↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カナメ -君はどう考える?-  作者: 旭月
第五章 守りたいもの
PR
102/172

影響の範囲

 2034年6月5日、月曜日。


 午後零時三十分。


 株式会社カナメの営業部では、予定されていた午後の打ち合わせが一部変更されていた。


 午前中、主要取引先の一社が法的整理に入ったという情報が確認された。


 先月まで、普段どおりに取引を続けていた会社だった。


 その会社について、今、何が起きているのか。


 そして、カナメの仕事にどのような影響があるのか。


 営業部長の小坂千尋は、松井慎吾と大本恭平を集め、緊急の打ち合わせを始めた。


     *


「まず、確認できていることからお伝えします」


 小坂が言った。


 画面には、午前中に確認した企業情報が表示されている。


「こちらのお客様について、法的整理に入ったという情報が確認されました」


 大本が、画面を見た。


「……え?」


 会社名を確認する。


「……あのお客様ですか?」


「はい」


 小坂が答えた。


「法人情報も照合していますので、別の会社ということではありません」


「……そうなんですか」


 大本は、少し黙った。


 松井が口を開いた。


「ただ、現在の契約や案件がどう扱われるかについては、まだ確認できていません」


「そうですね」


 小坂がうなずいた。


「ですので、まずは営業部で把握している契約状況を整理したいと思います」


     *


「……ちなみに」


 大本が尋ねた。


「はい?」


「もう、仕事はできへんのですか?」


 小坂は、少し考えた。


「それも、まだわかりません」


「そうなんですね」


「法的整理に入ったからといって、すべての契約がその場で終了するとは限りませんから」


 松井も、うなずいた。


「手続きの内容によって、対応が変わる可能性があります」


「なるほど……」


 大本は、資料を見直した。


「ほな、今は何をしたらええんでしょうか?」


「まず、現在の案件を正確に把握することです」


 小坂が答えた。


     *


 小坂は、案件一覧を開いた。


「契約済みで進行中の案件」


 松井が、該当する案件を確認する。


「契約済みですが、まだ着手していない案件」


 大本が、資料を開いた。


「それから、まだ相談や見積もりの段階にある案件」


 小坂は、三つの区分を示した。


「それぞれ、担当者と契約条件、次の予定を確認してください」


「承知しました」


 松井が答えた。


「了解です」


 大本も、うなずいた。


「それと、先方から新しい連絡が入った場合は、内容を記録して共有してください」


「はい」


「こちらから新しい約束をすることは、確認が取れるまで控えましょう」


「承知しました」


     *


 打ち合わせを終えると、松井と大本はそれぞれ資料の確認を始めた。


 松井は、契約書と発注書を照合する。


 大本は、案件管理表を開き、担当者と進捗を確認する。


 小坂は、顧客側の連絡窓口を整理していた。


 普段なら、次の商談や見積もりの準備に使っている時間だった。


 しかし、今は違う。


 すでに約束している仕事が、どれだけあるのか。


 その一つひとつを、確認しなければならなかった。


     *


 午後一時十五分。


 開発部では、西田が三人の課長を集めていた。


 開発一課の田村洋介。


 開発二課の尾崎達也。


 基盤運用課の井上修一。


「……ほな、状況を確認しようか」


 西田が言った。


「了解」


 田村が答えた。


「午前中に金目から連絡があってな」


 西田は、主要取引先の社名を伝えた。


「……あそこが?」


 田村が尋ねた。


「せや」


「……ほんまなんか?」


「法的整理に入ったいう情報は確認できとる」


 尾崎が、少し黙った。


「……そうか」


 井上も、資料を確認した。


     *


「まず、今動いとる案件を全部確認したい」


 西田が言った。


「了解」


 田村は、担当案件の一覧を開いた。


「一課の方は、開発中の案件があるで」


「進捗は?」


「今のところ予定どおりや。今週も作業が入っとる」


「なるほど」


「ただ、今後どうなるかは確認せなあかんな」


「せやな」


 西田がうなずいた。


「尾崎のところは?」


「二課も案件がある」


 尾崎が答えた。


「こっちは、今週から作業を始める予定のものもあるで」


