↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を抱くひと  作者: 飴目
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/181

第63話 妖精の疑問

ナナセはセレンの胸元で小さく身体を丸めながら、先ほど交わされた会話を静かに思い返していた。


ギルド隊長であるアスレイと、フィリスたちとの驚くほど近い距離感。

それに周囲の隊員たちが彼らに向ける敬意の視線を見れば、特別部隊が自分が思っていた以上の立場にあるのだと理解できた。


そんな場所に――。

どうして、自分が配属されたのだろう。


ナナセの意識はふと、セレンの元へ配属される直前の、あの日のことへと遡っていた。


◇


『ナナセ様の再配属先をご連絡します』


連絡妖精は、感情の篭もらない、無機質で事務的な声で告げた。


『特別部隊傘下、セレン様です』

『……特別部隊?』

『はい。特別に編成された精鋭部隊です。フィリス様を隊長とし、少人数で特殊任務を行っています』


ナナセは黙ってその言葉を聞いていた。


『なお、特別部隊側からは、現時点で使役妖精を必要としていない旨が伝えられています』

『……』

『そのため、通常の使役契約とは異なる形での配属となります。詳細については、配属後に担当者へ確認してください』

『……そうですか』


ナナセは、それ以上何も尋ねなかった。


必要ない、使役妖精に対してのその無慈悲な言葉にも、特に驚きや傷つきはなかった。


それに、必要とされていないからといって、何も危害を加えられないとは限らない。

どうせまた、別の形での苦痛が待っているだけなのだと、ただ冷めた諦めだけを抱いていた。


◇


「……」


ナナセはハッと我に返り、現在へと意識を戻した。

外套の小さな隙間から、もう一度外の様子を覗き見る。


目の前には、先ほどまで話していたアスレイの姿。

フィリスたちと親しげに言葉を交わすその人は、実に穏やかに笑っていた。


『思ったより大切にしてるな』

ふと、その言葉が脳裏に蘇る。

アスレイは、セレンに向けて確かにそう言っていた。


まるで、自分の存在や現状を、最初から知っているかのような言い方だった。


「……」

ナナセは小さく首を傾げる。

自分がここへ配属された経緯を、アスレイは知っているのだろうか。

そもそも――自分のことを知っているのだろうか。


アルカへ引き取られる前の、あの暗い過去のことまで。

かつて所属していた、あの五部隊でのことまで。

そこまで何もかも知った上で、セレンの元へ自分を配属したのだろうか。


分からない。

今の自分にはそれを確かめる術もなければ、直接アスレイに訊ねる理由もなかった。


ナナセはそっと外套の内側で身体を丸め直す。


やがて、セレンの足音が再び静かに動き出した。

規則正しい胸の鼓動と歩みの振動を全身で感じながら、ナナセはそっと目を閉じる。


答えの出ない静かな疑問だけが、胸の奥にそっと残されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。