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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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届いた亡骸

丘の上から、レオン達が戻って来た。


その表情は、いつもの冷静さを保っていたが、どこか重かった。


「エドワルド様!」


「どうだった」


レオンは軽く息を整えた。


「……モルガン領の伝令と思われます」


エドワルドの目が細くなる。


「はぁ?モルガン領だと!?」


思わず声が荒くなった。


「どれだけの距離があると思っている!」


ここから直線でも、相当な距離だ。

馬でも数日では届かない。


普通なら、街道を乗り継ぎ、宿場を使いながら進む。

それでも、二週間以上は掛かるはずだった。


「……」


エドワルドは丘の上に残された騎兵の亡骸を見た。


「その兵の亡骸を丁重に葬れ」


「承知しました」


兵が敬礼し、遺体を運び始める。

エドワルドは低く呟いた。


「何が起きているんだ……」


モルガン領。


そこは最近、戦の噂が流れていた場所だ。


それでも単騎で、ここまで来る理由が分からない。


しばらくして、レオンが戻って来た。

手には小さな革筒が握られている。


「報告します」


「言え」


「モルガン領の伝令と思われます」


レオンは革筒を見せた。


「伝令書を持っておりました」


「内容は?」


「……暗号化されております」


エドワルドが眉をひそめる。


「解読は?」


「専門の者が必要でしょう」


「……」


エドワルドは丘の方を見た。


「しかしモルガン領だぞ」


低く言う。


「単騎でここまで?それに」


エドワルドは呟いた。


「馬から落ちずに死体をここまで運ぶなど……」


レオンが静かに言った。


「エドワルド様」


「何だ」


「戦場では、夜な夜な敵地を突っ切る為、馬に身体を縛る事があります」


「……」


「途中で気を失っても落ちないように」


エドワルドは理解した。


「……縛っていたのか」


レオンは頷く。


「あの死体には、背中に無数の矢が刺さっていました」


追撃。つまり逃げながら走り続けた。

そして死んだまま、ここまで。


エドワルドは丘の上の馬を見た。

黒い馬が、まだその場を離れず歩いている。


「主人を失っても、走り抜けたのか……」


レオンが答える。


「その様です」


「……あの馬は?」


「まだ主人の周りをうろついております」


エドワルドは静かに言った。


「馬に餌と水をやれ」


「はい」


兵がすぐに動いた。



エドワルドは空を見上げた。


モルガン領。

ここから三週間近く掛かる距離。


そこから、単騎で死ぬまで走り続けた。


「……」


エドワルドはレオンを見た。


「レオン」


「はっ」


「名も無い騎兵だが」


少し間を置いて言った。


「簡易ながら葬儀の手配を」


レオンが一瞬だけ目を伏せた。


「……承知しました」


兵達が遺体を整える。

矢を抜き、体を布で包む。


土を掘り丘の上に、小さな墓が作られた。

エドワルドはその前に立った。


そして静かに呟いた。


「すまんな」


風が吹く。


「お主の故郷の葬儀作法が分からん」


土を見つめる。


「我領の戦死者の作法になってしまうが……」


少しだけ目を閉じた。


「許せよ」



カーーーン!


カーーーン!


鐘が鳴った。


戦死者の鐘だ。


その音に反応するように丘の上の馬が大きく首を上げた。


ヒィヒィーーーン!


高く、長い嘶き。

まるで主人を呼ぶように。

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