「契約は済んどるんか?」


「済んどる。ただ、着手してええかは確認したいな」


「了解」


     *


「井上のところは?」


 西田が尋ねた。


「運用中のシステムがあるで」


 井上が答えた。


「監視と障害対応を続けとる」


「なるほど」


「こっちは、開発案件とはちょっと事情が違うな」


「せやな」


「勝手に監視止めるわけにもいかんし」


 西田は、うなずいた。


「そこは、今までどおりの体制を維持しといてくれ」


「了解」


「ただし、新しい変更作業については、内容を確認してから進めよう」


「せやな」


     *


「……しかし、どうなるんやろな」


 尾崎が言った。


「まだ、わからんな」


 西田が答えた。


「契約の扱いも確認せなあかんし」


 田村がうなずいた。


「開発中の案件も、今のまま進めてええんか判断が必要やな」


「せやな」


 西田は、少し考えた。


「ほな、各課で担当と進捗を整理してくれ」


「了解」


「作業を続けるうえで確認が必要なことも、一覧にしといてほしい」


「わかった」


「今は、勝手に止めたり、新しい約束をしたりせんようにな」


 三人がうなずいた。


     *


 午後一時。


 同じ頃、業務部でも確認作業が進められていた。


 高瀬は、福原奈央とともに、対象取引先の請求状況を確認していた。


「福原さん、まず請求済みのものから確認しましょう」


「承知しました」


 福原は、入金管理表を開いた。


 二月に、自分で確認項目を整理した管理表だった。


 請求先。


 請求金額。


 支払期日。


 入金日。


 確認状況。


 そして、関連資料への参照先。


 必要な情報は、一つの一覧から確認できるようになっていた。


     *


「……こちらが、現在の未入金分です」


 福原が言った。


「ありがとうございます」


 高瀬は、資料を確認した。


「請求書との照合はできていますか?」


「はい。金額と支払期日は一致しています」


「承知しました」


 福原は、別の一覧を開いた。


「それから、検収済みですが、まだ請求していない案件もあります」


「そうですね」


「こちらは、営業部と契約条件を確認する必要がありますね」


「はい」


 高瀬は、うなずいた。


「では、区分を分けて整理しましょう」


     *


 福原は、資料を並べた。


 請求済みで、まだ入金されていないもの。


 検収済みで、請求手続きが残っているもの。


 作業中で、請求条件を確認する必要があるもの。


 そして、今後の売上として見込んでいた案件。


 すべてが同じ性質のお金ではない。


 すでに請求している金額と、今後入る予定だった売上を、単純に足し合わせることはできなかった。


「……思ったより、いろいろありますね」


 福原が言った。


「そうですね」


 高瀬が答えた。


「まず、確定しているものから整理しましょう」


     *


「……高瀬さん」


 福原が、少し声を落とした。


「はい?」


「こちらのお客様からの入金、どうなるんでしょうか」


 高瀬は、少し考えた。


「現時点では、わかりません」


「……そうですよね」


「ただ、確認できる金額はあります」


「はい」


「まずは、請求済みの金額と、今後の入金予定を正確に把握しましょう」


 福原は、うなずいた。


「承知しました」


     *


 午後二時十五分。


 業務部では、対象取引先に関する一覧が形になり始めていた。


 請求済みの売掛金。


 請求前の案件。


 今後の入金予定。


 それぞれ、確認できた金額が記載されている。


 しかし、一つだけ、まだ埋められない項目があった。


 回収見込み額。


「……高瀬さん」


 福原が尋ねた。


「こちら、どう記載しましょうか?」


 高瀬は、画面を確認した。


「……今は、未確定としておきましょう」


「ゼロではなく、ですか?」


「はい」


 高瀬が答えた。


「回収できないと決まったわけではありませんから」


「なるほど」


「ただし、全額回収できると考えることもできません」


「そうですね」


「ですので、回収見込みは未確定として、資金繰りの試算では複数の条件を考えます」


「承知しました」


     *


 福原は、管理表を更新した。


 回収見込み額――未確定。


 確認状況――継続調査。


 次回確認日――未定。


 ほかの項目には、数字や日付が並んでいる。


