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星を抱くひと  作者: 飴目
第7章

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第150話 解ける孤独

「……ちょっと、風呂入ってきてもいい?」


いつまでも自分の膝の上から離れようとしないナナセへ向け、セレンが少しだけ口元を緩めて尋ねる。


「あ……」

ナナセはそこでようやく我に返ったようにハッと目を瞬かせ、慌ててセレンの身体から離れて立ち上がった。


「すみません」

「いいよ」


セレンは柔らかく笑いながら立ち上がると、ナナセの手を取って奥の寝室へと向かう。


「すぐ戻るから、もう寝てて」


そう言って、ベッドの毛布をめくる。

ナナセは少しだけ名残惜しそうにセレンの顔を見上げたものの、小さく素直に頷いた。


「……分かりました」


セレンはそんなナナセの頭をぽん、と軽く撫でる。


「おやすみ」

「……はい」


ほんの少しだけ口元をほころばせて、ナナセはベッドへと潜り込む。

セレンが浴室へと向かう足音を遠くに聞きながら、毛布を肩口まで引き上げた。


さっきまで胸の中に渦巻いていた暗い不安や恐れは、もうほとんどきれいに消え去っていた。


無事に帰ってきてくれた。

ただその事実だけで、全身から心地よく力が抜けていくようだった。


◇


やがて、セレンが浴室から戻り、静かに寝室の扉を開けた。


もうすっかり眠っているだろうと思っていたナナセだったが、彼女はまだ目を開けて起きていた。


「……眠れなかった?」


セレンが声をかけると、ナナセは小さく首を縦に振る。


セレンがベッドに入り、毛布を整えた時だった。

ナナセが身体をそっと滑らせて寄せ、そのままセレンの身体へとギュッと抱き着いてくる。


「……」


セレンは不意の行動に少し驚いたように目を瞬かせたが、それからふっと優しい笑みをこぼした。


「そんなに寂しかった?」


少しだけ、静かな間があった。

ナナセはセレンの温かな胸元に固く顔を埋めたまま、静かに小さく答える。


「……はい」


その素直な一言に、セレンはナナセの身体をそっと引き寄せて抱きしめると、手のひらでゆっくりと背中を撫で下ろす。


「そっか」


しばらくの間、二人だけの静かな時が流れた。

やがてナナセが、セレンの服を掴んだまま、小さく口を開いた。


「……任務」

「ん?」

「次からは……一緒に行きたいです」


ナナセの背を撫でていたセレンの手が、ほんの少しだけ止まった。


「……だめですか?」

ナナセはセレンの胸から静かに顔を上げる。


「でも……」

セレンが言葉を濁しながら言いかける。


長時間の任務ともなれば、当然カネルたちと接触し、顔を合わせる時間も長くなる可能性がある。

だからこそ、今までは彼女を守るために連れて行かない方がいいと判断していたのだ。


けれど――。


「寂しくなるより、全然いいので」


ナナセが、ほんの少しだけ縋るような眼差しでセレンの服をぎゅっと握りしめる。

その言葉に、セレンはしばらくの間ナナセの瞳をじっと見つめていた。

やがて、諦めたようにふっと小さく吐息を漏らす。


「……分かった」


優しいその声とともに、セレンは再びナナセの背中を撫でた。


「一緒に行こう」

「……っはい」


ナナセの声が、嬉しさを隠しきれずに少しだけ小さく弾んだ。

セレンはそのままナナセの柔らかい髪に手を添え、優しく撫で続ける。


「俺も、早く帰ってきたかったよ」


その本音の言葉に、セレンの服を握っていたナナセの指先がきゅっと一段と強くなる。

胸の奥深くに残っていた寂しさと不安のしこりが、静かにほどけていく。


セレンもまた、愛しい存在を腕の中に抱きしめたまま静かに目を閉じた。


「……おやすみ」

「……おやすみなさい」


どちらからともなく身体から余計な力が抜け、穏やかな温もりへと沈んでいく。


隣に存在する確かな体温と鼓動を確かめ合いながら、二人は深い眠りへと落ちていったのだった。

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