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カナメ -君はどう考える?-  作者: 旭月
第三章 任せた先にあるもの
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新しい組織図

 2031年4月1日。


 大阪・本町。


 株式会社カナメの本町事業所では、夕方の全社説明会が始まろうとしていた。


 この日は、新年度の初日だった。


 午前中には、二人の新卒社員を迎える入社式が行われた。


 午後には、それぞれの部署で新入社員の受け入れや交流が進められていた。


 そして、夕方。


 社員たちは、会議室と執務スペースに集まっていた。


 普段はフルリモートで働いているカナメだが、今日は全社員が出社している。


 新年度の会社の方針を、全員で確認するためだった。


     *


「……これで、資料は全部揃いましたね」


 高瀬が、会議室の前方で資料を確認していた。


 新しい組織図。


 各部門の役割。


 新たに設置する管理職の責任範囲。


 そして、もう一つの説明資料。


 金目と西田も、最後の確認をしている。


「準備、ありがとうございます」


 金目が言った。


「いえ。最終確認だけお願いします」


 高瀬は、進行表を開いた。


「本日の説明は、大きく二点です」


「新しい組織体制について。それから、もう一点です」


「せやな」


 金目がうなずいた。


「組織の方は、西田さんにも説明してもらおうか」


「了解」


 西田が答えた。


「開発部の変更点は、俺から話すわ」


「お願いします」


 高瀬は、次の資料を確認した。


「もう一点については、社長から考え方をご説明いただいたあと、私から詳細をご案内します」


「それでええと思うで」


 金目は、少し笑った。


「細かい計算まで俺が説明したら、途中で間違えそうやしな(笑)」


 西田が笑った。


「それは高瀬さんに任せとき」


「せやな(笑)」


 三人は、最後の確認を終えた。


 今回の組織再編は、突然決まったものではない。


 社員が増え、仕事が増え、それぞれの担当範囲も広がってきた。


 以前は金目が直接判断していた仕事を、西田や高瀬へ任せるようになった。


 しかし、今度は西田に判断が集まる場面が増えていた。


 現場の仕事を進めながら、部門全体の判断も行う。


 その負担を減らすため、開発部では役割の整理を進めてきた。


 そして、新年度に合わせて、正式に組織を分けることになったのである。


     *


「皆さん、お疲れさまです」


 金目が、社員たちへ声をかけた。


 会議室と執務スペースに集まっていた社員たちが、前方へ目を向ける。


「今日は、朝からいろいろありがとうございました」


 金目は、少し笑った。


「新しい仲間も増えましたし、今年もまた、ええ一年にしていきたいと思っとります」


 大本と柴崎も、ほかの社員たちと一緒に話を聞いていた。


「さて、今日は新年度の会社の体制について、少し説明させてもらいます」


 金目は、資料を切り替えた。


「おかげさまで、うちも少しずつ人が増えてきました」


「以前は、俺がいろんなところに顔出して、あれこれ決めとったんですけどね」


 西田が、横から口を挟んだ。


「今も結構顔出しとるで(笑)」


「……まあ、そうやな(笑)」


 社員たちから笑いが起きた。


「でも、さすがに全部を俺が見続けるわけにもいかへんし、それぞれの部署で判断できることは、任せていきたいと思っとります」


 金目は、次の資料を表示した。


「そこで、4月1日付で組織を再編しました」


 画面に、新しい組織図が表示された。


     *


「まず、開発部です」


 金目が言った。


「ここは、西田さんから説明してもらおうか」


「了解」


 西田が、前へ出た。


「今回、開発部を二つの課に分けることになりました」


 資料には、新しい組織構成が表示されている。


 開発部。


 その下に、開発課と基盤運用課。


「開発課は、新規開発や追加開発、要件整理を中心に担当します」


「基盤運用課は、既存システムの保守・運用、品質管理、基盤の維持を中心に担当します」


 西田は続けた。


「もちろん、仕事を完全に分けるわけちゃいます。案件によっては、両方の課が協力することもあります」


 社員たちがうなずいた。


「ただ、日々の判断や担当者の調整については、それぞれの課で進められるようにしたいと思っています」