 しかし、その欄だけは、まだ数字を入れられなかった。


「……これで、ひとまず整理できました」


 福原が言った。


「ありがとうございます」


 高瀬がうなずいた。


「午後の情報共有には、現在確認できている内容を持っていきます」


「承知しました」


「福原さんは、引き続き請求書と契約資料の照合をお願いします」


「はい」


     *


 午後三時が近づいていた。


 営業部では、契約と案件の一覧がまとめられている。


 開発部では、各課が担当する仕事と、継続にあたって確認すべき事項が整理されていた。


 業務部では、請求済みの金額と、今後の入金予定が並んでいる。


 それぞれの部門が、できる範囲で情報を集めた。


 しかし、まだわからないことも多かった。


 進行中の契約はどうなるのか。


 未入金の請求は回収できるのか。


 そして、今後の売上はどれほど失われるのか。


 各部門の資料には、確認できた事実と、まだ埋められない空欄が並んでいた。


     *


 午後三時。


 株式会社カナメの会議室に、金目、西田、高瀬、小坂の四人が集まっていた。


 午前中に確認された、主要取引先の法的整理。


 その知らせを受け、各部門では午後から影響の調査を進めていた。


 金目は、共有された資料を開いた。


「……ほな、確認しようか」


 三人がうなずいた。


「まず、今日わかったことを教えてください」


 金目は、少し間を置いた。


「まだわからんことは、わからんでええです」


     *


「では、営業部からご報告します」


 小坂が資料を共有した。


 画面には、対象取引先との案件一覧が並んでいる。


「現在の案件を、契約済みで進行中のもの、契約済みで未着手のもの、相談段階のものに分けています」


「ありがとうございます」


「契約書と発注書については、松井さんと大本さんが照合を進めています」


「なるほど」


「ただし、すべての契約条件について確認が終わったわけではありません」


「了解です」


 金目は、資料を確認した。


「先方からの連絡は?」


「現時点では、正式な連絡はありません」


「そうですか」


「こちらからの問い合わせについても、連絡先と対応方法を確認しているところです」


「わかりました」


     *


「今後の案件については、どうなりそうですか?」


 金目が尋ねた。


「現時点では、判断できません」


 小坂が答えた。


「すでに契約している案件と、まだ相談段階の案件では扱いが異なる可能性があります」


「せやな」


「ただ、今後の売上見込みについては、見直しが必要になると思います」


「了解です」


 金目は、うなずいた。


「ほな、確定している契約と、見込みの案件は分けて整理しといてください」


「承知しました」


     *


「次、開発部の方はどうや?」


 金目が尋ねた。


「今動いとる案件は、各課で確認したで」


 西田が答えた。


「一課と二課に開発案件がある。基盤運用課には、運用中のシステムもあるな」


「なるほど」


「担当者と進捗は、だいたい把握できとる」


「了解」


「ただ、今後の作業をどこまで続けるかは、契約の扱いを確認せな決められへん」


「せやな」


 西田は、資料を切り替えた。


「特に、今週から着手する予定やった案件がある」


「ほう」


「まだ作業は始まってへんけど、予定には入っとる」


「なるほど」


     *


「……そこは、どうする?」


 西田が尋ねた。


 金目は、少し考えた。


「契約上の扱いが確認できるまで、新しく着手するんは待とうか」


「了解」


「ただ、すでに動いとる案件は、勝手に止めんといてな」


「せやな」


「必要な作業と、判断を待てる作業を分けてほしい」


「わかった」


 西田は、うなずいた。


「運用中のシステムについても、今のところ監視は続けとるで」


「了解。そこも契約と手続きの確認をお願いします」


「任せといて」


     *


「次に、業務部からご報告します」


 高瀬が資料を共有した。


「対象取引先に関する請求と入金予定を整理しました」


「ありがとうございます」


 画面には、請求済みの売掛金と、請求前の案件、今後の入金予定が並んでいた。


「請求済みの金額については、現在の帳簿と照合できています」


「なるほど」


「ただし、最終的にどこまで回収できるかについては、まだ確認できていません」


「せやな」


「検収済みで請求前の案件についても、契約条件の確認が必要です」


