決めるという仕事
小川悠斗が専門学校の職員室を訪ねたのは、株式会社カナメのインターンを終えた翌日だった。
2029年3月の終わり。
1か月間のインターンで、小川は採用を見送られていた。
技術力は評価された。
調査も丁寧だった。
しかし、判断を終えるところに課題があると指摘された。
小川は、その言葉を何度も思い返していた。
悔しくないわけではない。
むしろ、悔しかった。
自分なりに考え、調べ、実装した。
それでも、採用には至らなかった。
ただ、何が足りなかったのかは理解できていた。
だからこそ、何もしないまま時間を過ごすつもりはなかった。
*
「先生、少し相談してもいいですか」
職員室の一角。
小川は、以前から技術指導を受けていた教員に声をかけた。
「おう、小川。インターン終わったんやったな」
「はい」
「どうやった?」
「採用は、見送りになりました」
先生は、少し表情を変えた。
「そうか」
「技術的には評価していただけたんですけど、仕事として判断を終えるのが遅いと言われました」
「……なるほどな」
先生は、少し考えた。
「自分では、どう思っとる?」
「そのとおりだと思います」
「ほう」
「改善案をいくつも考えて、比較するところまではできました。でも、どれを選ぶか決めるまでに時間を使いすぎました」
「なるほど」
「期限がある仕事なのに、いつまで検証するかを決めていなかったんです」
先生はうなずいた。
「そこまでわかっとるんやな」
「はい」
「ほな、どうしたい?」
小川は、迷わず答えた。
「実際の仕事で試したいです」
「……仕事で?」
「はい。次は、目的と期限を先に決めて、自分で判断して進めたいです」
先生は、少し笑った。
「ちょうどええ仕事があるわ」
「そうなんですか?」
「町工場のシステム開発や。今、俺が受けとる案件なんやけどな」
「どんなシステムですか?」
「製造工程の進捗を管理する仕組みや。今はホワイトボードとExcelでやっとるらしい」
「なるほど」
「受注が増えて、どの製品が今どこまで進んどるんか、わかりにくくなっとるんやと」
小川は、少し考えた。
「工程管理システムですか」
「そうや。まだ仕様を詰めとるところやから、ちょうどええかもしれんな」
先生は続けた。
「ただし、学校の課題とは違うで」
「はい」
「実際のお客さんがおる。期限も予算もあるし、作ったもんを使ってもらわなあかん」
「わかっています」
「俺が最終的な責任は持つけど、担当するところは自分で判断してもらうで」
小川は、はっきりとうなずいた。
「やらせてください」
先生は、少し笑った。
「……返事早いな」
「今回は、迷っている時間がもったいないので」
「なるほどな」
先生は、少し楽しそうに笑った。
*
4月。
小川は、先生と一緒に大阪府内の小さな金属加工会社を訪ねていた。
従業員は15人ほど。
工場の中では、加工機械が動き、作業者たちがそれぞれの工程を進めている。
事務所の壁には、大きなホワイトボードが掛けられていた。
製品名。
受注番号。
納期。
現在の工程。
それぞれが手書きで記されている。
工場長が説明した。
「今は、これで管理してるんですけどね」
先生がうなずいた。
「なるほど」
「受注が増えてきて、どれが今どこにあるんか、わからんようになることがありまして」
「そうなんですね」
「Excelにも入れてるんですけど、結局、現場に聞かんとわからんことが多いんですわ」
小川は、ホワイトボードを見ていた。
工程は、いくつかに分かれている。
材料の準備。
加工。
検査。
出荷。
製品によっては、途中に別の工程が入ることもあるらしい。
工場長は続けた。
「できれば、事務所からでも進捗が見えるようにしたいんです」
先生が尋ねた。
「どのくらい細かく把握したいですか?」
「細かく、ですか?」
「例えば、今どの機械で加工しているかまで必要なのか、それとも工程が終わったことがわかれば十分なのか」
工場長は、少し考えた。
「工程が終わったことがわかれば、ひとまず十分ですね」
「なるほど」
「今は、確認するために現場まで行かなあかんので」