 西田は、次の資料を表示した。


「開発課長は、田村さん」


「基盤運用課長は、井上さんにお願いすることになりました」


 田村と井上の名前が、組織図に表示された。


 金目が口を開いた。


「お二人とも、よろしくお願いします」


「よろしく頼むわ」


 田村が答えた。


「よろしくお願いします」


 井上も続いた。


 西田は、少し笑った。


「二人とも、急に仕事が全部変わるわけちゃうからな」


 田村が笑った。


「まあ、そうやな」


「これまでやってきた仕事を続けながら、課の中の判断もお願いしたいと思っとる」


 井上が尋ねた。


「判断の範囲については、共有してもらった内容でええんやね?」


「せやで」


 西田はうなずいた。


「課の中で完結することは、基本的に任せる。部門全体に影響することや、予算に関わることは俺に相談してほしい」


「了解」


 田村が答えた。


「まあ、最初は相談することもあると思うけどな」


「そら、ええで」


 西田は笑った。


「いきなり全部決めろとは言わへんから」


 金目も口を開いた。


「わからんことがあったら、相談したらええんです」


「ただ、何でも上に確認せなあかんようやったら、課を作った意味がありませんからね」


 田村が、少し笑った。


「……それはそうやな」


「なので、まずは自分らで考えて、必要なところを相談してもらえたらと思っています」


 井上もうなずいた。


「わかりました」


     *


 続いて、営業部の説明に移った。


「それから、今回新しく営業部を設置しました」


 金目が言った。


 資料には、営業部という名前が加わっている。


「これまで営業は社長直轄で進めてきましたけど、会社として正式な部門にすることにしました」


 松井と小坂が、資料を確認している。


 大本も、少し姿勢を正した。


「既存のお客様への対応も、新しいお客様への提案も、これからさらに増やしていきたいと思っとります」


 金目は、少し間を置いた。


「で、営業部長なんですけど……」


 資料が切り替わった。


 営業部長。


 金目。


「……当面、俺が兼任します(笑)」


 西田が、すかさず口を挟んだ。


「そこは今までと変わらんな(笑)」


「せやねん」


 金目は、少し笑った。


「まあ、営業部として独立した意味はあるんやけど、指揮系統は今までと一緒やな」


 小坂が、少し笑った。


「じゃあ、今までどおり社長に相談すればいいんですね?」


「せやで」


「わかりました」


 松井もうなずいた。


「承知しました」


 金目は続けた。


「もちろん、ずっと俺が兼任するつもりではありません」


「ただ、今の段階では、無理に誰かを部長にするより、俺が見とった方がええと思っています」


 少し間を置いた。


「営業をまとめられる人材については、これから考えていきたいですね」


 高瀬がうなずいた。


 会社が大きくなったことで、新しく必要になる役割もある。


 営業部の新設は、そのことを改めて明らかにしていた。


     *


「最後に、業務部です」


 金目が言った。


「こちらは、今までどおり高瀬さんにお願いしています」


 高瀬が、軽く頭を下げた。


「引き続き、よろしくお願いします」


 金目は、資料を見直した。


 営業部。


 開発部。


 業務部。


 三つの部門が、組織図に並んでいる。


「これで、ひとまず新しい体制が整いました」


 金目は、少し笑った。


「もちろん、組織図を変えたからって、急に仕事が楽になるわけちゃいます」


「ただ、誰が何を判断するのか、以前よりわかりやすくなったと思います」


 西田がうなずいた。


「そうやな」


「これからも、必要に応じて見直していきたいと思っています」


 金目は、社員たちを見渡した。


「皆さん、よろしくお願いします」


 社員たちがうなずいた。


「よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします」


 金目は、少し笑った。


「ほな、組織の話はここまでにしましょうか」


 高瀬が、次の資料を準備した。


「続いて、もう一点お知らせがあります」


 金目は、画面を切り替えた。


「……こっちは、皆さんにとって、ちょっとええ話やと思いますよ(笑)」


     *


「今年度から、賞与制度を導入することにしました」


 一瞬、会場が静かになった。


「……えっ?」


 最初に声を漏らしたのは、小川だった。


