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星を抱くひと  作者: 飴目
第3章

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第65話 使役妖精について

「そういえば」


静かな休憩の時間。

セレンは外套の隙間から顔を出しているナナセを見つめ、ふと思い出したように尋ねた。


「ナナセって、主人が戦ってる間はどうしてたの?」

「……?」

「俺、使役妖精を持ったことないから、よく分からなくて」


ナナセは少し考える。


「私は……攻撃も防御もできます」

「うん」

「外套の中で主人に保護魔法を張っているか、戦闘中は周囲を飛んで援護するか……」

そこまで言って、ナナセは過去を思い出すように少しだけ視線を落とした。

「単独での作戦行動を指示されることもありました」

「単独で?」

「はい。指定された場所の監視や、敵の配置、戦力の確認などです」


セレンは深く頷きながら話を聞いていた。

妖精の機動力と魔法能力を考えれば、役割はかなり幅広い。

使い方次第では、戦況全体を大きく左右できるほどの存在だ。


「……じゃあさ」

セレンは少し考えてから、素朴な疑問としてそれを口にした。


「もし……主人が死んだら、どうするの?」

「……?」


ナナセは不思議そうに目を丸くしてセレンを見る。


「主人が死んだら、ですか?」

「うん」


ナナセは迷う様子もなく、ごく当然のこととして答えた。


「使役妖精は、死んでも主人を守るものなので」

「……」

「その状況になった場合、基本的には先に死んでいますから……分かりません」


「……え?」

セレンの言葉が、ぴたりと止まった。


ナナセは、自分の言ったことが何かおかしいのだろうかと首を傾げる。

「主人が亡くなったあとに、使役妖精だけが生き残っていることはありません」

「……」

セレンはしばらくの間、完全に言葉を失っていた。


「それ……」

ようやく絞り出すように声を出す。


「……当たり前、なの?」

「……? はい」


あまりにも呆気なく、自然な返事だった。

ナナセ自身が、というよりは、使役妖精という存在にとってそれは疑問を挟む余地のない絶対の前提なのだ。


「……病気とかでも?」

「はい。主人が亡くなれば、契約を結んでいる妖精も命を落とします」

「……契約を切ったら?」

「お互いが合意して契約を解消すれば、妖精はそのまま生きられます」


ただ、それだけのシステムなのだと言わんばかりの淡々とした説明。

セレンは外套の中に収まる、小さなナナセを見つめ返した。

さっきまで浮かべていた柔らかで穏やかな表情が、ゆっくりと消えていく。


「……ナナセ」

「はい」

「それ……誰に教えられたの?」

「……?」


ナナセは少しだけ首を傾げ、記憶を辿る。


「最初から……そういうものだと」

「……」


セレンはもう、何も言わなかった。


ただ――外套の上から、ナナセのいる場所を包み込むように、そっと大きな手で覆った。


ナナセはその手が持つ静かな温もりと、どこか震えるような意味を理解できないまま、ただ外套の隙間からセレンを見上げていた。

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