小川は、メモを取った。
先生が、小川に視線を向けた。
「小川、ほかに確認しときたいことあるか?」
「はい」
小川は、工場長に尋ねた。
「進捗を更新するのは、どなたが担当される予定ですか?」
「現場の作業者ですね」
「なるほど。皆さん、普段からパソコンは使われていますか?」
「いや、ほとんど使わん人もおるな」
「そうなんですね」
「スマホなら使えると思うけど」
小川はうなずいた。
画面を作るだけでは、使ってもらえないかもしれない。
誰が、いつ、どうやって更新するのか。
そこまで考える必要があった。
小川は、もう一つ尋ねた。
「今回、絶対に必要なことって何でしょう?」
工場長は、少し考えた。
「……どの製品が、今どこまで進んでるんか、すぐわかることやな」
「ありがとうございます」
小川は、その言葉をメモした。
『目的:製品ごとの現在工程を、事務所から確認できること』
それが、今回の仕事の中心だった。
*
数日後。
小川は、先生の作業場で設計案をまとめていた。
工場で確認した内容をもとに、二つの方式を比較している。
一つ目は、設備と連携して進捗を自動的に更新する方式。
加工機械の稼働情報などを取得し、工程の進み具合を自動で反映する。
作業者の入力負担は小さい。
ただし、設備ごとの仕様確認や連携機能の開発が必要になる。
費用も、開発期間も大きくなる見込みだった。
二つ目は、作業者が工程の完了時に進捗を更新する方式。
作業者が画面から製品を選び、工程の完了を登録する。
自動更新ではないが、仕組みは比較的単純だった。
小川は、それぞれのメリットとデメリットを整理した。
先生が、資料を確認する。
「よう調べとるな」
「ありがとうございます」
「ほな、どっちがええと思う?」
小川は、少し考えた。
3月のインターンでも、似たような質問をされた。
あのときは、どちらにも欠点があることを理由に、検証を続けていた。
しかし、今回は違う。
小川は、資料の最初のページを開いた。
『今回の目的と制約条件』
顧客が必要としていること。
開発に使える期間。
予算。
現場での操作方法。
そして、どこまでできれば完成とするか。
小川は、先生を見た。
「今回は、二つ目の方式にします」
「ほう」
「作業者が工程の完了を登録する方式です」
「リアルタイムで自動更新できた方が、便利ちゃうんか?」
「便利だと思います」
「ほな、なんでそっちにせえへんの?」
「今回必要なのは、工程の進捗を事務所から確認できることです」
小川は、資料を示した。
「設備との連携まで作ると、予算と期限を超える可能性があります」
「なるほど」
「まずは、工程が完了したことを登録できれば、要求は満たせます」
先生は、少し考えた。
「でも、あとから自動化したくなるかもしれんで?」
「その可能性はあります」
「ほう」
「なので、あとから連携機能を追加できるように、進捗を登録する処理は分けて設計します」
先生はうなずいた。
「なるほどな」
「ただ、今回はそこまで作りません」
小川は、はっきり答えた。
先生は、少し笑った。
「……決めたんやな」
「はい」
「もうちょっと調べたら、もっとええ方法が見つかるかもしれんで?」
「あると思います」
「ほな?」
「でも、今回の条件では、この方法で十分だと判断しました」
先生は、しばらく小川を見ていた。
そして、うなずいた。
「……ほな、それでいこか」
「ありがとうございます」
「ただし、決めたからには、ちゃんと最後までやってもらうで」
「はい」
小川は、資料を保存した。
『採用方式:工程完了時の手動更新』
『判断理由:顧客要求を満たし、予算・期限内で実現可能』
『今回の対象外:設備との自動連携』
『判断の終了条件:要求・制約を満たす方式を選定し、主要リスクを確認した時点』
以前の小川なら、さらに別の方式を調べていたかもしれない。
しかし、今は違う。
必要なことは、既に確認した。
あとは、自分が決めた方法で仕事を進めるだけだった。
*
4月の終わり。
小川は、工程管理システムの実装を進めていた。
製品の登録。