「賞与って、ボーナスですか?」


「せやで。ボーナスや(笑)」


「おお!」


 小川が、思わず声を上げた。


 小坂も、うれしそうに笑った。


「えっ、やった! それはうれしいですね!」


 一方、上田は少し首をかしげていた。


「……あの、社長。一つ聞いてもええですか?」


「もちろん」


「それって、毎月の給料はどうなるんですか?」


 その質問に、何人かが顔を上げた。


「……ああ、確かに」


 井上がうなずいた。


「今まで年俸制やったもんな」


 松井も、少し考えていた。


「賞与ができるということは、支払い方が変わるんでしょうか」


 田村が口を開いた。


「まあ、それも気になるけど、結局なんぼもらえるん?」


 小坂が笑った。


「田村さん、早いですよ(笑)」


「いや、そこ大事やろ(笑)」


 周囲に笑いが起きた。


 金目は、社員たちの反応を見ながら、少し笑った。


「まあ、気になるところはそこやろな」


 少し間を置いた。


「ほな、ちょっと聞いてみようか」


     *


「仮に、賞与が三か月分出るって言われたら、どう?」


 金目が尋ねた。


 小川が、すぐに答えた。


「めっちゃうれしいです!」


 中野も笑った。


「それはありがたいですね」


「せやろ?」


 金目は、少し笑った。


「でもな、今までの年間給与を十五分割して、十二か月分を毎月の給料、残り三か月分を賞与にするって話やったら?」


 上田が、すぐに反応した。


「……それ、毎月の給料が減りますよね?」


「せやで。二割減るな」


 井上が苦笑した。


「結局、年間でもらえる金額は変わらへんやん」


「せやねん」


 金目はうなずいた。


「賞与三か月分いうても、今までの給料を分け直しただけやったら、総額は一緒や」


 田村が笑った。


「……なんや、それやったら意味ないやん(笑)」


「せやろ?」


 金目も笑った。


「俺も、そんな制度やったらあんまりうれしないわ」


 社員たちは、金目の次の言葉を待っていた。


 金目は、資料を切り替えた。


 そこには、短い文章が表示された。


『毎月の基本給は維持。賞与は別途支給』


「なので、今回の制度では、今まで毎月もらっていた基本給は減らしません」


 上田が、少し安心したようにうなずいた。


「そのうえで、月額基本給の一か月分を基準に、評価に応じて増減する賞与を追加します」


「……えっ?」


 小坂が、目を丸くした。


「じゃあ、年収が純粋に増えるってことですか?」


「せやで。標準評価で、会社の業績も想定どおりやったら、そうなる」


「……おお!」


 中野が、思わず声を上げた。


 小川も笑った。


「それ、めっちゃありがたいですね!」


 田村が、少し笑った。


「……なるほどな。一か月分でも、そっちの方がええわ(笑)」


 井上もうなずいた。


「月給が変わらへんのは、ありがたいな」


 松井は、少し考えてから口を開いた。


「既存の給与とは別に、成果を評価していただけるということですね」


「そういうことや」


 金目がうなずいた。


「小坂さんも、新しいお客様を探してくれとるし、松井さんも既存のお客様を支えてくれとる」


「開発部も、業務部も、みんなそれぞれ仕事してくれとるやろ?」


 三宅が、少し笑った。


「ありがとうございます」


 金目は、社員たちを見渡した。


 驚いた顔。


 安心した顔。


 まだ少し考え込んでいる顔。


 反応は、それぞれ違っていた。


 それでも、会場の空気は、先ほどより少し明るくなっていた。


     *


「それと、今回の賞与制度に合わせて、給与の考え方も少し整理します」


 金目は、次の資料を表示した。


『基本給は期待値。賞与は結果』


「これまでは年俸制で、一年間の給与を十二分割して支払っていました」


「でも、これからは毎月の基本給と賞与を分けて考えます」


 金目は、少し間を置いた。


「俺な、基本給は期待値やと思っとるんです」


「これから皆さんに何を任せたいか。どんな役割を担ってほしいか。その期待をもとに、毎月の基本給を決めます」


「ほんで賞与は、この一年、どんな成果を出してくれたか。その結果を評価して還元するものです」


 社員たちは、静かに話を聞いていた。


「もちろん、頑張ったから必ず給料が上がるとか、成果が出たら何でも賞与になるとか、そんな単純な話ではありません」


「でも、これからの期待と、これまでの結果は、分けて考えたいんです」


 金目は、少し笑った。


