、何を聞いても質問で返されたら、少々困ってしまいますけどね(笑)。


そして、今回は大本にも登場してもらいました。


営業部の仕事について新卒社員へ説明する場面です。


一年前には、営業の仕事をほとんど知らなかった大本。


今では、お客様の困りごとを聞き、開発部と相談しながら、実現できることを考える仕事だと説明できるようになっています。


以前、小坂が大型案件の受注を見送ったときの経験も、しっかり残っているようでした。


自分が経験したことを、自分の言葉で誰かへ説明できる。


それも、一つの成長なのでしょう。


さて、今回もう一つ描きたかったのは、教わったことが次の誰かへ受け継がれていく姿です。


上條が柴崎に教えたこと。


松井が大本に教えたこと。


それが、今度は新しく入社した社員たちへ伝わっていく。


もちろん、まったく同じ言葉や方法で教える必要はありません。


それぞれが自分の経験を重ねながら、自分なりの教え方を見つけていけばよいのだと思います。


そして、今回の上條。


柴崎から「少しは先輩らしくなれたでしょうか」と尋ねられ、「もう十分、先輩だと思いますよ」と答えていました。


なかなか、いい先輩ですね。


ただ、上條自身も、最初から人に教えることが得意だったわけではないでしょう。


誰かに教え、相談を受け、ときには自分もわからないことを調べる。


そうした経験を積み重ねながら、上條もまた成長しているのだと思います。


先輩になるというのは、何でも知っている人になることではありません。


自分ができることを少しずつ増やしながら、誰かの仕事を支えられるようになること。


そして、困ったときには、自分も誰かに助けてもらえること。


そんな関係が、自然に広がっていくといいですね。


さて、カナメでは今年も新しい仲間が加わり、社員たちがそれぞれの仕事を覚え始めています。


今後も中途採用が続き、さらに多くの仲間を迎えることになるでしょう。


人が増えれば、仕事の進め方も、人と人との関わり方も変わっていきます。


そんな中で、柴崎や大本がどのように成長していくのか。


これからも見守っていただければ幸いです。


次回も、どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。