工程の設定。
進捗の更新。
一覧表示。
必要な機能を、一つずつ作っていく。
もちろん、迷うことがなくなったわけではない。
実装方法を比較する場面もある。
しかし、以前のように、すべての可能性を調べようとはしなかった。
まず、目的を確認する。
次に、制約条件を整理する。
そして、必要なところまで調べたら判断する。
小川は、その進め方を意識していた。
ある日、先生が進捗を確認した。
「小川、どうや?」
「予定どおり進んでいます」
「そうか」
「基本的な機能はできました。今は、操作画面の確認をしています」
「なるほど」
先生は、画面を見た。
製品ごとの工程が一覧で表示されている。
作業者が工程を完了すると、次の工程へ進む。
仕組みは、比較的単純だった。
「……ええやん」
「ありがとうございます」
「前やったら、もっと機能増やそうとしてたんちゃうか?」
小川は、少し笑った。
「そうかもしれません」
「今は?」
「必要になったら、追加します」
先生も笑った。
「……ほな、次は実際に使ってもらわなあかんな」
「はい」
小川は、画面を閉じた。
技術的には、まだ改善できるところがある。
しかし、今はそこではない。
実際の現場で使えるかどうか。
それを確認する段階だった。
*
2029年5月。
小川悠斗は、先生と一緒に町工場を訪れていた。
工程管理システムの試験運用が始まる日だった。
工場の事務所には、先月まで使われていたホワイトボードが残っている。
製品名。
受注番号。
納期。
現在の工程。
手書きで管理されていた情報は、新しいシステムにも登録されていた。
「ほな、一回使ってみましょうか」
先生が言うと、工場長がうなずいた。
「お願いしますわ」
小川は、ノートパソコンを開いた。
製品の一覧が表示される。
それぞれの製品について、現在の工程と納期が確認できるようになっていた。
「こちらで製品を選んでいただいて、工程が終わったら完了を押してもらう形です」
「なるほど」
「そうすると、次の工程に進みます」
工場長が、画面を操作した。
「おお、変わったな」
「はい」
「これやったら、事務所からでも見られるんやな」
「そうです」
工場長は、少し笑った。
「ええやん」
小川も、少し安心した。
画面の表示。
データの登録。
工程の更新。
いずれも、予定どおり動いている。
試験運用は、順調に始まった。
*
数日後。
先生のもとに、工場長から連絡が入った。
『システムの進捗と、実際の作業が合わないことがあります』
先生は、小川に連絡した。
「小川、ちょっと確認してくれるか」
「はい」
小川は、登録されたデータを調べた。
工程の更新履歴。
操作した時刻。
登録された製品。
システム上の処理には、特に異常が見つからなかった。
しかし、工場長から送られてきた情報と照らし合わせると、確かに進捗が一致していない。
小川は、先生に報告した。
「更新処理そのものには、問題がなさそうです」
「ほう」
「ただ、実際の作業が終わっているのに、システム上では前の工程のままになっているものがあります」
「なるほど」
「更新操作が行われていない可能性があります」
先生は、少し考えた。
「ほな、現場で確認してみよか」
「はい」
*
翌日。
小川と先生は、再び工場を訪れた。
工場長に事情を説明し、実際の作業の流れを見せてもらう。
作業者たちは、それぞれの機械を操作していた。
材料を運ぶ人。
加工を終えた製品を検査へ回す人。
次の工程の準備をする人。
作業は、途切れることなく進んでいる。
小川は、工程が終わったあとの動きを観察した。
加工が終わる。
製品を次の場所へ運ぶ。
必要な記録を残す。
そして、次の作業に移る。
しかし、その途中でシステムを更新する人は少なかった。
小川は、作業者の一人に尋ねた。
「工程が終わったとき、システムの更新はされていますか?」
「ああ、あれな」
作業者は、少し困ったように笑った。
「忘れることあるわ」
「そうなんですね」
「作業終わったら、次の準備せなあかんからな」
「なるほど」