「今までの給料を賞与って名前に付け替えることが、目的ちゃいますからね」


 少し間を置いた。


「会社が利益を出せるようになってきた。その成果を、みんなに還元したいんよ」


「もちろん、最初から二か月分、三か月分と出せたらええんですけど、会社としても無理はできません」


「なので、まずは一か月分を基準に始めさせてください」


 金目は、社員たちを見渡した。


「皆さんが頑張ってくれた結果、会社が儲かる。ほんで、その利益をまた皆さんに還元する」


「そういう会社にしていきたいんです」


 そして、少し笑った。


「……まあ、もっと賞与欲しいって人は、ぜひ会社が儲かるように協力してください(笑)」


 社員たちから笑いが起きた。


「ほな、詳しい計算方法や支給条件については、高瀬さんから説明してもらいます」


     *


 高瀬が、前へ出た。


「それでは、新しい給与体系と賞与制度についてご説明します」


 資料が切り替わった。


「まず、これまでの年俸制については、今年度から月額基本給を中心とした給与体系へ移行します」


「ただし、現在の毎月の基本給を減額するものではありません」


 上田が、改めてうなずいた。


「基本給の改定は、これまでと同じく毎年四月に行います」


「次に、賞与についてです」


 高瀬は、資料を切り替えた。


「算定期間は、毎年四月一日から翌年三月三十一日までの一年間です」


「今年度の成果を対象として、来年三月に評価を行います」


「その後、会社の業績と個人評価をもとに支給額を確定し、翌年四月二十日に支給する予定です」


 小川が、少し考えた。


「じゃあ、今年の十二月にもらえるわけではないんですね」


「はい。初回支給は、来年の四月になります」


「なるほど」


 高瀬は続けた。


「基準となる金額は、月額基本給の一か月分です。そこへ個人評価に応じた係数を適用します」


「また、会社の業績によって賞与原資が変動するため、必ず一か月分が支給されるというものではありません」


 社員たちがうなずいた。


「なお、支給日に在籍していることが支給条件となります」


「中途入社の方については、入社前の期間を算定対象から除外します」


「休職期間についても、規程に定める対象期間を控除して計算します」


 大本が、少し手を上げた。


「すみません。一つ質問してもよろしいでしょうか?」


「はい。どうぞ」


「僕たち新卒の場合は、今年の四月から来年三月までが対象になるということでしょうか?」


「はい。そのとおりです」


 高瀬はうなずいた。


「今年の四月一日入社ですので、通常どおり一年間在籍し、控除対象となる期間がなければ、算定期間は一年分になります」


「わかりました。ありがとうございます」


 柴崎も、資料を確認していた。


 入社初日から、初めて聞くことばかりだった。


 それでも、会社がどのように社員を評価し、報酬を決めるのかを知ることができた。


     *


 説明会が終わりに近づいた頃。


 金目が、再び前へ出た。


「ほな、今日はこれくらいにしましょうか」


 社員たちが、顔を上げた。


「新しい組織になって、いろいろ変わるところもあると思います」


「でも、俺がやりたいことは、そんなに変わってへんのです」


 金目は、少し笑った。


「みんなが仕事しやすいようにしたい。ほんで、ちゃんと利益を出して、還元できる会社にしたい」


「そのために、今回の組織再編と賞与制度を考えました」


 少し間を置いた。


「もちろん、まだまだ足らんところはあります」


「そこは、これから少しずつ整えていきたいと思っています」


 金目は、社員たちを見渡した。


「今年も一年、よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします!」


 あちこちから声が返ってきた。


 拍手が起きた。


 こうして、2031年度の全社説明会は終了した。


     *


 社員たちが帰り支度を始めたあと。


 金目と西田、高瀬は、会議室に残っていた。


「……いやあ、終わったな」


 金目が言った。


「お疲れさん」


 西田が、少し笑った。


「賞与の話、みんな喜んどったな」


「せやな」


 金目もうなずいた。


「よかったわ」


 高瀬が、資料を整理しながら口を開いた。


「ただ、会社としては新たな人件費負担になります」


「せやな」


「採用も進める予定ですので、資金繰りには注意が必要ですね」


「わかっとるで」


 金目は、少し笑った。