「了解です」


     *


「……ちなみに」


 金目が尋ねた。


「はい」


「今、会社にあるお金だけで、直近の支払いはできますか?」


「はい」


 高瀬が答えた。


「現在の資金残高では、直近の給与や外注費などの支払いは可能です」


「……そらよかった」


 金目は、少しだけ息をついた。


「ただし、今後の入金が予定どおり行われない場合、資金繰りへの影響は出ます」


「せやな」


「そのため、複数の条件で試算を進めています」


「ありがとうございます」


     *


「回収見込みは、どうなっていますか?」


 金目が尋ねた。


「現時点では未確定です」


 高瀬が答えた。


「全額回収できると考えることも、全額回収不能と決めつけることもできません」


「せやな」


「そのため、まずは入金が予定どおり行われない場合を想定して、資金繰りを確認します」


「お願いします」


 金目は、資料を見直した。


 請求済みの金額。


 今後の入金予定。


 そして、まだ確認できない回収見込み。


 それぞれの数字が並んでいる。


 しかし、数字が並んだからといって、答えが出たわけではなかった。


     *


「……思っとったより、影響するところ多いな」


 金目が言った。


「せやな」


 西田が答えた。


「開発だけでも、結構いろいろあるで」


「そうですね」


 小坂もうなずいた。


「営業部でも、契約ごとに確認が必要です」


「業務部でも、債権の扱いによって見通しが変わります」


 高瀬が続けた。


「……なるほどな」


 金目は、少し考えた。


「ほな、まず一つの資料にまとめようか」


 三人が、金目へ目を向けた。


     *


「営業部の契約状況と、開発部の作業状況、それから業務部の請求状況」


 金目が言った。


「それぞれ、同じ案件を見とるはずやから」


「そうですね」


 小坂が答えた。


「案件ごとに、契約、進捗、請求を確認できるようにしたいんです」


「なるほど」


 高瀬がうなずいた。


「既存の管理表をもとに、参照先を整理する形でよろしいでしょうか?」


「ええと思います」


「元の資料は、それぞれの部署で管理したままで?」


「はい。それでお願いします」


 金目は、少し笑った。


「同じ資料を何回も作るんは、面倒やしな」


 西田が、わずかに笑った。


「……こんなときでも、それ言うんやな」


「……そら、面倒なもんは面倒やろ(笑)」


 小坂と高瀬も、少しだけ笑った。


     *


 午後四時。


 緊急の情報共有は、ひととおり終わった。


 しかし、まだ判断できないことが多かった。


 金目は、翌日の経営会議に向けて確認事項を整理した。


「小坂さん、契約書の確認を引き続きお願いします」


「承知しました」


「先方の正式な連絡窓口についても、確認してください」


「はい」


「西田は、案件ごとに、今後の作業をどう扱うべきか整理してくれ」


「了解」


「高瀬さんは、資金繰りの試算をお願いします」


「承知しました」


     *


「……ただ、明日までに全部わかるとは思ってへんので」


 金目が続けた。


「はい」


「確認できたことだけでええです」


「承知しました」


「わからんところは、何がわからんのかを書いといてください」


 高瀬がうなずいた。


「試算については、仮定を明示して複数のケースを用意します」


「お願いします」


 金目は、少し考えた。


「明日は、集まった情報を見て、何を先にするか決めたいと思います」


 三人がうなずいた。


     *


 午後五時。


 営業部では、松井と大本が契約資料の照合を続けていた。


「……松井さん」


 大本が声をかけた。


「はい?」


「これ、明日どうなるんでしょうね」


 松井は、少し考えた。


「まだ、わかりません」


「……そうですよね」


「ただ、今できることはあります」


「はい」


「契約条件と、今までのやり取りを整理しておきましょう」


「了解です」


 大本は、資料を開いた。


 いつもなら、次の提案や商談の準備をしている時間だった。


 しかし、今日は過去の契約を確認している。


 それでも、仕事であることに変わりはなかった。


     *


 同じ頃。


 業務部では、福原が入金予定の一覧を確認していた。


 請求済みの金額。


 支払期日。


 そして、まだ確認できていない回収見込み。


「……高瀬さん」


「はい?」