「あとでまとめて入れようと思って、そのまま忘れることもある」
小川はうなずいた。
システムは、正しく動いている。
しかし、使う人が更新しなければ、情報は古いままになる。
小川は、少し考えた。
通知機能を追加する方法もある。
一定時間更新されていない工程を検出して、作業者へ知らせる。
しかし、それで解決するだろうか。
そもそも、作業者はシステムの画面を常に見ているわけではない。
通知を出しても、確認されなければ意味がない。
小川は、もう一度現場を見渡した。
作業者たちは、工程を終えると製品を次の場所へ運んでいる。
その途中に、作業記録を置く共通の場所があった。
「……先生、ちょっといいですか」
「どうした?」
「更新する場所を変えた方がいいかもしれません」
「場所?」
「はい」
小川は、共通の作業記録台を指した。
「あそこなら、工程が終わったときに必ず立ち寄るみたいなので」
先生は、少し考えた。
「なるほどな」
「そこに端末を置けば、作業の流れの中で更新できると思います」
「ほう」
「今は、わざわざ別の場所で操作する必要があるので、忘れやすいんじゃないかと」
先生はうなずいた。
「……ええところに気づいたな」
*
その日の午後。
小川は、工場長に改善案を説明した。
「今のシステムは、工程が終わったあとに更新していただく必要があります」
「そうやな」
「ただ、現場の作業を見ていると、更新するために別の場所へ移動しないといけないことがわかりました」
「なるほど」
「そこで、工程が終わったときに立ち寄る作業記録台に、共用端末を置く方法を考えています」
工場長は、少し考えた。
「あそこやったら、確かに毎回通るな」
「はい」
「ただ、端末置く場所あるかな」
小川は、現場で確認した内容を示した。
「置き場所については、作業の邪魔にならない位置を確認したいと思っています」
「なるほど」
先生が口を開いた。
「まずは、今ある端末を使って試してみましょうか」
「それがええな」
工場長もうなずいた。
小川は、少し安心した。
新しい機能を追加する前に、今ある仕組みを使いやすくする。
それが、今回の改善案だった。
*
数日後。
工場では、作業記録台の近くに共用端末が設置された。
工程を終えた作業者が、その場で進捗を更新する。
最初は、操作に戸惑う人もいた。
小川は、画面の表示を少し見直した。
製品を選ぶ。
工程を確認する。
完了を登録する。
必要な操作を、なるべく少なくする。
そして、工場長と相談して、作業の手順にも更新操作を組み込んだ。
試験運用を続けるうちに、進捗の更新漏れは少しずつ減っていった。
工場長から、先生に連絡が入った。
『前より、だいぶ使いやすくなりました』
先生は、その内容を小川に伝えた。
「小川、よかったな」
「はい」
「最初の設計が間違っとったと思うか?」
小川は、少し考えた。
「いえ。今回の要求に対して、手動更新を選んだ判断は間違っていなかったと思います」
「ほう」
「ただ、実際の現場でどう使われるかという確認が足りませんでした」
先生はうなずいた。
「なるほどな」
「次からは、操作する人の動きも、もっと早い段階で確認したいです」
「それがええな」
小川は、少し笑った。
問題が起きた。
しかし、それだけで最初の判断が間違っていたとは限らない。
何が想定と違っていたのか。
どこを変えればよいのか。
それを考えて対応すればいい。
小川は、少しずつその感覚をつかみ始めていた。
*
5月の下旬。
工程管理システムの最終確認が行われた。
製品の登録。
工程の設定。
進捗の更新。
一覧表示。
それぞれの機能は、問題なく動いている。
工場長は、事務所のパソコンで画面を確認した。
「これやったら、いちいち現場まで聞きに行かんでもええな」
「はい」
小川が答えた。
「工程が完了したら、現場で更新していただく形になります」
「そうやな」
「更新が遅れると、画面の情報も古くなりますので、そこは運用で確認していただく必要があります」
工場長はうなずいた。
「わかった。現場にも伝えとくわ」
先生が、納品資料を確認した。
操作手順。
