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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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土の感触

収穫の騒ぎが落ち着いた後も、エドワルドはしばらく畑に残っていた。


人の声は少しずつ遠ざかり、農民達は収穫した作物を運び始めている。


畑には、まだ土の匂いが残っていた。


エドワルドはゆっくりとしゃがみ込み、指先で土を掴んだ。


さらりと崩れる。

少し湿り気を帯びた、柔らかい土。


「……悪くない」


小さく呟く。


この土地は長く放置されていた。

荒れていたし、雑草も多かった。

農民達が手を入れ、耕し、水を引き、肥料を混ぜていった。


その結果が、今この手の中にある。

エドワルドは土を指先で擦った。


粒の具合。湿り気。匂い。


農民ほどではないが、それでもある程度は分かる。


「畑の具合は良さそうだな」


レオンが後ろから言う。


「ええ」


エドワルドは頷いた。


「土を触れば分かる」


レオンは少し笑う。


「領主が土を触っている姿は、なかなか珍しいですな」


エドワルドは苦笑した。


「そうかもしれない」


手の中の土をゆっくりと落とす。

ぱらぱらと、地面に戻っていく。

その様子を見ながら、ふと考えた。


「……土を触るか」


エドワルドは小さく呟く。

そういえば久しぶりだ。

こうして、直接土に触れたのは。


昔――まだこの町を手に入れる前。


荒れた村を見て回り、農民と話し、畑を見ていた頃はよく触っていた。


土地の状態を確かめるために。

どこまで耕せるか。水は引けるか。


何が育つか今は違う。


「……」


エドワルドは立ち上がった。

今の自分は、畑にいる時間よりも。

机に向かう時間の方が圧倒的に多い。


机の上には書類。町の人口。食料の配給。

防壁の整備。櫓の建設。商人の記録。

情報隊の報告。


毎日、書類が増える。


「今は……」


エドワルドは遠くの町を見た。


「書類に追われる日々か」


レオンが肩をすくめる。


「領主というのは、そういうものです」


「そうだろうな」


エドワルドは軽く息を吐いた。


畑は農民が見ている。

町は文官が管理する。

兵はレオンがまとめる。

最終的な判断は、すべて自分に回ってくる。


だから机に向かう。

書類を見る。報告を待つ。

決断を下す。


それが責任者の仕事だ。


エドワルドはもう一度、畑を見た。

不断草の葉が風で揺れている。

土は黒く、柔らかい。

その光景をしばらく見つめてから、小さく呟いた。


「……たまには」


少しだけ笑う。


「こうして土を触るのも悪くない」


レオンが答える。


「農民達も喜びますよ」


エドワルドは畑から町へ歩き出した。


「さて」


軽く肩を回す。


「戻るか」


また机の上には、書類が積まれているだろう。


今日も報告が来る。

明日も来る。

領地が広がれば、仕事も増える。

エドワルドは小さく息を吐いた。


「……忙しいな」

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