「ちゃんと稼がなあかんな」


 西田がうなずいた。


「まあ、開発部も頑張らなあかんな」


「よろしく頼むわ」


 金目は、もう一度組織図を眺めた。


 開発部には、二人の課長ができた。


 営業部は正式な組織になったが、まだ自分が率いている。


 業務部も、会社全体を支える仕事が増えている。


 そして、社員の成果を還元する制度も始まった。


「……まあ、少しずつ会社らしなってきたな」


 金目が言うと、西田が笑った。


「今までは会社ちゃうかったんか(笑)」


「そういう意味ちゃうわ(笑)」


 高瀬も、少し笑った。


 金目は、資料を閉じた。


「ほな、今年も頑張りますか」


 新しい組織。


 新しい給与体系。


 そして、新しく加わった仲間たち。


 株式会社カナメの2031年度が、静かに動き始めていた。

お読みいただきありがとうございます。旭月です。


今回は、2031年度の新しい組織体制と、賞与制度の創設についてのお話でした。


前回は新入社員二人の入社式でしたが、実は同じ日の夕方に、もう一つ大きな発表があったわけです。


まずは、組織再編。


カナメにも、とうとう営業部が誕生しました。


開発部には二つの課が設けられ、田村と井上が課長に就任しています。


もっとも、営業部長は金目が兼任。


……結局、そこは今までと変わっていませんね(笑)。


会社が大きくなると、単純に社員を増やすだけでは仕事が回らなくなってきます。


誰が何を判断するのか。


どこまで任せてよいのか。


困ったときには誰に相談するのか。


そうした役割や責任を整理することも、組織を運営するうえでは大切なのでしょう。


ただ、組織図を作っただけで、すべてが解決するわけではありません。


営業部のように、組織は作れても、それを任せられる人材がまだ足りないところもあります。


金目には、もうしばらく頑張ってもらう必要がありそうです(笑)。


さて、今回はもう一つ、賞与制度の創設がありました。


「今年からボーナスが出ます!」


そう聞けば、うれしい人もいれば、まず条件を確認したくなる人もいるでしょう。


特に、これまで年俸制だった会社では、毎月の給料がどうなるのか気になるところです。


今回、金目は少し意地悪な質問をしました。


賞与が三か月分出るとしても、これまでの年間給与を十五分割しただけなら、年間の総額は変わりません。


しかも、毎月の給料は減ってしまいます。


……それでは、あまりうれしくありませんよね(笑)。


そこでカナメが選んだのは、毎月の基本給を維持したまま、賞与を追加する方法でした。


基準は一か月分。


もちろん、最初から二か月分、三か月分と支給できれば、それに越したことはありません。


けれど、会社として無理をして制度を作っても、続けられなければ意味がありません。


今回の金目は、まずは継続できる範囲から始めることを選びました。


そして、今回の制度には、もう一つ大切な考え方があります。


**「基本給は期待値。賞与は結果の現れ」**


これからどのような役割を任せたいのか。


それを毎月の基本給に反映する。


一方で、この一年にどのような成果を出したのか。


それを賞与として評価する。


同じ人事評価でも、これからの期待と、これまでの成果では、見ている方向が違うわけです。


もちろん、現実の報酬制度は、そんなに単純なものではありません。


会社の業績もあれば、評価原資にも限りがあります。


全員の希望どおりに給与を上げられるわけでもありません。


それでも、社員が頑張ってくれた結果として会社が利益を出せたのなら、その成果を社員にも還元したい。


金目は、そう考えているのでしょう。


さて、今回の賞与制度は、発表したその日に支給されるわけではありません。


2031年4月から翌年3月までの成果を評価し、初回支給は2032年4月の予定です。


社員たちには、もう少し待ってもらうことになりますね。


……もっとも、金目としては、その前に賞与の原資をしっかり稼がなければなりません(笑)。


組織を整え、仕事を任せ、成果を還元する。


会社が成長するにつれて、経営者が考えなければならないことも増えていきます。


金目が目指している「楽に仕事が回る会社」への道のりは、まだまだ長そうです。


さて、新しい体制で始まった2031年度。


次回からは、再び社員たちの日々の仕事へと視点を戻していきたいと思います。


引き続き、お付き合いいただければ幸いです。

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