管理者向けの説明。
バックアップ方法。
問い合わせ先。
必要な資料も揃っている。
「ほな、これで納品としましょうか」
工場長がうなずいた。
「お願いします」
小川は、少し緊張した。
学校の課題とは違う。
実際のお客さんがいて、使う人がいる。
自分が考えて作った仕組みが、その人たちの仕事に使われる。
工場長は、少し笑った。
「これで、進捗確認がだいぶ楽になりますわ」
「ありがとうございます」
小川は、深く頭を下げた。
先生も、横でうなずいていた。
*
納品を終えた帰り道。
先生は、小川に声をかけた。
「小川、どうやった?」
「勉強になりました」
「何が一番?」
小川は、少し考えた。
「……最初に決めた方法が、そのままで全部うまくいくわけじゃないことです」
「ほう」
「でも、問題が起きたからといって、全部やり直す必要もないんですね」
先生はうなずいた。
「せやな」
「何が問題なのかを確認して、必要なところを直せばいいんだと思いました」
「なるほど」
先生は、少し笑った。
「ほな、今回の判断はどうやった?」
「よかったと思います」
「自信あるんか?」
「はい」
小川は、はっきり答えた。
「要求を満たす方法を選んで、実際に使ってもらって、問題にも対応できました」
「そうやな」
「もちろん、改善できるところはあります。でも、今回の仕事としては完成できたと思っています」
先生は、少し笑った。
「……ええやん」
小川も笑った。
3月のインターンでは、どこまで調べれば十分なのか決められなかった。
今は、目的と制約を確認し、必要なところで判断できる。
そして、判断した結果に問題があれば、対応することもできる。
技術力が急に上がったわけではない。
仕事の進め方が変わったのだった。
*
5月の終わり。
小川は、自宅の机で一つのファイルを開いていた。
3月のインターンで作成した、集計処理の改善案だった。
A案。
B案。
どちらも、技術的には悪くない。
今見直しても、比較資料は丁寧に作られている。
しかし、一つだけ足りないものがあった。
何を満たしたら、検討を終えるのか。
小川は、資料に新しい項目を追加した。
『目的と達成条件』
『選択肢とトレードオフ』
『採用案と判断理由』
『検証の終了条件』
『残存リスクと対応方針』
そして、当時の資料を一つずつ整理し直した。
コードは、ほとんど変えていない。
変更したのは、判断の理由と、仕事を終えるための条件だった。
小川は、修正した資料を保存した。
しばらくして、ブラウザを開いた。
株式会社カナメ。
採用情報。
以前、応募した会社のページだった。
小川は、画面を眺めた。
3月末。
採用を見送ると告げられた。
技術力は評価された。
しかし、仕事として判断を終える力が足りなかった。
その指摘を受けて、実際の仕事に参加した。
自分で判断し、実装し、問題に対応して、納品まで経験した。
小川は、少し笑った。
「……今度は、いけるな」
そして、ブラウザを閉じた。
お読みいただきありがとうございます。旭月です。
今回は少し視点を変えて、小川悠斗の成長を描いてみました。
実は今回のお話には、筆者自身のインターン経験も少し取り入れています。
学校で学ぶ技術と、実際のお客様がいる仕事とでは、求められるものが違います。
技術的に優れたものを作ることが、必ずしもお客様にとって最善とは限りません。
予算や納期、実際に使う人のことまで考え、どこかで判断を下さなければならない。
そんな実務ならではの難しさを、小川くんを通じて描いてみました。
もちろん、作中の出来事がそのまま筆者の実体験というわけではありません。
ただ、学生のうちに実際の仕事に触れる経験は、その後の考え方にも影響するものだと思っています。
小川くんは、技術力が足りなかったわけではありません。
足りなかったのは、技術を仕事として完成させるための判断でした。
そして彼は、指摘された課題をすぐに受け止め、自分から経験を積みにいきます。
次回、物語は再び株式会社カナメへ戻ります。
引き続き、お付き合いいただければ幸いです。




