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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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疑いの熱

ある日の昼下がりだった。

町の門番から、慌ただしい報告が入った。


「エドワルド様。門前で医療兵が呼ばれております」


「何だ?」


「商人経由で来た保護民の中に、高熱者がいると」


空気が一瞬で変わった。


「……場所は?」


「南門前です」


「レオン、来い」


「はっ」


二人はそのまま門へ向かった。


門の外側。


仮設の検査場所で、数人の医療兵が慌ただしく動いていた。

荷馬車の横には、数名の保護民が不安そうに固まっている。


その中の一人——若い男が、荷台の上で荒い呼吸をしていた。


顔は赤く、汗が滲んでいる。


「どの程度だ?」


医療兵が振り向く。


「高熱です。三十九度近く」


「いつからだ」


「本人の話では、昨日の夜からだそうです」


エドワルドの視線が鋭くなる。


「どこから来た?」


横にいた商人が慌てて答えた。


「元王都の近くの村です。人が残っていると聞いて、連れて来ました」


「王都近く……」


レオンが小さく呟く。


医療兵が続けた。


「ここへ来るまで、寝泊まりは同じ荷馬車でした」


「どれくらいの期間だ」


「……十日ほどです」


「十日」


エドワルドの眉が僅かに動いた。


「かなり長い時間、同じ場所で過ごしていた可能性が高いかと」


医療兵の声も重い。


エドワルドは周囲の人間を見渡した。


荷馬車には他にも数名の男女。

子供も二人。そして商人。

皆、同じ旅をしてきた者達だ。


つまり——


「接触者は全員だな」


医療兵が静かに頷いた。


「はい」


空気が張り詰める。もし、疫病だった場合。

町へ入れれば、一瞬で広がる可能性がある。


子供。市場。井戸。


すべてが繋がっている。


「……レオン」


「はい」


「この隊は全員、隔離区画へ」


周囲がざわついた。


「隔離、ですか?」


商人が慌てて口を挟む。


「ちょ、ちょっと待って下さい!ただの熱かもしれません!」


「かもしれんな」


エドワルドは冷静に答える。


「だが“違う”と断言出来る者はいるか?」


誰も答えない。

医療兵が小さく首を振った。


「……出来ません」


「ならば決まりだ。この隊は全員隔離」


「期間は?」


レオンが確認する。


「最低三日」


エドワルドは少し考え、


「……いや」


と言い直した。


「五日だ」


「発熱者の経過を見る。咳、発疹、吐き気。症状が出た者は全員記録」


医療兵が頷く。


「了解しました」


保護民の中から声が上がった。


「待ってくれ!俺達は病気じゃない!ただ疲れてるだけだ!町へ入れてくれ!」


子供が泣き出す。

エドワルドは一瞬だけ目を閉じた。


決断は変わらない。


「隔離区画へ移送」


兵が動き出す。


「医療兵を二名増員。食料と水は毎日支給。ただし町への立ち入りは禁止」


レオンが命令を伝えていく。

荷馬車はゆっくりと動き出した。

町の外。柵で囲まれた隔離区画へ。

そこに仮設の小屋が並んでいる。


不安そうな顔に怒りの声。泣く子供。

それらが遠ざかっていく。

レオンが小さく言った。


「早めに気がついたのは、幸運でしたな」


「……ああ」


エドワルドは城壁の外を見る。

もし町の中で発熱していたら。


市場。井戸。住居。

すべてが接触していた。


「最悪の可能性は、避けられた」


だが——


「……これが最初だろうな」


「でしょうな」


王都は崩壊した。

疫病があっても不思議ではない。

これから先同じ事は、何度でも起こる。


「隔離制度を強化する」


エドワルドは静かに言った。


「柵を増やせ。監視も増員。医療記録も残す」


レオンが頷く。


「町を守る為ですな」


「ああ」


守る為。それだけだ。

だがその“守り”は——


確実に町の境界を、少しずつ固くしていった。

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