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星を抱くひと  作者: 飴目
第4章

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84/185

第84話 外套の中

翌朝。

任務へ向かう前、セレンはナナセを連れて医療室へ来ていた。


目を覚ました頃には、ナナセの顔色はすっかり戻っていた。

『任務、どうする?』

朝の支度をしながら尋ねるセレンに、ナナセは小さく頷いた。

『行きます』

ナナセはそう答えたが、昨夜のこともあり、念のためキサに診てもらうことにしたのだった。


「うん。大丈夫そうだね」

キサはナナセの様子を確認すると、安心させるように少し笑った。


「昨日の検査、ちょっと引きずっちゃったかもね」

「……検査?」

速攻でセレンが反応する。


キサは一瞬だけナナセを見る。

魔力の測定検査の一件をセレンに話していないのだろう、言わないでと顔に書いてあるような視線で見つめてくるナナセ。

そんな健気な様子に小さく笑う。


「魔力の経過観察を少しね」

それ以上は説明しなかった。ナナセも黙っている。

セレンは少し不思議そうにしていたが、深く追及することはなかった。


「任務に行って大丈夫だよ」

キサがナナセに笑いかける。


「……よかった」

ナナセが小さく息を吐く。


その表情を見て、セレンも少しだけ安心したようだった。

「でも、何かあったら、すぐ言って」

「はい」

「絶対」

「……はい」


念を押すように言ってから、セレンは外套を少しめくった。


「今日はずっとここにいて」


そう言って、手を差し出す。

ナナセは一瞬だけその手を見る。

それから、小さな姿へ変わると、ふわりと飛び上がり、セレンの手のひらへ乗る。


セレンはそのまま手を持ち上げると、外套の内側へ運んだ。


右側のポケット。

ナナセがすっぽり収まったのを確認してから、外套を閉じる。

「よし」

「はは、そこまでなんだ」


横で見ていたキサが少し驚いて吹き出した。

「過保護」

「なに」

セレンが少しむっとした声を返す。

「別に普通でしょ」

「普通ねぇ。いつの間にそんなになっちゃったの」

「……」

キサは楽しそうに笑う。


「それに昨日の今日で、絶対自分の近くに置いときたいんでしょ?」

「……」


セレンはもう答えないことにしたらしい。


ただ、外套の右側、自分の身体に近い位置にいる小さな存在を、無意識に確かめるように手で軽く押さえた。


「行ってくる」

「はいはい。気をつけてね。ちゃんと守ってね」

「……言われなくても」


医療室を出ていくセレン。


外套の中で、ナナセは小さく目を閉じた。

昨夜とは違う。今はもう、セレンの体温がすぐ近くにある。


そのことが、妙に安心できたのだった。

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