↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を抱くひと  作者: 飴目
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
132/186

第132話 胸の中にあるもの

無事に巡回任務を終えて拠点へと戻る頃には、空を焦がしていた強い日差しが少しずつ傾き始めていた。


広大な森の木々の間から差し込む日光も、昼間の灼熱をすっかり失い、柔らかく温かなオレンジ色へと色合いを変え始めている。


昼間、ナナセの身体にまとわりついていた息苦しい暑さも、夕刻の涼やかな風とともにようやく遠のき始めていた。


セレンの肩の上にちょこんと止まっていたナナセが、ふと顔を上げた。


「……あの、セレンさん」

「ん?」


アルカの拠点へ向けて歩きながら、セレンが横目で肩の上のナナセを優しく見やる。


「服の中に……戻ってもいいですか?」


少しだけ遠慮がちな、けれどねだるような声だった。


昼間、制服の胸ポケットへ入っていたナナセが暑さで参ってしまったこともあり、セレンは彼女の体調を気遣ってずっと肩の上へ乗せたまま移動していたのだ。


「いいけど、暑くない?」

「はい」


ナナセは少しだけ間を置いてから、そして嬉しそうに笑ってみせる。


「ここがいいです」

「……それならいいけど」


セレンが少し意外そうに瞬きをする。


ナナセはセレンの許可を得ると、ふわりと肩から飛び立つと、まっすぐにセレンの胸元へと降りていった。


セレンの着る制服の右胸のポケットへと、ふわりと小さな身体が吸い込まれるように収まる。


そして、ポケットの縁から外の景色を眺めるように、満足げに顔だけを出した。


セレンはそんなナナセを見下ろすと、少し可笑しそうに笑いかける。


「ポケット、そんなに気に入った?」

「……少し」


ナナセは自分の気持ちを見透かされたようで、恥ずかしそうに照れた顔で答えた。


冬の外套の中とは違って、この胸ポケットだと外から自分のことも見られてしまう。

それでも、今セレンの一番近いところにいられるのだ。


昼間は暑さに負けて一時的に離れていたけれど、涼しくなった今ならここへ戻っても平気だった。


何より――。


「落ち着くので」


ぽつり、と小さく付け足された本音の言葉に、セレンの口元が少し緩んだ。


「そっか」


それ以上は何も尋ねない。


ただ――セレンは歩く速度をほんの少しだけ、さりげなく落とした。


胸ポケットの中で揺られているナナセが、少しでも衝撃を感じず心地よくいられるように。


ナナセ自身はそのことには気付かず、ポケットの縁に小さな手を添えたまま、穏やかに外を眺めていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。