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1.出会い

ヴィクトリアはいつものように中庭のベンチで昼食のサンドイッチを食べていた。

今日も家に帰れば、たくさんの書類が待っている。

父が領地経営の仕事をヴィクトリアに丸投げするからだ。

思わずため息が出た。


「はぁー......。」

「ふーっ......。」

「あーぁ......。」


自分のため息に重なるように、近くから別のため息が聞こえた。

思わず周りを見回した。

見ると、同じようにランチボックスで昼食をとっている令嬢がいた。

二人も。

少し離れたベンチだったので気にしていなかったが、ため息が大きかったようだ。


「お聞き苦しくて、ごめんなさい。

同じクラスのフェリシア様と、クロエ様ですよね?

よろしかったら、食後のお茶をご一緒しませんか?」


なんとなく人と話したい気分だったので、珍しくヴィクトリアは自分から他人を誘った。

フェリシアとクロエは、驚いたように目を丸くした。

それでも誘いに応じてくれた。


 *****************************


自分以外のため息を聞いて、フェリシアはちょっと驚いた。

離れたベンチに人がいるのは気づいていたが、あまり気にしていなかった。

それよりも自分の問題で頭がいっぱいだったから。

夜会まであと少ししか日にちがない。

どうすれば恥をかかなくて済むだろう?

そんなことを考えていたら、思わずため息が出てしまったのだ。

ちょっと気持ちを切り替えたかったので、ヴィクトリアのお茶の誘いはちょうどよい。

クラスメイトなのに今まであまり交流がなかったが、よい機会だ。


 ******************************


クロエも大きなため息をついたが、自分と同じようにこんな場所で悩んでいる人がいるとは思わなかった。

何とかして夜会までに問題を解決できないだろうか。

無理でも何とかしたいのだ。

このままでは、不幸せまっしぐらだ。



三人三様の悩みを抱えた令嬢たちは、カフェテリアでお茶を飲み、それぞれを観察していた。

ヴィクトリアは、伯爵令嬢だ。

一人娘なので、婿を取る立場である。

成績優秀で、試験でもトップだ。

授業が終わるとすぐに帰宅し、他の令嬢との交流はほとんどない。

お茶に誘うなんて、珍しいこともあるものだと、フェリシアもクロエも思った。


フェリシアは、学園でも指折りの美人だ。

だがその美貌に似合わぬみすぼらしい服を着ている。

ほどいて作り直したような縫い目。

一生懸命リメイクしているようには見えるが、素材の品質が悪いのはどうしようもない。

もったいない美人と陰口をたたかれている。

フェリシアの美貌はうらやましいが、服装は何とかしたほうが良いとヴィクトリアも思っていた。


クロエは、男爵令嬢だが、座学はもちろん、マナーやダンスの実技もそつなくこなす。

トップを取るわけではないが、成績は上位のほうに入っていた。

ただ少し地味で、華がない。

他人からは、おとなしくて目立たない令嬢という印象を持たれている。


三人は、お茶を飲みながら少しずつ自分のことを話し出す。

誰かに聞いてほしい心境だったのだ。


「私、いつも早く家に帰るでしょう?

家に帰ってお父様の代わりに執務をするためなの。

だから忙しくて、なかなか時間が取れず、お友達もできなかった。

今度の夜会もできれば出席したいのだけど、執務を手伝ってくれる家令がぎっくり腰で寝込んでしまって。

仕事が溜まって、夜会どころではなくなってしまったの。

それが残念で......。」


ヴィクトリアは、自分のため息の原因を思わずこぼした。

フェリシアとクロエは、同情のまなざしで見ている。


「私も今度の夜会が悩みの種なんです。

私の服がみすぼらしいと皆さん、言ってらっしゃるでしょう?

異母妹ロザリアのお古なんです、私の着ている服。

新しい服を買ってもらえなくて、今度の夜会もこれを着るようにと渡されたのが、ロザリアが何年か前に作ったドレスで、私には全然似合わない。

リメイクしたくても、材料が手に入らないし、作り直せてもろくなドレスにならないと思います。

初めての夜会で、みっともないドレスを着ていくのが嫌でため息をついていました。」


フェリシアも自分の事情を話す。

フェリシアのみすぼらしい衣装の訳が分かり、他の二人も納得する。

クロエも二人にため息の訳を話す。


「私には、伯爵家の跡取りの婚約者がいるのですが、彼と一緒に夜会に出たくなくて......。

どうにかして婚約を解消したいのですが、家族は格上の家に嫁ぐことに賛成で、誰も私の気持ちなんて考えてくれません。

夜会に出れば、婚約も確定してしまうでしょう。

このままあの方と結婚するのかと思うと憂鬱で。」


「私たち似たような問題を抱えていますわね。

家族からの理不尽な扱いという点で。」


「それなら三人で協力しません?」


「一人では無理でも、三人なら何とかなるかもしれないでしょう?」


ヴィクトリアの指摘に、クロエが提案し、フェリシアも頷いた。


三人は、それぞれの事情を抱え、夜会への参加について悩んでいた。

皆、理不尽な状況に耐えている。

でもこのままではいけない、何とかしなくてはという気持ちが湧き上がってきた。

三人が出会ったことで、運命を切り開く勇気がわいてきたのかもしれない。

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