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星を抱くひと  作者: 飴目
第2章

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第11話 全体集会

数日後。


アルカの拠点にある大きなホールには、普段とは比べものにならないほど多くの隊員が集まっていた。


定例の全体集会。

各部隊から人が一堂に集められるため、吹き抜けの広いホールですら手狭に感じるほどだった。


交わされる話し声。

行き交う足音。

金属が擦れ合う装備の音。


ナナセは、その圧迫感のある人の多さに、小さく身体を強張らせていた。


普段ならセレンの少し斜め後ろ。一定の距離を保って立っている。

けれど今日は違っていた。セレンのすぐ背中側から、ほとんど離れられずにいる。


体格の大きな隊員がすぐ横を通るたび、ナナセの白金色の髪がふわりと揺れる。

そのたびにナナセは息を潜めて身を縮め、セレンの背中の影へ隠れるように姿勢を低くした。


「……」


気配に気づいたセレンが、一度だけ横目で振り返る。


「大丈夫?」

「……はい」


返事はいつも通りだったが、声がほんの少しだけ細い。


セレンはそれ以上何も聞かなかった。

ただ、自分が立つ位置をすっと半歩だけずらす。

ナナセとの間に、周囲の人間が割り込みにくい角のスペースを作り出したのだ。


それを見ていたソラトが、何気ない顔でナナセの反対側の横へ移動してきた。


「人、めちゃくちゃ多いね」

「……はい」

「こういう集会、慣れてない?」


ナナセは小さく首を横に振る。


「以前の部隊でも……ありました。ですが」

「ですが?」

「こういう場所に立つのが……久しぶり、なので」

「そっか」


ソラトはそれだけ言うと、壁のようにナナセの横に立ったまま動かなかった。


さらにその先には、ヒヨリが立ち位置を取る。


「ナナセ」

「はい」

「ここにいて大丈夫だからね」

「……」

「急にどこかへ行ったりしないから」


ヒヨリが穏やかに微笑む。

ナナセは少しだけ灰色の目を丸くした。それから、静かに頷く。


「……ありがとうございます」


誰も口に出して合図をしたわけではない。

けれど、人の波が押し寄せてくるたび、誰かが自然に立ち位置を変えていた。


ナギが後ろから歩いてくる隊員を避けるように斜め後ろに立つ。

ソラトが横からぶつかられないよう肩を並べる。

ヒヨリがナナセの視界を遮るように立つ。


そして、セレンはずっと前に立っている。

ナナセの視界のすぐ真ん中に、セレンの落ち着いた深紅の髪があった。

派手さはないが、深く重厚なその赤は、人混みの中でも見失うことのない確かな道標だった。


「……」


ナナセは躊躇《ためら》いながら、ほんの数センチだけセレンの背中へと歩み寄った。

服の裾に触れるほどではない。けれど、今までで一番近い距離。


セレンはその気配に気づいていた。

けれど決して振り返らない。余計な言葉もかけない。

ただ、ナナセを塞ぐ壁のように、静かにそこに立ち続けていた。


やがて、ホールの前方に集会の責任者が姿を見せる。


ざわめいていたホールの空気が、少しずつ静まり返っていく。


『――これより、定例全体集会を開始する』


厳格な声が響き渡り、ナナセの肩がビクッと跳ねた。


その瞬間。

「大丈夫」

ソラトが周囲に聞こえないくらいの小さな声で囁いた。


「……はい」


今度は、先ほどよりもずっと自然な声で返事ができた。


大勢の人がひしめく場所は、まだ少し怖い。

けれど――自分はもう、たった一人で耐えなくてもいいのだということ。


その感覚を、ナナセはセレンの背中越しに、少しずつ肌で覚え始めていた。

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