「こちらの一覧、更新しました」


「ありがとうございます」


「確認が必要なものには、印をつけています」


「承知しました」


 高瀬は、資料を確認した。


「では、こちらをもとに試算を進めます」


「はい」


 福原は、うなずいた。


     *


 開発部でも、各課長が担当案件を確認していた。


 開発一課では、田村が進行中の案件を整理している。


 開発二課では、尾崎が今週の作業予定を見直していた。


 基盤運用課では、井上が運用中システムの契約条件と、必要な対応を確認している。


 まだ、誰も仕事を止めるとは決めていない。


 ただ、これまでと同じように進めてよいのか、確認しなければならないことが増えていた。


     *


 午後六時。


 高瀬から金目へ、当日の調査結果をまとめた資料が届いた。


『本日時点で確認できた債権および入金予定を整理しました。資金繰りの試算については、明日の会議までに更新します。』


 金目は、資料を開いた。


 請求済みの金額。


 検収済みで請求前の案件。


 そして、今後の売上見込み。


 それぞれが分けて記載されている。


 回収見込みの欄には、未確定と書かれていた。


     *


「……なるほどな」


 金目は、資料を見直した。


 これまでの経営会議でも、売上や利益、資金繰りの数字を確認してきた。


 しかし、今は違う。


 予定していた入金が、予定どおり入るとは限らない。


 今後の売上見込みも、同じようには考えられない。


 そして、社員への給与や、事務所の賃料など、支払うべきものは残っている。


 金目は、資料を閉じずに、もう一度確認した。


     *


 午後六時二十分。


 金目は、高瀬へ連絡した。


「高瀬さん、資料ありがとうございます」


「いえ。確認できた範囲ですが」


「十分です。助かります」


「ありがとうございます」


 金目は、少し考えた。


「……ちなみに、資金繰りの見通しは、いつ頃出せそうですか?」


「明日の会議までに、複数の条件で試算します」


「了解です」


「ただし、回収見込みが確定していないため、幅のある数字になります」


「もちろんです」


 金目は、うなずいた。


「今は、それでええと思います」


     *


「……高瀬さん」


 金目が続けた。


「はい?」


「直近の支払いは大丈夫なんですよね」


「はい。現時点で確認できている資金残高では、対応可能です」


「……そらよかった」


「ただ、その先については、明日改めてご説明します」


「お願いします」


 通話を終えた。


     *


 午後六時半。


 金目は、翌日の予定を確認していた。


 緊急経営会議。


 契約状況の確認。


 資金繰りの再試算。


 そして、必要に応じた外部への相談。


 予定表には、昨日までなかった仕事が並んでいる。


 金目は、今日一日の資料を保存した。


 営業部は、契約を調べた。


 開発部は、作業を調べた。


 業務部は、お金の動きを調べた。


 それぞれの部門が、自分たちの仕事を進めている。


 しかし、会社全体として何をするべきか。


 その判断は、まだこれからだった。


     *


 2034年6月5日、月曜日。


 午後六時三十分。


 主要取引先の法的整理が判明してから、まだ半日も経っていない。


 カナメでは、影響の範囲が少しずつ明らかになり始めていた。


 それでも、最も重要な問いには、まだ答えが出ていない。


 会社は、どこまで耐えられるのか。


 そして、何を守ることができるのか。


 その答えを考えるために、金目たちは翌日の経営会議を迎えようとしていた。

お読みいただきありがとうございます。旭月です。


今回は、主要取引先の倒産を受け、カナメの各部門が影響を調べるお話でした。


営業部は契約と案件、開発部は進行中の仕事、業務部は請求と入金。


それぞれが情報を集め、少しずつ状況が見えてきました。


しかし、情報が揃うことと、問題が解決することは別です。


特に、予定していたお金がどこまで回収できるのかは、まだわかりません。


そんな中、以前に福原が改善した入金管理表も役立ちました。


何気ない日々の改善が、思わぬ場面で力になることもあるのですね。


さて、金目たちは翌日の経営会議に向けて準備を進めています。


ここから、どのような判断を下していくのでしょうか。


引き続き、お付き合いいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。