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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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拭えぬ違和感

隔離の処置は、混乱なく進んでいた。


門前で発見された高熱者と、その同行者達はすべて隔離区画へ移送された。

医療兵は毎日様子を見に行き、体温と症状を記録している。


今のところ——大きな異常は出ていない。


「冷静に対応は出来ている、か……」


エドワルドは机に置かれた医療報告書を閉じた。

慌てた様子もない。

町の中に動揺も広がっていない。


情報隊からの報告でも、市場はいつも通り。

作業場も稼働。

櫓の建築も予定通り進んでいる。


「問題は……無い」


そう言っても、誰も否定しないだろう。

レオンも文官も、同じ見解だ。

実際、町は安定している。


「……それなのに」


エドワルドは椅子の背にもたれた。

胸の奥に、妙な違和感が残っている。


「既に、俺が経験した未来とはかけ離れている」


あの未来では——


王政は崩壊寸前。

飢えた民が暴動を起こし。

貴族は逃げ惑い。

国は瓦解した。


そして最後は——

自分は処刑台に立っていた。


だが今はどうだ。


王政は既に崩壊している。

領地は広がった。

町は再建されている。

民も増えている。


それなのに。


「……ここまで変わるとは」


予想以上だ。いや。変わり過ぎている。


窓の外を見る。


市場の声。子供の笑い声。

建築現場の木槌の音。


平和だ。


「前回とは違う」


前の未来では、自分は貴族として、遠くから状況を見ていた。


だが今は——民と同じ目線で動いている。


町を作り、食料を確保し仕事を与え。

守る為に戦った。


「対応は間違っていない」


それは確信している。

保護した民も、従順だ。

不満の声はあっても、反乱を起こすような雰囲気ではない。


むしろ——ここへ来た事を感謝する声の方が多い。


「状況は安定している」


それなのに。


「……何故だ」


ぽつりと呟く。


「何故こんなに不安なんだ」


胸の奥に残る感覚。説明出来ない違和感。

レオンが部屋の隅から声をかけた。


「どうしました?」


「いや……」


少し考えてから答える。


「何か見落としている気がしてな」


レオンは少しだけ笑った。


「エドワルド様がですか?」


「そうだ」


「珍しい」


「自覚はある」


レオンは肩をすくめる。


「私から見れば、十分過ぎる程先を見ておりますが」


「……そうか?」


「はい」


櫓の建築。

食料自給。

隔離制度。


全部、先回りした対策だ。


「そんな筈は無いと言い切っても良い」


エドワルドは小さく呟いた。


計画は進んでいる。町は守られている。

それなのに。


……未来が変わったから、か?

前世の記憶。

それを頼りに動いてきた。

今はもう、その未来は存在しない。


道標が消えた。


だから——不安なのかもしれない。


「まあ」


レオンが言った。


「不安なら取り除くしかありませんな」


エドワルドは少しだけ笑った。


「そうだな」


その通りだ。未来はもう無い。

なら。


「俺が作る」


守る未来をそれだけだ。

その胸の奥に残る違和感は——


まだ、消えてはいなかった。

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