8 養女
上級貴族の前で国王陛下と共にに立たされた。養女就任の儀である。上級貴族の反応はあまり芳しくない。
8 養女
大勢の上級貴族の前に国王と共にマリエールは立たされた。別に緊張する事でもないが不信感の混ざった目で見られるのは耐え難い。国王は、
「砂漠の難工事をやり遂げ国に富をもたらせた業績により男爵を辺境伯にその娘マリエールを養女とする。」
この意味するところを誰もが理解する。マリエール商会の利益の一部を国に納めさせマリエール商会の事業を国家事業とする事だ。誰もが自分の損得勘定をする。その結果の不信感だ。マリエール商会の事業が拡大して国に利益の一部を納める。得をするのは国とマリエール商会と辺境伯領、我々は利益がない。貴族の一人が、
「元々は男爵の娘、養女にするのに相応しくないと思いますが。」
と言う。すると国王は、
「私はマリエールの類稀な発想力そしてそれを実現する実行力を高く評価している。この娘以上に私の養女に相応しい者がいるか。」
国に利益をもたらすという点でマリエール以上の存在はいない。自分の損得勘定を除けば文句はない。この国の利益は自分の利益と言えなくはないのだから。マリエールの番だ。
「国王陛下の思し召しにより国王陛下の養女になりましたマリエールです。既にマリエール商会の活動によりご存知の方も見えますが今後もマリエール商会の活動は続けてまいります。また王女としての公務もこなしますので多忙な日々を送る事になると思いますが皆様ご気楽にお声がけ頂き友好を深めていければ幸いです。」
王族としての威厳も格式も雰囲気もない商人のような挨拶に顔を顰める者もいれば、むしろ好感を抱く者もいる。
養女就任の儀が終わり今ロイド王子と一緒だ。ロイド王子は、
「お前、ちょっとは王族らしい言い回し覚えた方がいいと思うぞ。仮にも一応は貴族だったのだろう。あれでは商人ではないか。」
もっともな話しだ。前世にせよ今世にせよ貴族らしい振る舞いなど身に付けるチャンスはなかった。ほとんど商人として生きてきた。前世は学生だった。礼儀作法やマナーの勉強もした事がない。万能者だから知識はある。実績が伴わないのだ。
「大丈夫よ。何とかなるわ。任せなさい。」
ロイド王子は疑わしそうだ。
「お前、貴族としての生活してこなかったのだろう。ほとんど商人としての生活してきたのだろう。11年もそんな生活してきて今更なおるのか? 」
マリエール自身自信はない。でも振りはできるはずだ。
「わたくし、貴族令嬢ですわよ。貴族らしい振る舞いはできますわ。」
マリエール自身似合わないと思う。ロイド王子は、
「気持ち悪い! 」
とこざいた。
翌日からマリエールの王女教育が始まった。難しい物は特になかった。教師達から賞賛される事が多かった。言葉使いも別に酷いわけでもなかった。要するにTPOだ。場面場面で適切な言葉使いができるかどうかが貴族に求められる素養だ。それはマリエールに煩わしい物だった。
王宮にいるから当然だが、王子王女達と会う。長幼によって言葉使いを変えなければならない事は当然だと思う。問題は一人一人で変えなければならない事だ。
養女就任の儀でのマリエールの挨拶はロイド王子に不評であった。王族の挨拶として相応しくないと前世を含め王族らしさなんて知らない。




