2.フェリシア
フェリシアの母は早くに亡くなった。
その後しばらくして父が、義母と異母妹を家に連れてきた。
よくある話だ。
母のいたころからの愛人なのだろう。
フェリシアは、母に似て美人だ。
若いころその美貌でもてはやされ、父の熱心な求婚により結婚したはずなのに、すぐに熱は冷め、父は愛人を作った。
母は、美貌だけが取り柄のような人で、夫の愛が冷めたことを嘆き、やがて病にかかって亡くなった。
フェリシアは、母のような人生は嫌だと思う。
だがどうすればよいのか、わからない。
父は、妹のロザリアだけをかわいがる。
ロザリアに新しいドレスを買っても、フェリシアの分はない。
義母やロザリアは贅沢にしているのに、自分は最低限必要なものしか与えられない。
「あなたは、今のままでも十分綺麗なんだから、新しいドレスなんて必要ないでしょう。
どうしても欲しければ、取り巻きの男性にでも買ってもらえば?」
そう言って、義母やロザリアは、せせら笑う。
しかたなくお古のドレスを何とか見られるものにしようと、裁縫の技術をメイドに教わって身につけた。
趣味の悪い服を下げ渡されても、自分で工夫して何とか着られるようにした。
意外にも楽しかった。
仕方がないと何もかも諦めていたフェリシアにほんの少し、生きる喜びを与えてくれた。
この家を出て、義母やロザリア、父もいないところで生きていきたい。
それがフェリシアの願いとなった。
さて問題は、今度の夜会用のドレスである。
ヴィクトリアとクロエは、学園からの帰りにフェリシアの家に寄り、ドレスを見せてもらった。
「えっ、......このドレスなの?」
「これは、ちょっと......。」
二人とも正直に感想を述べにくい。
「すごくダサいドレスでしょう?」
「フリルとリボンがこれでもかと付いているわね。」
「7歳の時ならこのドレス、かわいいかも......。」
これを着ろというのは、もはや嫌がらせとしか思えない。
「と、とにかくこのドレスを持って明日私の屋敷に来て。
そこで対策を考えましょう。」
ヴィクトリアは、そう言うと一足先に帰って行った。
「私も家でリメイクに使えるドレスを探してみます。
ヴィクトリア様も私も、フェリシア様とは体型が違うので
お貸しすることも出来ませんから。」
フェリシアは、スレンダーだが、出るところは出ている、理想的なプロポーションだ。
一方、ヴィクトリアは、フェリシアより背が低く、クロエは、背丈は同じくらいでも残念なことに胸がない。
リメイクするしかなかった。
翌日、学園の帰りに三人はヴィクトリアの屋敷に集合した。
フェリシアは、ダサいドレスを持って、クロエはリメイクに使えそうなドレスを持って。
ヴィクトリアも持っているドレスの中からいくつか用意していてくれた。
「まず邪魔なフリルとリボンを取って、土台となる部分から考えていきましょう。」
ヴィクトリアが方針を決める。
「このドレスのレース部分を使ったらどうかしら?フリルとリボンを外したから、上半身がレースで華やかになるように。」
「スカートの部分はこちらのドレスの生地を使った方がいいわ。
上質だし、軽やかな感じになりそう。」
「あとは、スパンコールやビーズで刺繍していけば、十分ゴージャスになるわ。」
フェリシアとクロエが細かい部分を詰めていく。
「時間がないわ。明日、明後日は学園は休みだし、寝る時間を削ってでも仕上げましょう。」
クロエもフェリシアほどではないが、裁縫が得意だ。
ヴィクトリアは、......単純作業の部分を担当した。
三人は夢中になって作業した。
気づけば、夜が明けていた。
次の日も一日中ドレスにかかりきりだ。
二日でドレスを仕上げた三人は、作業が終わって死んだように眠った。
フェリシアの問題は、二人の協力によって、ほぼ解決された。
ドレスはロザリアや義母に気づかれぬよう、ヴィクトリアの屋敷で預かることになった。




